2023年3月 2日 (木)

アートと建築の共鳴

Photo_20230228211401

 端正でミニマル、基本的な造形が美しい。アーティスト青木悠太朗の木工作品が、昭和初期に建設されたレトロなビル・下町会館によくフィット。老朽化していた木造3階建ての建物に再生工事を施して、まちづくりの拠点施設としてリニューアル。街角の気になるビルや住宅に実際に入れるのも、この芸術祭の魅力です。

   Photo_20230228210802    

 目黒雅叙園の百段階段に感銘を受けた当主が建てたという割烹 松本館。豪華絢爛な天井や壁面や欄間。さまざまな花鳥図に囲まれた大広間を会場に、福井江太郎が描いた迫力ある駝鳥の群れが展示されている。かなり主張が強い空間なのに、まったく負けていない。さすが海外でも活躍している福井さんだなと思いました。

Photo_20230228213401

 日本画の技法で描かれたいろんなポーズのダチョウたち。首を極端に細くデフォルメすることで、その長さがより強調されたユニークな姿。観るものを小バカにしたような生気に満ちた目に、鳥の王者としてのプライドや強烈な生命力を感じる。この装飾過剰な部屋に描かれた多くの鳥とは一線を画し、まるで高貴な仙人のようだ。

   Photo_20230228213501

  ワールドワイドに活躍するインストゥルメンタルバンドの mouse on the keys マウス・オン・ザ・キーズの公開制作が3日間にわたって行われた。メンバーは川﨑昭、新留大介、白枝匠充。フュージョン or ロック or ジャズ or 現代音楽? ジャンルを超えた斬新な音楽が、中町 蔵シック館で生み出される貴重な現場を体験。

Photo_20230228221901

 普通のドラムセットは使わず、スーツケースや焼肉用グリルパン、和太鼓や空き缶で音を出す。ピアノの絃に紙を巻いたりガムテープを貼って音色を変える。アグレッシブでミニマルなリズム。繊細な音の掛け合い。シンセサイザーやPCも効果的に使った新しい音楽。これは予想をはるかに上回る演奏だ。完成が楽しみです。

Photo_20230301002401

 そしてマツモト建築芸術祭の最終日の2月26日。信毎メディアガーデンで彼らのライブパフォーマンス。公開制作していた新曲の完成お披露目だ。入場できるのは抽選で80人。運よく当選して18時からのライブに駆けつけました。芸術祭のフィナーレを飾るにふさわしい マウス・オン・ザ・キーズの演奏。大満足のイベントでした。     

| | コメント (0)

2023年2月27日 (月)

レトロ建築と現代アート

Photo_20230226104601

 趣きある洋館。懐かしの民家。レトロなビル。松本市内に残るこんな名建築と現代アートがコラボするマツモト建築芸術祭が、今年も開催されました。19の建築でアーティストが作品を展示し、2か所の会場でライブパフォーマンスを展開。冬の松本をアートで彩る3週間の芸術祭が、この調子で定着すればいいですね。

Photo_20230226104701

 そのいくつかを紹介しましょう。大正時代に建てられた旧小穴家住宅。ヨット柄のステンドグラスや三角形の出窓など、モダンなデザインが随所に取り入れられている。中にはカラフルな円形のライトが並ぶ絵画や、ピンクに塗られた石ころが転がった縁側。鬼頭健吾の作品が和室を宇宙的な不思議空間に変えている。

Photo_20230226111501

 旧開智学校のそばの旧司祭館。明治22年に宣教師の住居として建設された西洋館だそうです。屋内には岡本亮の「CALMA」というタイトルのインスタレーションが。人類の過去の記憶から未来へ残るであろうモノまで、博物学のアプローチで収集して展示。古い宗教的な空間に、アーティストの独特な世界観が繰り広げられる。

Photo_20230226144801

 大小さまざまな動物の頭蓋骨を組み合わせたオブジェ。バイクや旅行用スーツケース。トランペットや8mmカメラ。福助人形やレーシングスーツ。鉱物標本や骨董の文物。狩猟、移動、信仰など基本的な行動原理から、人類の来し方と行く末を俯瞰しようとする岡本のアタマの中を、そのまま覗き見をしているようで興味深い。
  Photo_20230226140001

 オランダのデザインユニット、ドローグ・デザインの照明器具がおもしろい。牛乳ビンを集めたり、洋服ハンガーだったり、吊り下げランプを85個もまとめたり、美しくてユーモア感覚にすぐれた作品が、会場の旧三松屋蔵座敷(はかり資料館)によくマッチしている。市販のデザイン製品をアートとして見せるのはMoMAのようです。 

| | コメント (0)

2022年6月 2日 (木)

ウニの殻、シカの皮

Photo_20220529221601

 いろんなジャンルの作品が用と美を競う松本クラフトフェア。作品を展示するテントもアイデアにあふれています。個人的に一等賞は、おとぎの国から抜け出たような可愛いテント。いやテントと呼ぶにはあまりに立派。小さなキオスクのスタンドか、交通整理のポリスボックスか。ここまで作り上げるとこれ自体が立派なアートです。

Soara

 これは小林創新(soara)さんが作品を展示するためのステージです。一つ一つ色や形が違うウニの殻に木製の台をつけたメルヘンチックなランプを、周囲の壁面に麗しく展示。室内には小林さんが入っていて、小窓を開けて説明と販売をしてくれる。そうだ、劇場や博物館の切符売り場でのやり取りのようだ。おもしろい。

Photo_20220529194603

 山元規子(卵工房)さんの繊細な磁器も素晴らしかった。薄い薄いパーツを貼り合わせて焼いたのか、サンゴ礁のような海綿のような不思議なオブジェ。テント越しの淡い光が効果的で、水底で揺らめいている感覚になる。見せ方って重要ですね。中村圭(Kei Nakamura)さんの竹クラフトも、素材の活かし方が斬新でした。

Photo_20220529194602

 石黒幹朗さん(uun)さんの作品は、石か粘土で作ったような謎の球体。大きさも、色も、模様も、微妙に違う。じつはシカの皮で作った照明器具だそうだ。だからその違いは1頭ごとの個性のあらわれ。皮革だからといってバッグや財布やジャケットや作らなくてもいいわけですが、この球体はインパクト大。驚きました。

Photo_20220530094101

 カラフルな陶の土台に鳥や花の鋳物が載せられた、本山ひろ子さんの作品も印象に残りました。どんな技なのか、遺跡から掘り出されたような質感が見事。山崎雄一さんのガラス器も、まるで古代ペルシャの遺物。どちらも何百年ものエージングを感じさせる手法が新しい。見どころいっぱいの松本クラフトフェアでした。

| | コメント (0)

2022年5月30日 (月)

3年ぶりのクラフトフェア

Photo_20220530085401

 コロナ禍で中止が続いた松本クラフトフェア。5月28日(土)29日(日)に、3年ぶりに開催されました。お天気にも恵まれ、出展者も来場者もみんな晴れやかな顔つきです。感染防止対策は万全。事前にアプリをインストールして連絡先などを登録、検温、消毒をして、あがたの森公園正面入口からのみの入場です。

   Photo_20220530090401

 出展者のジャンルは「陶磁」57、「木工・漆」36、「染色・フェルト」17、「ガラス」12、「金属」17、「皮革」18、「その他の素材」12、「材料・道具・情報」10。3年分の思いがこもった力作を展示たテントが、緑あふれる公園にいっぱい並ぶ。観客は思い思いに作品を見てまわり、作家さんと会話を楽しむ。もちろんその場で購入も可能。

Photo_20220529203401

 食品のブースは定番のカレー、アジア風屋台飯、ベーグル、焼き菓子、自家焙煎コーヒーなど総数26。目についたのはハチミツ屋さんや手作りシロップをかける氷屋さん、そしてハーブやスパイスをたっぷり煮込んでソーダで割るお店。ヘルシー志向ですね。お天気がいいと気温も上がる。ノドも渇く。熱中症にも気を付けなきゃ。

Photo_20220529205501

 テントを巡ったり、木陰のベンチで休憩したり、また戻って見たり。1万歩以上は優に歩きます。緑の美しい季節、いろんな樹々が大きく育ったあがたの森公園は散策にも最適。小さな子どもたちは、園内の芝生広場や池の周りで元気に遊びまわっている。こんな和やかな光景を見るにつけ、つくづく平和のありがたみを感じます。

Photo_20220530090601

 全国各地で開催されるクラフトフェアですが、なかでも老舗でかつクオリティが高いのが松本。作家さんもアートファンも日本中から集まる大イベントです。コロナが一段落して久しぶりに開催にこぎ着けられたのは本当に喜ばしいこと。初夏の明るい日差しのもと、豊かな自然に囲まれる幸せ。来年も無事に開催されますように。 

| | コメント (0)

2022年5月 5日 (木)

芽吹きの春、命輝く時

Photo_20220503180101

 一昨日は雪が降り、鉢盛山は白く雪化粧しましたが、ふもとの野麦峠スキー場は絶好のハイキング日和。ゲレンデを太陽の光を浴びながらゆっくり登る。サクラが咲き、カラマツが芽吹いて薄緑のモヤのように煙っている。乗鞍もだいぶん雪が解けて雪形があらわれていたのに、また真っ白になっています。神々しい白。

Photo_20220504001202 
 落葉するカラマツは芽吹き始めでまだ葉が茂っていない。だから存在感が薄い。それに対して目立っているのが常緑のドイツトウヒ。枝が幽霊の手のようにダラリと垂れ下がる独特な樹形。ヨーロッパ原産、スカンジナビア半島やドイツ黒の森に多い。豆知識をひとつ。材はストラディバリウスの響板にも使われているそうです。

Photo_20220504001301

 とは言えカラマツにとっても今はドラマチックな時期。芽吹きと同時に雌花と雄花が咲き、受粉の準備を始める。枝の上、大きくて白っぽい薄緑色のが雌花。枝の下側には、小さくてオレンジ色がかった褐色の雄花。数は雄花がはるかに多い。多くの花で雄しべが雌しべよりずっと多いのと同様、受粉の可能性を高めるため。

Photo_20220504001302

 人間でも精子の数が圧倒的に多いですからね。これは種として生き延びるための知恵。植物も、動物も、子孫を残すためにさまざまな努力を重ねた結果、今がある。現在われわれが目にしている生物は、すべて進化の道筋の勝者のみ。雑草も虫けらも、すべて不屈のチャンピオン。だからあらゆる生命を大切にしなければ。

| | コメント (0)

2022年5月 2日 (月)

境峠のミズバショウ

Photo_20220429104601

 我が松本市奈川と木曽郡木祖村との境界線にある標高1,480mの峠。その名もわかりやすく境峠。そこにある湿原でミズバショウの花が満開です。白い花に見えるのは、じつは花ではなくて葉の変形した苞。仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる。この中にある黄色いツブツブの円柱状が、小さな花がたくさん集まった花序。

Photo_20220429104501

 ミズバショウはサトイモ科ミズバショウ属の多年草。夏になると葉が高さ80cm、幅30cmにも成長し、まさに芭蕉の葉のような大きさに。それが下を流れる水が見えなくなるほど、びっしり生い茂る。ミズバショウは雪が融けたあとに開花しますが、今年は三月に入ってから暖かい日が多かったので、いつもより開花が早い。

Photo_20220428220401

 ここ境峠の湿原は、周りにミズナラやブナなどの広葉樹やヤナギの仲間、カラマツやシラビソなどの針葉樹が自生。クマザサもたくさん見かけます。自然のままの豊かな植生の中で、サクラと同じころに咲き始め、樹々の芽吹きと共に春を祝福するかのごときミズバショウ。バードウオッチャーの姿も見かける季節になりました。

| | コメント (0)

2021年9月25日 (土)

野菜畑とハーブ園

Photo_20210921215901

 光も、風も、高原はもうすっかり秋。おいしくいただいてきた夏野菜の収穫も終わりに近づいてきました。振り返れば、予期せぬ天候不順や作付け計画の甘さ。反省することの多さに驚きながらも、収穫できる喜びは格別です。そして無知な素人ならではの無謀かもしれないチャレンジ、ユニークな野菜を次にご紹介しましょう。

   Photo_20210921215301

 今年植えて収穫は来年、という2年生のアーティチョーク。イタリアではカルチョフィ。日本では朝鮮アザミ。いまの背丈は膝上ぐらい。来年には人間の背丈ぐらいに育ってくれるでしょう。そしてアザミの親玉のような美しい薄紫色の花が咲き、待望の実ができる。ギザギザの大きな葉は、すでに大物の風格があります。

   Photo_20210921215302

 トスカーナでよく食べられるカーボロネロ(黒キャベツ)。日本のキャベツと違って結球しない。葉も硬くてしっかりした歯ごたえです。煮崩れしにくいため煮込み料理でよく使う。本来は冬から春先が収穫期。でもその時期は雪に覆われるので、春に植えて夏場に食べることに。これもアブラナ科なので虫に好まれ穴だらけです。

Photo_20210921220301

 ミント、セージ、レモンバーム、マージョラム、タイム、カモミール、ディル、バジル、イタリアンパセリなど、露地植えのハーブ類も重宝します。肉や魚のソテー、シチュー、サラダ・・・と、いろんな料理に使うのはもちろん、ハーブティーやケーキにもなくてはならない素材。大地のエネルギーをたっぷりいただきました。

| | コメント (0)

2021年9月22日 (水)

たっぷりの収穫に感謝

Photo_20210920154301

 色も形もさまざまなトマトが4種。ミニトマト、スウィートトマト、サンマルツァーノ、トマトベリーをもぎました。どれも小ぶりの品種です。農家の人たちはトマトって完熟の2週間ぐらい前に収穫して出荷するらしいですね。だから採れたてをすぐに食べるとおいしいわけだ。そして、そろそろ終わりに近づいたバジルとヴァイオレットバジル。

Photo_20210920154303 
 赤パプリカ、黄パプリカにナス。ナスはとげに気を付けないと痛い目に合う。しかしそれが新鮮さの証。トウモロコシはまだ少し早くて先のほうの実が成長途上。ですが、じゅうぶん甘い。ヒゲ1本に1粒の実。ベビーコーンで食べるときはヒゲも食べる。このザルに一緒に載っているのはイタリアンパセリとタイムとマージョラム。

Photo_20210920154302

 大葉とセージもよく育つ。ただし大葉はビニールハウス内ではきれいだけれど、露地栽培の分は虫食いだらけ。ちょっとした違いで大きな差が出ます。セージはなぜか信州の気候が合うようだ。六甲では元気がなくて、収穫して料理に使うほどは採れない。レモンバームもミントもよく育つのに、ローズマリーはまったくダメ。

Photo_20210920154304

 リーフレタスやサニーレタスなどは涼しい高原ならではのみずみずしさ。フレッシュな採りたてを食べると、レタスってこんなに味があるのだ!と驚く。バジルやセルバティコも味が濃い。野菜そのものが持つおいしさを完熟で収穫して食べる。これこそ家庭菜園の醍醐味。夏の長雨にかかわらず、無事に収穫できたことに感謝です。

| | コメント (0)

2021年7月27日 (火)

高原の家庭菜園だより

Photo_20210726215202

 信州の高原でイタリア野菜を中心に育てる家庭菜園が楽しい。花園芸家のご厚意で畑の一部を、種類によってはビニールハウスの一角も使わせていただいている。もちろん自分たちが食べるためだけなので、一株とか二株とか少量しか植えていない。

   Photo_20210726215302 

 昨年に始めて二年目。春先から何を植えるか検討するときがまず楽しい。これは種から、これは苗から、昨年の反省も踏まえてながら、ホームセンターや種苗センターをまわる。店によって置いている品種も違い、さまざまな発見があっておもしろい。

   Photo_20210726215601

 セルバティコはルッコラの野生種だと思っている人は多い。苦味があってゴマのような味がするという特徴は似ている。でも同じアブラナ科だけど違う種類。ルッコラは一年草で白い花。セルバティコは多年草で葉のギザギザは深く切れ込み、黄色い花が咲く。

   Photo_20210726215301

 カーボロネロ(トスカーナの黒キャベツ)、ケール、フェンネル、イタリアンパセリ、バジル、バイオレットバジル。すでにサラダや炒め物、煮物に役立っている。収穫まで2年かかるカルチョフィ(アーティチョーク)も植えました。さて、どうなることやら。

Photo_20210726215204

 トマトはホールトマト缶に使われている長いカタチのサンマルツァーノやイエローアイコ、イチゴ型のトマトベリー、メチャ甘い極甘(ごくあま)を一本ずつ植えている。どれも接木苗です。トマトは前年に落ちた種から芽吹くのもあります。ただし味は落ちる。

   Photo_20210726215101

 よほど生育条件があっているのかセージは驚くほどよく育つ。六甲では難しいのに。ニョッキのセージバターやフリットで楽しんでいる。ラベンダーやミントも元気に育っています。ハーブ類はちょっと取っ付きにくいものもありますが、慣れると病みつきになりますね。

| | コメント (0)

2021年2月16日 (火)

まだ薪ストーブの季節

Photo_20210215151901

 もう2月半ば。信州奈川高原でも春の気配を感じる日があります。でもまだまだ薪ストーブが大活躍。グッと冷え込む日はそれでも足りず、寒冷地仕様の石油ストーブも燃やす。ただし石油ストーブは火に向いている側だけ熱くなって背中は冷え冷え、なんてことも。その点薪ストーブの火は柔らかくて体の芯から温まる。

Photo_20210215152301

 燃料は基本は敷地内で間伐した直径30~40cmのカラマツやナラ。伐り倒して玉切りにしてもらったものを斧で薪割り。それを2~3年乾燥させて使っています。薪に水分含有量が多いと燃えが悪く温まらない。シューシューと湯気が出ることも。まず薪自身を乾燥させるために熱量を使い、そのぶん暖房にまわる熱が減るからだ。

Photo_20210215152001

 木の種類によって温かさも違う。カラマツなど針葉樹はヤニが多いので高温になりすぎてストーブを痛めると言われる。ナラやクヌギは硬くて火持ちがよく理想的な薪材。ほかにシラカバやミズキも燃やす。燃える音も香りも、木によって違うから楽しい。上の写真がカラマツの薪。下がナラなど広葉樹。色も木目も違うでしょ。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧