2018年1月13日 (土)

どいつもこいつも嘘だらけ

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 笑う門には福来る! 2018年初笑いロードショーと銘打ってあらわれたコンビは、中井貴一と佐々木蔵之介。骨董をめぐるだましあいを描いた、武正晴監督の『嘘八百』がおもしろい。冴えないオジサン二人が幻の利休の茶碗を仕立てて、堺を舞台に大勝負をかける!が、さてその顛末は。

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 まぁ出てくるヤツが嘘つきばかりで、強欲で、しかしどうしようもなくおかしく可愛い。友近、前野朋哉、森川葵、坂田利夫、芦屋小雁、近藤正臣、堀内敬子、寺田農、塚地武雅、桂雀々などなど。これら芸達者たちが軽妙なやりとりを繰り広げ、抱腹絶倒のだましあいを繰り広げる。タイトルもいいでしょ。大江戸八百八丁に大坂八百八橋、八百万の神の国の『嘘八百』。

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 なんでも鑑定団をはじめとするお宝ブームをおちょくった? ちょっと胡散臭さもただよう骨董や鑑定士の、奥深くてわかりにく~い世界。素人はあまり近づかずに、TV番組を見て「ほぉ―!」、「へぇー!」と、おもしろおかしく眺めているのが無難なようです。あ、その前にぜひ劇場でこの映画を観て、2018年の初笑いを。関西弁がええ味出してます。

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2018年1月 7日 (日)

知らなかったよ!バーフバリ

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 今年最初に観た映画は、『バーフバリ 王の凱旋』。インド映画です。何も知らずに観に行ったのですが、じつは『バーフバリ 伝説誕生』の続編。エッ!? でも、ちゃんと前作のあらすじが、おさらい映像として組み込まれているので、ストーリーはよくわかりました。親切なつくりでございます。ちなみにバーフバリとは、強い腕を持つ男、という意味だそうです。

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 古代インド、三代にわたる壮大な王位継承物語。愛と復讐、正義と陰謀のドラマ。インド映画なので、歌も踊りもある。神話的叙事詩『マハーバーラタ』をベースにしたスペクタクル大作。予告編で「空前絶後」、「豪華絢爛」、「常識破壊」と大げさだけどありきたりの言い方を並べているので、ハデでお手軽な歴史アクション映画だと思っていた。だけど、なかなかどうして。これら最上級の言葉にいっさい誇張はない! 配給会社の担当者も、何と言えばいいかわからないほどのスゴさを感じたに違いありません。

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 思いついたアイデアはすべて使う、知っている撮影編集技術はすべて盛り込む。けれん味テンコ盛り! いくら何でもやりすぎでしょ!なアクション満載! とまあ!!!いっぱいの文章になってしまって。何と言えばいいのか、適切な言葉が出てこないのは私も同じ。あまりの超人ぶり、あまりの戦闘シーンに唖然とする連続で、もう笑うしかありません。Photo_3 しかし、古今東西普遍の人間ドラマもしっかり描かれていて、あきることはない。そこまでしなくっても、気恥ずかしいのでは、といった日本的美学を超越した情熱とサービス精神。
 もともと神話というのは、ギリシャでも日本でも北欧でも、英雄が活躍し、美しい恋愛があり、裏切りや復讐もあり、荒唐無稽なお話もある、そんな世界だ。Photo_4 そして人々は書物や壁画、彫刻や絵巻物で物語を伝えようと努力してきた。この作品はCGやVFXを駆使できる現代の映画こそが神話を伝える最上のメディアだ、という事実を証明しているようだ。規格外の過剰さが新しい映画のおもしろさを産み出したと思います。

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2017年12月29日 (金)

歳末はダンシング『第九』

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 モーリス・ベジャール・バレエ団と東京バレエ団、ズービン・メータ指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団が創り上げる、ベートーヴェンの第九交響曲の世界。映画「ダンシング・ベートーヴェン」です。ゲーテと並ぶドイツ古典主義を代表するシラーの詩にベートーヴェンが曲を書き、ベジャールが振り付ける。世紀を超えた、なんと豪華な総合芸術。Photo_2
 この愛と生命の賛歌を、ダンサー、オーケストラ、合唱団の総勢350人が繰り広げる大スペクタクル=奇跡のステージを実現するための過酷な練習、度重なるリハーサル、そしてダンサーたちの情熱や苦悩など、1年にわたる制作過程を描いたドキュメンタリー。アランチャ・アギーレ監督、2016年の作品です。
Photo_3  多様な文化的背景を持つキャストたちが一つの目標に向かって懸命に努力する。そしてともに成し遂げる歓び。このプロジェクトそのものが『第九』のテーマなのだ。シラーの詩「すべての人々は兄弟になる 歓びの優しき翼のもとで」。民族、国家、固有の文化などに特有の価値概念や偏見を捨てて全人類を同胞とみなす思想を、ベジャールが『ひとつになれ、人類よ!』と理想をかかげた踊るコンサート。Photo_4
 重力から自由になったかのような肉体の動き。自由に有機的に躍動するドラマチックな群舞。魂を揺さぶるような管弦楽の響き。第九を作曲したころベートーヴェンは耳が聞こえなくなっていたそうだが、バレエで表現した第九を観たらきっと感動したに違いない。芸術は進歩する。文化は発展する。そして美は歓びを生み、異文化への尊敬と異民族との融和を進める力を持つ。そんな希望を感じさせてくれる作品でした。

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2017年12月22日 (金)

時代が変わる?スターウォーズ

2_2  最後のジェダイ、と題されたスターウォーズの第8作。うーん、なるほどね。納得できるタイトルです。1977年に初めて見た時の驚きと感動から40年。はるか昔、遠い宇宙のかなたの出来事のようです。この間、日本でも世界でも、いろんなことがありました。
 なにが善で、なにが悪か。それは光か、闇か・・・。情報量も格段に増え、世界の見方がとても多様になった。いまや単純な勧善懲悪ではすまされない時代です。

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 スターウォーズもどんどん進化と深化を遂げて、時代を担い、時代を創るSF超大作として支持されてきた。善と悪の狭間で悩むヒロインとヒーロー。価値観の違い。世界観の違い。これらを乗り越えて、スターウォーズはスカイウォーカー一族の物語から、もっと広く普遍的な宇宙の真理へと向かうのか。リアルな現実として、出演している俳優さんたちも40年も経てば状況が変わる。キャリー・フィッシャーもこの夏に亡くなった。

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 最後のジェダイ、伝説のジェダイと呼ばれているルーク・スカイウォーカーも隠遁生活から現れて危機を救い、死んでいく。しかしジェダイは死んでも存在する。ではジェダイはどう生まれるのか、どう育つのか。もっと根源的な問いとしてジェダイとは何者なのか。単なる超能力者ではないはずだ。
 ラストシーンに小さな希望が描かれていて、次回作がもう待ち遠しくなってくる。宇宙を舞台にした一大叙事詩、あるいは新しい人類の神話は次に何を語ってくれるのでしょう。

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2017年12月13日 (水)

レヴァイン指揮、METの魔笛

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 METでは過去にシャガールやホックニーによる舞台美術の「魔笛」を公演してきたそうだ。今回のはミュージカル「ライオンキング」の演出でも有名なジュリー・テイモア版。歌舞伎の隈どりのようなメイク。ロシアアヴァンギャルド風のコスチューム。これも歌舞伎にヒントを得たのか黒子が操る巨大なモペット・・・。カラフルで斬新な美術、思いっきりファンタジーしてます。そしてとても分かりやすい。楽しい。

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 {魔笛」はモーツァルトの最後のオペラ、というより大衆演劇。王侯貴族のためのオペラハウスで上演される作品ではなく、友人のシカネーダーが台本を書いて演じた歌芝居です。だから、イタリア語でないとオペラじゃない、と言われる時代にあって民衆にも理解できるドイツ語で書かれている。映画「アマデウス」では熱にうなされ死にそうになっているモーツァルトの病床に、初演の成功をシカネーダーや歌手・役者たちが報告に来るシーンがある。

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 ところが当時は大衆演劇だったが、今や世界の名だたるオペラハウスが取り上げる大人気オペラになっているからおもしろい。フリーメイソンの思想を表現した勧善懲悪ストーリー。恋と冒険の物語。よく耳にしたことがあるチョー有名アリアが満載。初めて見る子どもからうるさがたのオペラ通まで、あらゆる人を魅了する要素が詰まっています。エンターテインメントの天才、モーツァルトの面目躍如ですね。

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 このような有名作品だから、観客もいろんな演出や指揮の「魔笛」を見てきている。だから演出家や指揮者の解釈、歌手の表現力を、記憶の中の名演と比較しながら楽しんでいる。古典落語や歌舞伎と同様に『芸』を楽しむ演目だ。特に夜の女王の超絶コロラトゥーラやザラストロの超低音、車椅子の巨匠ジェイムズ・レヴァインの指揮は、まさに名人芸。今年10月14日公演のライブ映像、あっという間の3時間42分でございました。
 

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2017年11月27日 (月)

ゴッホの名画が動き出す!?

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 この映画『ゴッホ 最期の手紙』は全編が動く油絵でできている! ゴッホ最期の日々を実写映像で撮影。その1コマ1コマが世界中から集められた125名の画家の手で、ゴッホタッチの油彩画に描かれ、アニメーション化されているのだ。総枚数62,450枚、1秒当たり12枚の高精細写真で構成された動く絵画。
 良く知っている肖像画だったり風景画だったりを、元の作品と同じ場所、同じアングルで、よく似た俳優さんが演じているものだから、まるでゴッホの名作が動き出したかのよう。でもポスターになっている絵も、いかにもありそうだがこんな自画像は存在しない。すべて、「いかにもありそう」な絵を映像化したもの。見事に100%以上、ゴッホのイメージです。

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 この映画の魅力は、映像手法の新しさだけではない。ゴッホの死の真相に迫るミステリーとしても、とてもよくできている。時代設定を彼の死後間もない時期にしているので、彼の作品に登場する友人、知人たちが登場し、それぞれ事実を語り見解を述べる。しかしそれらを聞いても『藪の中』で、彼の死の謎はなかなか解明されない。
 この映画は、ゴッホの独特なタッチの映像で謎解きのストーリーを展開する。つまり自作の絵で自分の死の真相を探る、というちょっと倒錯したおもしろさがある。監督・脚本はドロタ・コビエラとヒュー・ウェルチマン。アートとしての刺激、天才の生きざま、時代と人間・・・何層にも見どころが重ねられた圧巻の映画でした。

ゴッホ 最期の手紙

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2017年11月24日 (金)

ノルマでMETオペラシーズン開幕

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 メトロポリタン・オペラの今シーズンは、ベッリーニの「ノルマ」で開幕しました。古代ローマ時代のガリアを舞台にした、愛と復讐の物語。METライブビューイング版の第1作はカルロ・リッティ指揮、デイビッド・マクヴィカー演出、10月7日に上演された約3時間半の舞台です。

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 19世紀前半の作品、ベルカント・オペラの大傑作「ノルマ」は、マリア・カラスのレコードでよく聞いていた。そのマリア・カラスが「全アリアの中で最もむずかしい」と言ったという『清らかな女神よ』を、現代ベルカントの女王ソンドラ・ラドヴァノフスキーが見事に歌い上げる。第1幕の聴かせどころだ。このアリアだけではなく、女として母として部族のリーダーとして複雑な感情表現と高度な歌唱力を必要とするアリアが続くノルマ役。あらゆるオペラのなかで最もむずかしく体力もいる役柄ではないでしょうか。

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 第2幕ではアダルジーザ役のジョイス・ディドナートやポッリオーネ役のジョセフ・カレーヤとの二重唱、三重唱が素晴らしい。掛け合いから始まり、やがて同じ旋律をそれぞれが違う歌詞を歌う。それらが見事に融け合って一つの歌に昇華する。あぁ、音楽を聴く喜びが体中にしみわたる。

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 そして最後にノルマがとった行動が感動を誘う。崇高で情にあふれた、まさに気高い女神のよう。こうしてフィナーレを迎えた舞台は、ブラヴォーの歓声と拍手が鳴りやまず。何台もカメラを使い、アップも多用するライブ・ビューイング映像。観る側にとってはこんなありがたいことはない。でも演じる側は大変だと思う。歌がうまい、演技力がある、だけではダメなのだ。見栄えがたいせつ。体が楽器だから、昔のオペラ歌手は太った人が多かった。でも大スクリーンで顔や姿が見える映像時代、悲劇のヒロインが肥満じゃ、ちょっとね。

METライブビューイング 2017-2018
第1作 ベッリーニ 「ノルマ」

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2017年11月 6日 (月)

二本の「エルミタージュ」映画

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 いま兵庫県立美術館では大エルミタージュ美術館展が開催されている。そして映画『エルミタージュ美術館 ― 美を守る殿堂 ―』が公開され、ちょっとしたエルミタージュブームの感がある。このドキュメンタリー映画はとてもよくできている。250年の歴史を持つ偉大な美術館がどんな成り立ちでどう発展してきたか、革命や戦争などさまざまな困難をどう乗り越えてきたか。美しいサンクトペテルブルクの四季の街並みとともに簡潔にまとめている。

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 挿入されるエイゼンシュテイン監督「戦艦ポチョムキン」の映像も効果的だし、ミハイル・ピオトロフスキー館長の解説もとても興味深い。ダ・ヴィンチやミケランジェロからマチスやピカソまで、世界第一級のコレクションを守り続けるエルミタージュ美術館。マージ―・キンモンス監督は、あたかも美術館そのものが人格を持って生き続けているように、見事にまとめている。美術館をテーマにしたドキュメンタリーでは、いままで観た中で最高だと思います。ぜひサンクトペテルブルクに行かないと。

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 もう一つの映画『エルミタージュ幻想』は、アレクサンドル・ソクーロフ監督の野心作。なんと90分あまりの全編をワンカットで撮影しているのだ。NHKの技術協力で可能になったそうだ。2002年の作品だが、大エルミタージュ美術館展に合わせてKEN-Vi名画サロンで上映されたものを観ました。Photo_5
 監督の主観映像で、エルミタージュ内部を時空を超えて彷徨い、ピョートル大帝やエカテリーナ女帝に遭遇。またロシア革命が忍び寄る時期のニコライ2世や娘のアナスタシアも登場。圧巻は大舞踏会のオーケストラをヴァレリー・ギルゲエフが指揮していること。Photo_6 これらのシーンが扉を開けるたび、階段をの下るたびに繰り広げられる。気の遠くなるような緻密な準備とリハーサルが重ねられたのでしょう。こんな奇跡を成し遂げた出演者たちにもアタマが下がります。これこそ芸術だ!と叫びたくなる(難解な?)映画でした。

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2017年10月13日 (金)

サラ・バラス? 知りませんでした

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 フラメンコのドキュメンタリー映画、と聞いてもあまり興味はわきませんでした。でもうまく時間が合ったので観てみたら、これがスゴイ! 革新的! 現代最高峰のフラメンコダンサー、サラ・バラスが、パコ・デ・ルシア、アントニオ・ガデス、カルメン・アマジャなど今は亡き6人の巨匠に捧げるオマージュ『ボセス フラメンコ組曲』の、わずか3週間しかない準備と稽古、パリの初演、NYやメキシコや東京そしてスペインのカディスと続く世界ツアーの記録です。

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 超高速ステップ、指先まで神経が行き届いた表現力、信じられない超絶テクニック。今まで見てきたフラメンコとは、まったく違う。小学校の運動会とオリンピックの決勝ぐらいの差。肉体の極限まで挑むコンテンポラリーダンス。厳しい修業をした者が神の領域に近づいた姿。例えがバラバラで支離滅裂だけれど、スゴイ!と感動したことはおわかりいただけるでしょうか。そしてパフォーマーとしてだけではなく、企画、構成、演出をし、公演チームのリーダーとしてプロジェクトを引っ張っていく超人的パワー。

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 まさに天才としか言いようのない彼女が、「努力」という言葉をよく口にする。「努力しない者には我慢できないの。さっさと消えて欲しいわ」。公演の仲間たちにも厳しく要求する。そしてそのなかで誰よりも努力しているのがサラなのだ。努力という名の水をあげ続けた者だけが才能の花を咲かせることができる。これは彼女の信念だ。フラメンコには強くストイックだが、この映画では私生活での弱さや人情味も伝えてくれる。彼女の人間性、神ではなく人間としての魅力。

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 フラメンコは何度か見て、だいたいこんなものか、とわかったつもりでいた。思えばフラメンコに限らず食わず嫌いで心と感覚を閉ざしていたことが多かった。なににでも門戸を広げて、心を真っ白にして、自分自身に素直になって、もっと知り学ぶべきなのだ。世界は思っていたよりおもしろい。人間は思っていたより素晴らしい。きっと。70歳を前にして気付きました。「もっと見る、聞く、感じる。さぁこれから黄金の20年が始まるぞ」、と思うのは欲張り過ぎでしょうか。

パッション・フラメンコ
監督:ラファ・モレス、ペペ・アンドレウ
出演:サラ・バラス、ホセ・セラーノ、ティム・リース

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2017年10月 7日 (土)

セザンヌとゾラの奇妙な友情

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 マティスが「絵の神様」と崇め、ピカソが「我々の父」と敬愛したポール・セザンヌ。没後110年トいうことで映画『セザンヌと過ごした時間』が作られた。まぁ110年はこじつけでしょうけど、おもしろい映画でした。セザンヌがこんなに激しく野卑でプライドの高い偏屈人間だったとは。パリの画壇から身を引き、生まれ故郷のエクス=アン=プロヴァンスで隠遁したような生活を送った画家。きっと物静かで哲学的思考に耽るタイプだと思っていた。大間違いでした。でも作品からみると、このほうが納得です。

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 大成功した小説家のエミール・ゾラと、名声を得たのは死後だった近代絵画の父セザンヌ。二人は小学校のころから共に遊び激しくケンカをし、芸術家として励まし合い傷つけ合いながら数十年友情を育んだ親友だった。お互いの家族のこと、家庭のこと、喜びも悲しみも・・・他の誰にも理解できない天才同士の奇妙な距離感と親和力で結びついていたのだと思う。そして結果として、二人とも偉大なことを成し遂げた。

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 印象派が生まれたころからの美術史をなぞりながら、観るのも楽しい。モネ、ピサロ、ルノアール、モリゾ、絵具屋のタンギー爺さんや画商のヴォラールまで出てくる。監督・脚本のダニエル・トンプソンが15年間の膨大なリサーチで歴史的事実を発掘し、長年の夢を映画化したこの作品。オリジナルタイトルは日本語にすると『Sezanne et Moi (セザンヌと私) 』。なので、主にゾラの視線からセザンヌを描いている。わたしたち観客はまるでゾラの横で眺めているようなリアルさで創造の苦悩を一緒に体感することになる。時空を超えた感覚。演出の力ですね。

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 プロヴァンスで撮影された映像がまたすばらしい。まぶしい陽光、赤土の崖、松やオリーブの木々、そしてサント・ヴィクトワール山。セザンヌの名画そのままの世界がスクリーンに再現されている。初めてパリへ出た時のモノクロの雨のシーンも効果的だった。撮影のジャン=マリー・ドルージョもすごい力量だ。もちろんセザンヌ役のギョーム・ガリエンヌ、ゾラ役のギョーム・カネをはじめ、フランスの実力派俳優たちの熱演があってこその映画の成功。これを観たらセザンヌの聖地をめぐりたくなってきました。

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