2021年12月29日 (水)

ミイラをCTスキャン?

Photo_20211225152601

 兵庫県立美術館で開催中の『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』。もうひとつのおもしろさはミイラのCTスキャン映像。横たわったミイラの頭の先にモニターが設置されていて、スキャン映像を流している。包帯の下へ、皮膚の中へ、さらに骨格へ。身体がぐるっと回りながらいろんな角度から動画で見せてくれます。

Photo_20211225152701

 1818年創立、オランダのライデン国立古代博物館は世界有数のミイラ・コレクションを所蔵している。その初代館長が将来的な技術の進歩を予見し、ミイラを傷つけずにそのまま保存することを決めた。他国では研究目的でミイラの包帯をほどいてしまう事例もあったなかでの決断。その結果、保存状態は極めて良好だという。

Ct

 おかげで今はCTスキャンという最新技術を活用して、最先端の研究が進められている。いわば非破壊検査。歯や骨の状況が生前の食生活や死亡時の年齢を推定する大きな助けになる。ある男性ミイラは頭部のガンにかかっていたらしい。そこまでわかるとは驚きでしょ。まさに初代J.C.ルーヴェンス館長の先見の明。 

   Photo_20211225121701 Photo_20211225121702

 CTスキャン技術は、これまで何のミイラかわからなかった丸い石のようなものが、じつはコブラのミイラだと突き止めました。古代エジプト人は人間に限らずネコやワニ、ハヤブサやトキなど動物や鳥もミイラにした。この世とあの世を行ったり来たりする魂の、こちらでの容れ物としてのミイラ。パラレルワールドのような死生観ですね。

ライデン国立古代博物館所蔵
古代エジプト展
2021年11月20日(土)~2022年2月27日(日)
兵庫県立美術館

| | コメント (0)

2021年12月26日 (日)

ミイラが立っている⁉

   Photo_20211225115401

 人間のミイラが5体。猫やワニやヘビ、トキやハヤブサなど動物や鳥のミイラが6体。これだけまとまって鑑賞できるのもスゴイけれど、この展覧会はただ並べられた展示を観るだけのエジプト展とは一味も二味も違う。兵庫県立美術館で開催されている『ライデン国立古代博物館所蔵 古代エジプト展』がおもしろい。

Photo_20211225115601

 死者が支配するかのような静謐な空間。広い展示室にずらりと立ち並んだミイラ? じつはミイラを安置する12点の棺でした。ミイラは亜麻布で包帯を巻くようにぐるぐる巻きにされ、生前の姿を描いた木製の覆いをかけられ、ひとまわり大きい色鮮やかな棺に入っている。丁寧に内棺と外棺と二重に作られているものもある。

Photo_20211225115503

 3000年以上の眠りからよみがえった生と死の神秘。木製の棺に色鮮やかな絵画と独特の象形文字ヒエログリフ。死者の業績や賛辞をあらわす「死者の書」だ。こんな目の前でディテールまで克明に鑑賞できるのは、棺が立てられているからこそ。単に立体的で迫力のある展示、というだけじゃなくて大変お勉強になります。

Photo_20211225150401

 ミイラとともに埋葬されている副葬品も多種多様。とくに興味を惹かれたのは護符です。あの世へ行っても病気や災害や争いなど、現世と同じくさまざまな危険がある。だからそれぞれに効く呪文や守り神を表すお守り「護符」が必要だ。素材も石、木、青銅、ファイアンスと呼ばれる青い陶器など、技術力の高さがうかがえます。
   Photo_20211225232501
ライデン国立古代博物館所蔵
古代エジプト展
2021年11月20日(土)~2022年2月27日(日)
兵庫県立美術館



  

 





| | コメント (0)

2021年11月 2日 (火)

ウインクチェアで知りました

   Photo_20211024195401
 日本人がデザインした椅子がMOMAに永久保存になった!と言うニュースに驚いた記憶がある。《WINK (ウインクチェア)》。その日本人が、イタリアと日本を拠点に活躍するプロダクトデザイナー、喜多俊之さんだった。1980年代、エットーレ・ソットサスが主宰し世界を席巻した「メンフィス」と、軌を一にする斬新なデザインでした。

Wink

 《WINK》は背もたれや足置きやヘッドレストの向きや角度を、自由に動かせるソファ。カバーもパーツごとに着せ替えられる。このソファはオーナーの体形や好みに自在に寄り添うことができるのだ。これほど機能的な、これほど人間的な椅子はかつてなかったでしょう。デザインの本場イタリアで世界を相手に活躍するKITAとは?

Wakamaru    

 バウハウス以来のシンプルで無機的な機能主義、近代モダニズムが行き詰まりを見せていたときに、突然あらわれたアンチテーゼ。カラフルで有機的で、複雑で人間的なユーモアを内包したポストモダン。禁欲的 vs. 享楽的。無駄をそぎ落とした機能こそが美である。vs. 人生には遊びも必要だ。引くか、足すか。難しいですね、
Aquos

 2001年、SHARPの液晶テレビ《AQUOS アクオス》のデザインも衝撃でした。AV機器は直線的で色も黒か白、が当時の常識。それがアルミ地金のような鈍く光るシルバーで、オッパイのような曲線のデザイン。このようなステキな人生を楽しむためのイタリア的なデザイン商品群が、喜多さんの活動の大きな柱です。

Photo_20211026154601

 もうひとつ仕事の柱になるのは、日本の伝統的な匠の技をワールドワイドなデザイン力で世界に知らしめること。1971年、福井の和紙を使った照明器具《TAKO》《KYO》を世に出して以来、秋田の杉を活用した家具や、輪島塗、飛騨春慶塗、津軽塗に現代の生命を与え、エネルギッシュに世界に発信し続けている。

   Photo_20211026154801

 各地の伝統工芸に触れるうち、日本の伝統文化には持続可能な社会を実現するための優れたヒントが内在していることに気づく。島根の竹を板状にする技術を用いた《FLAT BAMBOO CHAIR》。竹を将来プラスチックに代わる新たな資源にするというプロジェクトです。たしかに、成長が早く強くてしなやかな竹はいいかも。

Photo_20211026155301

 イタリアと日本のエッセンスを吸収し、デザインの力で西洋と東洋の懸け橋に。イタリア語で「丸太」の意味《TRONCO》と名付けられたベンチ。床柱に使われる北山杉にリサイクルに適したアルミニウムの脚を付けた、美しい長椅子です。伝統文化と近代テクノロジーの融合で未来を開く。彼の哲学がうまく表現された作品です。

喜多俊之展
DESIGN TIMELESS FUTURE
2021年10月9日(土)~12月5日(日)
西宮市大谷記念美術館 

| | コメント (0)

2021年10月25日 (月)

ミロコマチコの生きもの

   Photo_20211016112201

 クマもトナカイもコウモリもウサギも、ミロコマチコが描くとみんな生命力があふれ出てくる。それはパワフルを通り越し、猛々しさや恐ろしさを感じるレベルだ。そこには彼女の動物観、自然観が強烈に反映されているのでしょう。人間に飼いならされない。人間にこびない。それこそが生きものの本質。自然のままの自然。

Photo_20211018185501

 動物を可愛く描くアーティスト。あるいは擬人化して描く作家。彼らは生きもの、つまり自然は人間がコントロールできると信じているのだと思う。ヒトは科学技術の進歩を活用して、自然を切り開き、野生を支配下に置いてきた。文明の発展。人間は万物の霊長。でもその考えは間違いだ、と彼女の作品は気付かせてくれる。

   Photo_20211018190901

 六甲アイランドで開催中の展覧会『ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ』では、人間中心主義で描かれた生きものはいない。ヒトをその辺の虫や石ころと並列でしか見ていない動物や鳥。親しみを感じるでもなく、敵対するでもなく。どう描くかは、どう見るかで決まる。描き出された姿は、鏡に映った作家自身の哲学。

Photo_20211018191701

 奄美大島に移住して以降、ミロコマチコが描くモチーフは現実の生きものにとどまらない。見えないけれど確かに存在する何か。夜になると徘徊する魔物や精霊。風の主や森のもののけ。彼女にとってはヘビやウサギと同じ存在感があるのでしょう。野生も魔性も、本質を見る才能に恵まれたアーティストにはリアルに見えている。

   Photo_20211018185503

 絵本作家、画家、装幀家、アートディレクターとして、今もっとも勢いがあるアーティスト。この展覧会は、絵本の原画や立体作品、ブックデザインや広告のアートディレクション、ミュージシャンとコラボしたライブペインティングなど200点以上を展示。ジャンルを超越して活躍するミロコマチコの魅力を紹介する、必見の展覧会です。

ミロコマチコ
いきものたちはわたしのかがみ
2021年10月2日(土)~12月19日(日)
神戸ゆかりの美術館

| | コメント (0)

2021年10月17日 (日)

2.5次元の金魚が泳ぐ

   Photo_20211015193901

 一合枡で泳ぐ金魚。朱塗りのお椀で揺らめく金魚。寿司桶や文机の引き出しに群れる金魚。ビニール袋や番傘にもいるじゃないですか。いまにも動き出しそうな驚きのリアリティ。でも逆に生物標本のような、生と死のはざまにある神秘的な美しさをたたえてもいる。なんとも不思議な、金魚絵師・深堀隆介の芸術です。

Photo_20211015202301   

 まるで生きているような金魚たち。これは平面である絵画と立体である彫刻の境界に存在する、いわば2.5次元の独創的な表現です。当然のことながら、この作品制作の技法も革命的。器の中に透明な樹脂を流し込み2日をかけて固める。固まった表面にアクリル絵具でヒレだけを描く。その上からまた樹脂を流し込む。

   Photo_20211015194601

 固まると体の部分を少しずつ描く。さらに樹脂を流し、固まったら次の層を描く。何層も何層もこの作業を繰り返し、ウロコの一枚一枚も細密に描いていくと、本物のようなリアルな金魚が出来上がる。透明なエポキシ樹脂とアクリル絵具。使用する画材の相性の良さを発見したところから、創作が始まった。

Photo_20211015203801

 いまでは深堀はその表現の幅をさまざまに広げて、充実した活動を展開している。平面の板に絵を描いて、その一部が透明な樹脂を使った立体の金魚絵になった作品や、すべてを平面絵画にした金魚アップの屏風画などなど。展示の最後の部屋には、縁日の金魚すくいのインスタレーションも。驚きのアートでした。

金魚絵師 深堀隆介展
金魚鉢、地球鉢
2021年9月11日(土)~11月7日(日)
神戸ファッション美術館

| | コメント (0)

2021年10月 9日 (土)

確かに存在する何か

Photo_20211007095201

 アクリルフィルムにシルクスクリーンでプリントされた8点の人物作品が並べられた壁面。一癖も二癖もありそうな男女がこちらを静かに見ている。それぞれの作品の前には燭台が立てられている。これは「葬列」と題された展示。べつに死んだ人の肖像じゃないけれど、薄暗い空間にロウソク、確かに遺影のように見えてくる。

Photo_20211007152801

 死や幽霊。霊魂やテレパシー。目に見えないもの。科学で説明できないこと。そんな超常現象に横尾忠則は幼少期より一貫して関心を持ってきたという。自身も透視や予知などの霊能力に優れていることを自覚。オーソドックスな科学が調査対象にしない現象にも、同じスタンスで対等に取り上げ、作品に生かしてきた。

Photo_20211007152803

 フェリーニ監督をリスペクトしたアニタ・エグバーグ像。顔のないビートルズ。土壁の骨組みにあらわれるかぐや姫の顔。いずれの作品からも、あの世とこの世の境界が曖昧なことを理屈を超えて伝わってくる。人間が思った強い未練や、消すことのできない怨念。目に見えなくてもそれらは確かに存在する、という感覚。

Photo_20211007152802
   
 しかしこれで終わらない。横尾さんの興味は人間の思念にとどまらず、無機質なモノにも向けられる。展示室Bで見られるインスタレーションは、美術館の過去の備品や展示に使った不要物などの残骸。しかしそれらは誰かの思いが宿ったモノ。無機的に見えてもすべて固有の魂を持つ存在だ。作品と同列の扱いがおもしろい。

Yokoo Tadanori's Haunted Museum
横尾忠則の恐怖の館
2021年9月18日(土)~2022年2月27日(日)
横尾忠則現代美術館 Y+T MOCA

| | コメント (0)

2021年10月 5日 (火)

怖~い、横尾忠則


   Photo_20211003200901

 いま「芸術」と「恐怖」との関係性について考察する、という展覧会が開催されている。『Yokoo Tadanori's Haunted Museum 横尾忠則の恐怖の館』。なんか難しそうに聞こえますが、ま、簡単に言ってしまえば横尾作品を使ったホラーハウス、お化け屋敷ですね。10月とはいえ暑い日が続くので、納涼に行くにはピッタリかもしれません。

   Photo_20211003201101
   
 入館して2F展示室に向かうエレベーターに乗ると、もう始まっていました。庫内の壁にもボタンパネルにも血しぶきがかかっている。青い壁と赤い血。まるで惨劇の後のようなありさまで、鮮烈な色の対比がショッキングだ。トイレに向かう薄暗い廊下に、幽霊が描かれた昔の少年マガジンの表紙。前にロウソクが灯っている。

Photo_20211004111401

 チケットのチェックを受けたら、まず真っ暗な部屋に案内される。暗闇の中から不気味な機械音や人間の悲鳴が聞こえてくる。生来の怖がりなので、ドキドキでオソルオソル中へ。少しずつ目が慣れてくると、そこは江戸川乱歩の世界。「白昼夢」、「屋根裏の散歩者」、「闇に蠢く」、「幽鬼の塔」、「黒蜥蜴」、「地獄の道化師」・・・。

Photo_20211003201202

 暗く血なまぐさい展示室にいると、幼児の泣き叫ぶ声が近づいてくる。するとベビーカーを押した若夫婦。連れてくる場所を間違えたか、恐縮しきりで追い越していく。絵も怖いけど、音もまた怖い展示空間。年齢制限はかかっていないとは言え、小さな子にはちょっと可哀想かな。トラウマにならないよう祈っています。

   Photo_20211004112001

 暗闇に浮かび上がるこれらの作品は、江戸川乱歩全集(講談社)の挿絵をインクジェットで拡大プリントしたもの。おどろおどろしい中に独特のユーモアを漂わせた世界。それが乱歩にインスパイアされた横尾ワールドです。挿絵が原作に従属するサブの役割から、主役を張る独自のアートへ。そこに大きな飛躍があります。

Yokoo Tadanori’s Haunted Museum
横尾忠則の恐怖の館
2021年9月18日(土)~2022年2月27日(日)
横尾忠則現代美術館  Y+T MOCA

| | コメント (0)

2021年9月14日 (火)

東影智裕の生命観

Photo_20210909202301

 ラクダやシカやウサギやウシの頭部。皮膚や体毛や毛穴まで超リアルに表現した立体作品の展覧会が、兵庫県立美術館で開催されている。『東影智裕展 触知の森』。恒例の小企画「美術の中のかたち - 手で見る造形」展の31回目として、12点の作品が展示されている。タイトルにある通り、手で触ることができる展覧会です。

Photo_20210909203701

 会場に用意されたゴム手袋をはめて、展示作品に触れながら鑑賞できる。毛皮そのものに見える精緻な毛並み、どこか哀しみ湛えた黒い瞳。手で触ってみて、その硬さに作りものだと改めて確認できる。作者は「いくらリアルに見えようとも、現実に存在する個々の動物の姿を再現したものではなく、さまざまな記憶から抽出したイメージを集積させた、擬人的存在です」と語っています。

   Photo_20210909202403

 エポキシパテという素材を主に使い、流木や倒木なども組み合わせて作る動物たち。病気やケガのせいか、生と死のはざまを魂が漂っているような儚い印象だ。しかしそれが逆に生命力を思い起こさせるから不思議。長い淘汰の過程を生き延び、さまざまな厳しい生存条件をかいくぐって、今ここに存在している奇跡。

   Photo_20210909202402

 頭部から下は身体はなく、表皮だけがビロ~ンと木に張り付いている。また皮膚の一部が蝕まれていたり、ガラスの瞳が半眼に閉じられていたり。どこまでも生命の揺らぎを感じさせる表現だ。生き物をモチーフにした立体作品は、リアルであればあるほど不気味なコワサを感じるものだ。ここにある哲学は健康で幸せな生命を賛美すれば済む、と考えるヤワな生命観ではない。

Photo_20210909212201

 一部屋に12点が展示されているのみの小規模な展覧会なのに、数百点規模の大展覧会を超える存在感がある。生と死の本質を強く喚起させる静謐な空間には、生命の気が充満している。厳しいけれど、見捨ててはいない。冷徹だけど温かい。唯一無二の作品を作り続ける東影智裕に出会えるユニークな触れる展覧会でした。

東影智裕 展 触知の森
美術の中のかたち ― 手で見る造形
2021年7月17日(土)~9月26日(日)
兵庫県立美術館 常設展示室4

| | コメント (0)

2021年8月27日 (金)

今年こそ!ボローニャ絵本展

Photo_20210825101301

 西宮の大谷記念美術館で、今年は『イタリア・ボローニャ国際絵本原画展』が開催されている。昨年はコロナの影響により、残念ながら中止。いまだコロナの感染が収まらない今年も、ボローニャの事務局はオンラインでコンクールの審査。見本市もオンラインで開催されたそうです。だから原画を生で見られるのは世界初。

  Photo_20210825133402

 68ヵ国 3,235組の応募のうち、日本人8名を含む23ヵ国 76作家が入選。台湾やイラン、ロシアやアルゼンチン。国が違えば発想も違う。絵の色使いも違う。そんな新鮮な驚きと、多様性あふれる絵本文化の精髄。イタリアではかなわなかった入選作品「5点1組」の展示を、日本で鑑賞できることはとても幸運だと思います。

Photo_20210825133404

 子どもに向けた本と言っても、明るくハッピーな作品ばかりとは限りません。怖ーいお話やシュールな設定も多く、難民の「避難」をテーマにした作品まであったのには驚きです。テロ、暴力、人権抑圧・・・つい最近のアフガニスタンのみならず、世界にはまだまだ平和とは程遠い地域があることに気づかされる。

Photo_20210825133401

 鉛筆やペンなどのローテクからコンピューターを駆使したハイテクまで、さすが世界から集まった作品だけに技法もさまざま。特に印象に残ったのは、従来の画材にプラスして粘土や糸なども使った作品群。「混合技法」あるいは「ミクストメディア」と表示されるこれらの作品は、デジタル技術の急速な進歩により可能になりました。

   Photo_20210825133403

 来年こそはコロナが収束して、ボローニャで絵本見本市が盛大に開催されますように。世界中からイラストレーターや絵本作家、編集者や出版人が集まって交流し、お互い刺激しあい向上しあえますように。そして世界の子どもたちへ分け隔てなく、夢と希望を与える美しく豊かな絵本を届けられますように。

2021 イタリア ボローニャ
国際絵本原画展
2021年8月21日(土)~9月26日(日)
西宮市大谷記念美術館

| | コメント (0)

2021年7月10日 (土)

かわいい カワイイ KAWAII

   Photo_20210708120601

 いま日本文化を世界に発信するキーワードの一つが『かわいい』です。1970年代から90年代にかけて、女子中高生を中心に爆発的な人気を博したオサムグッズ OSAMUGOODSの原田治も『かわいい』の生みの親の一人。当時、シンプルな線と明快な色彩で描かれたキュートなキャラクターたちが一世を風靡したものです。

Photo_20210708120702

 神戸ファッション美術館で現在開催中の『原田治 展 「かわいい」の発見』。アメリカ黄金時代の50年代、60年代のコミックス、TVアニメ、ポップアートなどから大いに影響を受け、独自の「かわいい」世界を作り上げたイラストレーター原田治(1946-2016)の、無名時代から趣味の抽象作品まで、その全貌を見ることができます。

Photo_20210708130501    

 会場に掲出された原田の言葉にこうあります。「終始一貫してぼくが考えた『可愛い』の表現方法は、明るく、屈託が無く、健康的な表情であること。そこに5%ほどの淋しさや切なさを隠し味のように加味するというものでした」。原田の「かわいい」は、まさに夢と自由の国を現出したミッドセンチュリー文化への憧れ。

Photo_20210708120701

 雑誌の表紙イラスト、本の装丁、作品集の出版と、活躍の場は多岐にわたる。印象に強く残っているのは、カルビーポテトチップスやミスタードーナツのキャンペーン用キャラクター。目に触れる機会が多かったからでしょうか。とにかく人の気持ちを快活にハッピーにしてくれるOSAMUキャラクター。愛されて当然ですね。
 
Photo_20210708130502

 展示会場を出たところには「かわいい」キャラクターたちを集めたOSAMUGOODSショップが。トートバッグやTシャツ、マグカップやランチボックス、フェイスタオルや雑貨小物・・・。そこでは往年の女子中高生たちが目を輝かせて物色していました。可愛い、かわいい、カワイイ、KAWAIIは、いつまでも色あせません。

原田治 展
「かわいい」の発見
2021年7月3日(土)~8月29日(日)
神戸ファッション美術館

| | コメント (0)