2020年7月15日 (水)

熊谷守一の、わたし流

Photo_20200712203401

 その昔1979年のこと、熊谷守一を知って感動した生誕100周年記念の展覧会。その後いくつも彼の展覧会を観てきましたが、今回の『熊谷守一展 わ た し は わ た し 』は構成も展示内容も最高に充実していると思いました。生誕140周年と伊丹市政施行80周年という欲張った冠がついている伊丹市立美術館での企画展です。

1965

 赤や茶色の輪郭線に囲まれた単純なカタチと明瞭な色彩。「モリカズ様式」と呼ばれる独自のスタイルで現代でも評価が高い。『へたも絵のうち』という著書もあることから、ヘタウマの元祖のように思われていますがメチャウマです。本質をとらえているからこそ描ける簡潔な線。それが表現する存在感は写実をはるかに超える。

   Photo_20200712204001

 猫が有名だけれど、庭で見かける昆虫や小動物もたくさん描いている。アリやカタツムリ、カマキリやメダカ。他の画家があまり取り上げないものに、科学者のような目を向けて観察し描写する。映画『モリのいる場所』で沖田修一監督が描いた通りの生活だったのでしょう。生命あるものをいとおしむ心が人一倍強かったのか。

   Photo_20200713133701

 描きたいものを、描きたいように。他人の思惑など気にせず、どこまでも自分流を貫いた先に到達した斬新なスタイル。抽象度の高い具象画。いや抽象や具象などという範疇を超えた世界に、「いい絵」を花咲かせたのだ。どこまでも自分の美を追求した熊谷守一。97歳で亡くなるまで意欲的に創作を続けました。

   Photo_20200713133702

 その風貌と生き方から「画壇の仙人」「超俗の画家」と呼ばれる。家から一歩も外へ出ないし、文化勲章は断るし。知らない人からは変人だと思われてもしかたがない。でも人嫌いではなく、ひっきりなしに客が訪れるにぎやかな家だったらしい。自然のままに「わたしはわたし」を貫いた人生。憧れてもできることではありませんね。

わ た し は わ た し
熊 谷 守 一 展
2020年6月23日(火)~7月31日(金)
伊丹市立美術館

| | コメント (0)

2020年7月12日 (日)

曲げ木と二人のアアルト

Photo_20200711230201

 アイノとアルヴァ。20世紀フィンランドを代表する建築家、アアルト夫妻。夫のアルヴァが主に建築を、妻のアイノがインテリアデザインやプロダクトデザインを受け持ち、共同で多くの素晴らしい仕事をしました。いま神戸の竹中大工道具館で、『アイノとアルヴァ 二人のアアルト 建築・デザイン・生活革命』展が開催中です。

Photo_20200711230401

 アルヴァの生誕120周年を記念して、2018年秋から日本各地の美術館でアアルト展が開催されてきた。昨年の春、東京ステーションギャラリーでの展覧会を見て、当ブログで「アルヴァ・アアルト もう一つの自然」(2019年4月13日)として紹介しています。今回の企画展は大工道具館らしく、『木材曲げ加工の技術革新と家具デザイン』というググッと焦点を絞った展示。

   L

 曲げ木と言えばト―ネットが19世紀半ばに発明したカフェチェアが有名です。柔らかいブナ材を使ったアールヌーヴォーっぽい曲線美。アアルトはフィンランド産の無垢バーチ材(シラカバ)を使って革新的な曲げ木の技術「L - レッグ」を発明。この脚をイスの座面やテーブルの天板に直角にネジ止めすることで、効率よく量産できる。上質の家具が安く手に入るようになったのです。

Photo_20200711230501

 木の温かさを持ちつつモダンでシャープなデザインを可能にしたL型の脚。これを使った北欧モダンらしい涼しげな家具は、20世紀のインテリアに革命をもたらしました。ゴテゴテ飾らない、ギラギラ主張しない。リラックスして心からくつろげて、不要な刺激をいっさい与えない。まるでシベリウスの音楽のように。 

   Photo_20200711230502

 アイノの仕事として有名なのが、イッタラのガラス器シリーズ『ボルゲブリック』(スウェーデン語で水の波紋の意味)。手から滑りにくく、スタッキングもできる、シンプルで機能的な名品です。1932年の発売から90年近くたって今も、世界で愛されている超ロングセラー。アアルト夫妻は一点ものの作品より量産品を普及させて、人々の生活をより良くしたいという理想を追求していたのでしょう。

アイノとアルヴァ 二人のアアルト 建築・デザイン・生活革命
木材曲げ加工の技術革新と家具デザイン
2020年3月28日(土)~8月30日(日)
竹中大工道具館

| | コメント (0)

2020年7月 5日 (日)

ミナ ペルホネンの展覧会です

  Photo_20200703211301

 はじまり おわり すすみ もどる 心と象(かたち)の つくるとつづく・・・『ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく』展が兵庫県立美術館で始まりました。コロナの影響で1週間ほど遅れての開催です。『つづく』というタイトルは、ブランドが継続するという意味を示すのはもちろんですが、繋がる、連なる、手を組む、循環するなど、多様なイメージを想起させるおもしろい切り口の言葉です。

Photo_20200703220603

 流行に左右されず、長年着用できる普遍的な価値を持つ「特別な日常着」をコンセプトに、ミナ ペルホネンは今年で25周年。日本各地の生地産地と深い関係性を築き、オリジナルの生地を作り、プロダクトを生み出す。他に類を見ない独自のものづくりです。自然環境に親和的なテイストや、丁寧なローテクだからこそにじみ出る温かみ。その哲学に共鳴する根強いファンがいるのは納得だ。

Photo_20200703220501

 テキスタイル、ファッションからスタートした活動は、いまやインテリアや食器のコレクションなど生活全般のデザインへと広がっている。国内外のブランドやクリエイターとの協働事業も多い皆川さんが、将来の夢として構想している「簡素で心地よい宿」のプロトタイプ「シェルハウス」。たくさんのスケッチや模型と共に展示されている。これは建築家の中村好文とのコラボで内部も見学できる。

Photo_20200703222901

 この展覧会の見どころは、デザイナーとしての仕事だけではなく、アーティストとしての皆川明をフィーチャーしているところ。谷川俊太郎と作った絵本や新聞小説の挿絵や旅先で描いたスケッチなど、さすが若いころ画家を目指した技量とセンスがうかがえる。それらは創造エネルギーの発露であると同時に、仕事でのアイデアの基にもなっているようだ。創作と仕事の幸せな連鎖。柔軟な思考。

Photo_20200703220602

 鑑賞していた時にたまたま皆川さんが来場され、作品の前で気さくに写真撮影に応じてくださいました。この作品は昨年の秋、東京都現代美術館での展覧会でライブペインティングされたもの。偉ぶらず何事にも真摯に取り組む皆川さんにすっかり魅了されました。
 なお展覧会のポスターやチラシは、メインビジュアルの撮影が上田義彦さん、グラフィックデザインは葛西薫さんだそうです。

ミナ ペルホネン / 皆川明 つづく
2020年7月3日(金)~11月8日(日)
兵庫県立美術館

| | コメント (0)

2020年4月 6日 (月)

メスキータ 没後75年

   Photo_20200404182201

 19世紀末から20世紀初頭に活躍したオランダの画家で版画家でデザイナーのサミュエル・イェスルン・メスキータ。彼は美術学校で多くの学生を指導。だまし絵で有名なM.C.エッシャーも教え子の一人だった。そしてメスキータから大きな影響を受け生涯の師として敬愛したという。白と黒の対比が鮮やかな作品群を見ると、たしかにその画風がエッシャーに受け継がれているのがわかる。

Photo_20200404182202

 エッチング、ドローイング、水彩画などいろんな技法を使ったメスキータですが、彼の特徴は木版画に最もあらわれていると思う。木版ならではのシャープな線。効果的な明暗のコントラスト。計算されたモダンな構図。身近な人々を描いた肖像画も、自然界の動物や植物を表現した作品も、いまなお力強いインパクトを与える。自由なモノの見方や時代を超えた造形力は、とても現代的。

2_20200404182201

 ユダヤ人のメスキータはすでに70歳を超えていたが、1944年ゲシュタボに逮捕されアウシュビッツで亡くなる。逮捕のあとアトリエに残された膨大な作品の一部は、エッシャーや友人たちが決死の思いで救い出し、命がけで守り抜いたそうだ。そして彼らは戦後に展覧会を開催し顕彰に努める。そのおかげでメスキータの名前と作品が今日まで残ったのです。これは幸いでした。

   Photo_20200404182203

 悲劇的な最期から75周年を記念して、昨年東京ステーションギャラリーで開催された日本初の回顧展。新型コロナ騒ぎのさなか、西宮に巡回してきました。マスク着用の義務や入口に手指の消毒液が置かれているのはもちろんですが、混雑防止のため2時間の時間指定が書かれたチケットを渡される。そして他の観覧者とは2m離れるように、とのこと。いまは展覧会などイベントの開催には細心の準備と覚悟が必要なのだ。ご苦労さまです。

メスキータ展 Mesquita
2020年4月4日(土)~6月14日(日)
西宮市立大谷記念美術館
 

| | コメント (0)

2020年3月20日 (金)

長くつ下のピッピ、誕生75年

   Photo_20200317195801
 スウェーデンの児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの『長くつ下のピッピ』が1945年に出版されてから75年。それを記念して神戸ファッション美術館で開催されている展覧会が、新型コロナウイルスによる臨時休館をはさんで3月17日から再開されました。オリジナル・タイプ原稿や挿し絵の原画、94歳まで長生きした作者ゆかりの品々を集めた心温まる展覧会です。

Photo_20200317195802

 風邪で寝込んでいた愛娘を喜ばせようと、元気いっぱいの女の子が活躍するお話を即興で語って聞かせていたのがきっかけで、ピッピは生まれたそうだ。9歳のやんちゃなピッピとゆかいな仲間たちがが繰り広げる奇想天外な物語は、70言語以上で翻訳され世界中で読み継がれている。子どもたちの生命力、大人顔負けの意志の強さ、子どもならではの自由な発想力が、私たちに元気をくれる。

Photo_20200317195901 

 世界一つよい女の子は多くの人々に愛され、リタ・ラーソンの『馬を持ち上げるピッピ』などさまざまなアーティストによるコラボ作品も数多い。ピッピ以外にも『ロッタちゃん』や『やかまし村の子どもたち』シリーズなど、天真爛漫な子どもたちが自由奔放に生きる作品を生み出したリンドグレーン。体罰に反対し、子どもの人権を守る運動の先頭に立つオピニオンリーダーでもあったそうです。

| | コメント (0)

2020年3月 2日 (月)

未だ見ぬ建築家たちの夢

Photo_20200228214901

 『インポッシブル アーキテクチャー』展。建てることが不可能な建築、という意味だけではない。技術的に可能であったにもかかわらず社会的な条件や制約によって実施できなかった建築、実現させることよりも既存の制度に対して批評家精神を打ち出す提案、未来の問題を解決するために建築はこうあるべきだという理想を描くプラン。ガウディのころから建築は建てるだけのものではなくなった。

Photo_20200228214902

 サブタイトルに「建築家たちの夢」とついているように、建築家はアーティストだと改めて思い出させてくれる企画です。素材の知識や構造計算を駆使する現実主義者、そしてまたイメージを操る夢想家。それぞれ得手不得手はあるものの、そして最近は専門化が進んでいるものの、その両面の知識と理解力がなければ建築家は務まらない。そんな考えがもう古いのかもしれないけれど。

Photo_20200228214801

 実現しなかった建築で記憶に新しいのがザハ・ハディドの新国立競技場案。このまえ隈研吾さんの設計で完成しましたが、いろいろ話題になりましたね。改めて見てみると、とても20世紀的な感じがする。乱暴な言い方をすれば、圧倒的な迫力で国家やリーダーの権威を誇示するタイプの建造物。北京オリンピックのメインスタジアムは、まさにそれだ。でも21世紀の日本ではねぇ。

   Photo_20200228214903

 ここまで建築と建築家の話をしてきましたが、この展覧会でおもしろいところがもう一つある。荒川修作+マドリン・ギンズや岡本太郎など美術家に軸足を置いた作家の都市計画案や建築プランなども展示している点。イマジネーションの広げ方が、やっぱり違う。しかし会田誠の「東京都庁はこうだった方が良かったのでは?の図」まで同列に並べるのは、キュレーターの悪ノリじゃないですか?

IMPOSSIBLE ARCHITECTURE
インポッシブル・アーキテクチャー
建  築  家  た  ち  の  夢
2020年1月7日(火)~3月15日(日)
国立国際美術館

| | コメント (0)

2020年2月28日 (金)

実現しなかった建築

   Photo_20200228000301    
 国立国際美術館で開催されている『インポッシブル・アーキテクチャー』という展覧会が、予想していたよりもはるかにおもしろい。建築というのは建築家の提案に対してクライアントがOKと言ってお金を出して初めて実現する。いくら素晴らしいプランであっても、クライアントの無理解や予算の制約で実現しなかったものも数多い。むしろそんな世に出なかったアイデアのほうが良く思えることも。

Photo_20200228000401

 画家が勝手に好きな絵を自由に描くのとは違って、建築家はコンペに参加するのが一般的だ。そして一つの決定案の陰にはいくつもの不採用案がある。おもしろくない案、クライアントの狙いを否定する案、予算におさまらない案。それらは当然として、選考者の許容度を越えた案も不採用。アイデアが時代から進み過ぎていてもダメなのだ。それを理解できる人がいない、という悲劇が起きる。

Photo_20200228000302

 それを逆手にとって、時の権力者や社会の常識に挑戦状をたたきつける建築家もいる。コンペの負けを覚悟で自分の建築哲学を提示し、世の中の啓蒙を図ろうとするのだ。その過激な革新性で歴史に残った建築プランや都市計画案。死屍累々、たくさんの墓標に見えながら、じつは後世に多大な貢献をしていることがわかる。現代の眼から見れば、という話ですが。

Photo_20200228000501

 そして今回の展覧会で新たな発見は、最初から実現性など考えない建築案がたくさんあったということ。実現性を考えない建築? そんなのありえない、と思われるでしょう。でも20世紀以降の国内外のアンビルト建築を、模型や設計図やドローイングで振り返るこの展覧会ではたくさん展示されているのです。不可能な夢物語と思えるプランが、何十年か後にはもてはやされるかもしれません。

IMPOSSIBLE ARCHITECTURE
インポッシブル アーキテクチャー
2020年1月7日(火)~3月15日(日)
国立国際美術館
 

| | コメント (0)

2020年2月24日 (月)

藤井フミヤのアート展

  Photo_20200221222601   

 藤井フミヤさんが昔からアート活動をしていらっしゃることは聞いていた。でも展覧会というカタチで観たのは初めてでした。いまうめだ阪急で開催されている『Fumiyart 2020 藤井フミヤ展』がおもしろい。The Diversity とポスターにあるように、ホント多様な手法、多様な画材、多様な表現を自在に操っているのには驚かされました。

Ai

 色鉛筆、水彩、油彩、アクリル、ボールペン、切り絵、貼り絵、CG・・・おもしろそうと思ったら、すぐにやる。しかも、どの表現もめちゃ上手い。ご本人はアートの専門教育を受けていないから、と謙遜されますが、なかなかどうして。一つの表現手法を極めるのさえ至難のことなのに、彼はらくらくと描いているようだ。まるで天才サーファーが自由に波と戯れるように。

Photo_20200223232601

 ラファエロやダヴィンチやポッティチェッリへのオマージュ作品から、SF的な抽象イメージまで。女性の美しさ、エロチックな魅力をテーマに、想像力の翼を思いきり広げた藤井ワールド。まさにFumiyaのart  Fumiyart。このタイトルも秀逸です。デジタルもアナログも、ジャンルを飛び越えた30年にわたるアーティスト生活。あなたも約100点の作品に驚きと感動を味わってはいかがでしょう。

  Photo_20200224110301

藤井フミヤ展
The Diversity 多様な想像新世界
2020年2月16日(日)~2月24日(月)
阪急うめだ本店9階ギャラリー
阪急うめだ本店9階ギャラリー  

| | コメント (0)

2020年2月21日 (金)

病気と老いとユーモアと

Photo_20200219114102

 喘息、不眠、骨折、帯状疱疹、顔面神経麻痺などさまざまな病歴を持つ横尾忠則さんの『病気』にまつわる作品や、病床での日記、入院中のスケッチなどが展示されている。主な病歴を紹介する横幅7~8mぐらいのパネルを読むだけでもおもしろい。ご自身のレントゲン画像も展示。これがしっかり作品となっている。自分自身を笑い飛ばすユーモア感覚も、アーティスト横尾さんの魅力です。

   Photo_20200219114202

 「今夜の酒には骨がある」「網膜が見た夢Ⅱ」「突発性難聴になった日」「エジソンと点滴」などなど、病気や死者への想いがこめられた作品がたくさん展示されている。ケガや病気や老いを通した、みずからの身体との濃密な付き合い。横尾さんにとっては心も魂も死んだ人との交流でさえ、肉体感覚の一部なのでしょう。

Photo_20200219114501

 兵庫県内の公立病院が統廃合されたときに不要になった標識や什器類を借りてきて展示に使っているそうだ。やはり年季の入ったものは違う。本物ならではの存在感とリアリティ。会場に配置された関係者も白衣姿。それも今どきのオシャレ白衣ではなく、昭和なイメージのレトロ感たっぷりの。病院特有のニオイこそしないものの、見た目は病院そのものです。

Photo_20200219114101

 1階のオープンスタジオで開催されていた弦楽四重奏のコンサート。播磨室内合奏団のみなさんはもちろん白衣を着ていました。しかも演目の一つにシューベルトの「死と乙女」を選んでいたのには笑いました。「ショスタコーヴィッチ チクルス vol.4」という真面目なコンサート。そんななかでのユーモア。アートも音楽も、もしかしたら人生も、ユーモアをなくしたらつまらないものになるのでしょうね。

   Photo_20200219114201

 実生活や創造の現場における横尾の肉体に対する意識を探る当院の試みが、皆様の健康増進の一助となりましたら幸いです。なお、当院では医療行為は行っておりませんので、あしからずご了承ください。との告知が展覧会のあいさつで述べられておりました。お間違いなきようヨロシクお願い申し上げます。

兵庫県立横尾救急病院 展
2020年2月1日(土)~5月10日(日)
Y+T MOCA
横尾忠則現代美術館

| | コメント (0)

2020年2月18日 (火)

兵庫県立横尾救急病院へ

  Photo_20200216181101

 新型コロナウイルスによる肺炎が問題になっているいま、『兵庫県立横尾救急病院 展』とはおもしろすぎる。偶然こんな時期に当たってしまったのでしょうが。「展覧会には1年以上の準備が必要なので、たまたまです」と学芸員の方もおっしゃっていました。しかし超能力がある横尾忠則さんのこと、なんらかの予感があったのかも、と思えてしまうほど、絶妙のタイミングになってしまいました。

Photo_20200217150901

 入場チケットは「診察券」、出品リストは「カルテ」風レイアウト。展覧会場の入り口には救急の赤いランプが点滅している。チケットを販売する人も会場の案内をする人も全員が白衣姿。異様と言おうか、まさに病院に来た感じ。会場構成も「小児科」「外科」「眼科・皮膚科・耳鼻咽喉科」「入院病棟」「老年病科」「スポーツ外来」と分類。この展覧会の趣旨は以下のように書かれています。

Photo_20200217151002

 兵庫県立横尾救急病院は、美術家・横尾忠則の肉体と生活・創作との関係を探ることを目的に、横尾忠則現代美術館に期間限定で開院いたします。当院では、頭や心よりも肉体感覚を通して得られるものに信頼を置く横尾の生き方を基本理念に、眼科、小児科、外科など様々な診療科をご用意し、絵画、版画、ドローイング、、著書や愛読書といった幅広い作品と資料から、皆様に肉体との付き合い方を見つめ直す機会をご提供することを目指します。

   Photo_20200217151003

 展示物を見ても点滴スタンドや松葉杖のインスタレーションなどがおもしろい効果を出している。油彩画やコラージュだけではなく、展示会場全体がひとつの横尾作品なのだ。知らなかったけれど横尾さんはいろんな病気を体験しているそうだ。「横尾忠則 主な病歴」という横幅5~6mのパネルも笑えてしまう。これらすべてが横尾ワールド。展覧会の究極のカタチかもしれない。

兵庫県立横尾救急病院 展
2020年2月1日(土)~5月10日(日)
Y+T MOCA
横尾忠則現代美術館
 

| | コメント (0)