2019年11月 6日 (水)

これは犬島の番犬?

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 なんだ!なんだ! 家からヌッと上半身をあらわした犬。これは瀬戸内国際芸術祭の作品ではないようですが、犬島でえらい目立つアートなので、番外としてぜひ紹介したいと思います。この二階建ての白い建物、おかやま山陽高校の海の家。それを犬小屋に見立てたこの立体作品は、長さ5.1m×幅2.4m×高さ3mという巨大さ。『犬島の島犬』という作品名もおもしろい。

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 アーティストの川埜龍三さんが「犬島ハウスプロジェクト」として2年の歳月をかけて制作した巨大パブリックアート。特殊セメントで犬の身体を造形し、体表に2万枚もの陶板タイルやアンティーク陶器やガラスモザイクを貼り付けた。ガウディを思わせる破砕タイル技法です。1500人もの人がさまざまな願いや思いを込めて作った陶板タイル、各地のワークショップで作られたそうだ。


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 かつて採石や銅の精練で栄えた犬島も、いまは人口50人を切るまでに過疎化が進む。この島の番犬か守り神のように沖を見つめている犬。島の将来を考えているのでしょうか。設置されたときには「オープンドッグハウス」という内部の見学会も。参加者は体内に入り、覗き窓になっている眼のところから外の景色を眺めたという。機会があれば中へ入ってみたいものですね。

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2019年11月 3日 (日)

精練所と家プロジェクト

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 犬島は江戸城、大坂城、岡山城などの石垣に使う花崗岩の切り出し地。石の産地です。明治時代には銅の精錬所が開設される。その遺構を再生したのが『犬島精練所美術館』。三分一博志の建築と柳幸典の作品で構成される。銅を精錬した残りかすを利用した黒褐色のカラミレンガでできた重厚な空間の中で、三島由紀夫の世界観を味わえるアート作品の展示。近代化産業遺産の廃墟としての美しさは三島の滅びの美学に通じるのでしょうか。

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 最盛期には6,000人もの人々が暮らしていた犬島も、社会や経済状況の変化と高齢化により現在は50人を切っているという。そんな島をアートの桃源郷にしようとする建築家の妹島和世さんとディレクターの長谷川祐子さんが手がける家プロジェクトが見ものです。島内に点在するかつての家の跡地に『F邸』『A邸』『I邸』『S邸』『C邸』の5つのギャラリーと『石職人の家跡』に作品を展示。

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 作品を展示しているのは、名和晃平、荒神明香、ベアトリス・ミリャーゼス、半田真規、オラファー・エリアソン、浅井裕介など素晴らしいアーティストたち。この島の歴史や身近な自然が感じられる。かつての家の古材や屋根瓦を使ったり、まわりの風景が見える透明アクリル、映り込みの面白さを狙った反射板、発砲させたウレタンフォームなど使用されている素材もおもしろい。

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 小さい島なので集落を歩いて作品を観て回れる。ちょっと休憩したくなったら妹島和世さんの作品『中の谷東屋』が。アルミの鏡面仕上げの屋根は周囲の風景を映し出し、風が通り抜ける空間は周囲と一体となる。中にはSANAAデザインのラビットチェアも用意されていますよ。キノコの傘の下にもぐったようなこのスペース。あれ、話し声や音がエコーになってる。異次元に入った感覚です。

瀬戸内国際芸術祭 2019
ひろがる秋
2019年9月28日(土)~11月4日(月)

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2019年10月31日 (木)

宇野港の巨大チヌ

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 第4回目の瀬戸内国際芸術祭。その第1回目に設置されて以来、宇野港の名所になった淀川テクニックさんの『宇野のチヌ』。カラフルなチヌ(クロダイ)は、JR西日本のCMで仲間由紀恵さんとも共演した人気者です。海の漂流物や家庭からの不用品で作られた長さ4mぐらいのこの作品。3年ごとに開催される芸術祭に合わせて、潮風で劣化したパーツを入れ替えてお色直しされるそうだ。隣には中が滑り台になった『コチヌ』もいます。

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 ポリバケツやオモチャ、スキーのストックやハンガー、洗剤のボトルやサンダルなど、捨てられたありとあらゆるゴミを集めたこの作品。私たちの生活から廃棄されたプラスチックや金属などでできた鎮魂碑のようです。快適な文明生活とは、たくさんの資源を使い、いっぱい使い捨てること? 便利さを享受する陰で海洋や土壌や空気中の環境汚染問題を引き起こしている。アーティストの静かな声が聞こえるようです。少し離れた公園には同じ淀川テクニックさんの『イノシシ』もいました。 

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 小沢敦史さんの『舟底の記憶』も宇野港にあります。黒い大きなヒトデのような、ダースベーダーのような、不気味な姿を横たえている。旧日本軍の軍艦のイカリやノルウェー船のスクリューなど打ち捨てられた鉄のパーツを集めたオブジェ。古びた金属の重厚さに長い時間を感じます。インフォメーションセンターのそばには。同じく小沢敦史さんが放置自転車をアート化した赤や青や黄色の可愛い作品『終点の先へ』も。レンタルできるので宇野の街をサイクリングするのもいいですね。

瀬戸内国際芸術祭 2019
ひろがる秋 
9月28日(土)~11月4日(月)

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