2023年10月15日 (日)

小便小僧と標高線

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 前回に続き、六甲高山植物園で観られるミーツアートの作品をご紹介。「あれ、天覧台のキジが!」 池のそば、白とピンクの物体の上に、たしかに羽を広げたキジがいる。前に回ると、、、植物園の奥に立っている小便小僧だ。逆立ちをしているが、勢いよく小便を出している。これは北浦和也の作品『Picnic on Circle Circus』。

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 六甲山にある3つのモニュメントを集めてコラージュした立体作品。ピンクのは「六甲山美化協力会」のキャラクターだそうだ。この地ゆかりのモチーフを集合させ、六甲山の土や水、空気や匂いを感じながらピクニックをするような作品を制作しました、と作家は言っています。1ヵ所でいろいろ巡った気分になる、かな?

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 鮫島弓起雄の『山を解く』もユニークな作品だ。カラマツ林の中に張りめぐらされた黒い帯、じつは標高(メートル)を表している。左に「822」、真ん中奥に「824」という数字が見えますか。地図なら等高線にあたります。きわめて哲学的。ちなみにJR六甲道駅は25m、六甲ケーブル下駅は250mらしい。山を実感できたでしょうか。

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 もうひとつ、柴田まお『Camouflage Print』をどうぞ。ん?どれが作品?と迷わせる、緑の中のフェイクの緑。陽光が透ける美しい広葉樹の葉っぱの写真を、厚さ20cmほどのボードに張り付けている。いろんなカタチの木、でも幹や枝まですべて同じ葉っぱの写真。面白い。観念としての木。背景の木々が紅葉したらどう見えるかな?

六甲ミーツ・アート
芸術散歩2023 beyond
2023年8月26日(土)~11月23日(木・祝)

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2023年10月11日 (水)

映る、透ける、歪む

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 透明な球?凸レンズ? 光を感じる物体が約700個、白いワイヤーで作られた棚にびっしりと並ぶ。六甲高山植物園のカラマツ林の中に設置された加藤美沙さんの作品『溢れる』がおもしろい。ジャングルジムのように組まれたワイヤー棚に、透明な球がはめ込まれているのだ。美しく、涼しげで、宙に浮かびそうな軽やかさ。 

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 近づくと向こうに透けて見える青空。上下左右が反転して映り込む周りの風景。輝き、歪み、重なり、隙間からのぞく実際の情景と響きあう。光あふれる多重ワールド。ウーム。よく見るとワイヤーの格子が食い込んでいる。透明だけど、ガラスやアクリルのような硬い素材ではなさそう。「触ってみてください、どうぞ」と声が聞こえた。

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 ちょうど作家の加藤さんがメンテナンスに来ていたのだ。触るとプニュプニュ。赤ちゃんの肌のように弾力がある。意外な感触に「えっ、素材は何だろう?」と驚いていると、加藤さんはポケットから円形のビニール袋を取り出した。「これです。透明度が高く、強度もある。市販品ですよ」 これにポンプで水を詰めてきつく縛ると言う。

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 「朝一番にここへ来ると、夜露で真っ白になっているんですよ。すりガラスのように全体が輝いて」と加藤さんは言っていました。さぞ幻想的なんだろうな。作品の案内ボードを見ると、手のひらにOKと書かれたマークと、「作品に触れられます」という文言が。いい試みだと思います。触って初めてわかる面白さもありますからね。

六甲ミーツ・アート
芸術散歩2023  beyond
2023年8月26日(土)~11月23日(木・祝)

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2019年11月12日 (火)

ヤンチョビ博士に会いました

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 やさしい色合い。フワンとしたカタチ。半透明でマットな素材。六甲枝垂れの前に設置された岩城典子さんの『ヤンチョビ博士』が素晴らしい。「ヤンチョビ」って何だろう? 意味はわからなくても、どこかヤンチョビな感じ。石垣に腰かけて、物思いにふけっているのか、大阪湾を眺めているのか。物語を感じる背中です。

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 シュールだけれど、ほのぼのしてる。ベルギーのジャン=ミシェル・フォロンを彷彿とさせる世界。ヤンチョビの住人たちはみんな頭にプロペラを載せているらしい。空を飛ぶのだろうか。犬までプロペラをつけている。ということは空が住処かも。雲の中に住まいがあって、学校もあって、街が広がっていて。妄想も広がっていく。

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 そして心臓(?)がボーっと光る。明るくなったり、暗くなったり。オブジェのふりをしているけれど、生きているに違いない。人々が寝静まったらもぞもぞ動き出すのかも。はるか遠くの宇宙人のような、すぐ近くの住人のような不思議なキャラクター。きっと穏やかな思索の人=ヤンチョビ。お友達になってもいいと思いました。

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 もう一点ご紹介しましょう。子どもたちがガラス箱の中を覗き込んでいます。何だと思いますか。これは前田真治さんが作った新しい概念の立体アート作品。競馬や競艇の外れ券を大量に集めて積み上げたもの。しかも展示した場所の土地の価値と同額の外れ券だという。なるほど!と合点しました。しかし、これがアートと言えるのかと思われる方もいるかもしれません。

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 ここに表現されているのは、人間の情熱、欲望、時間、労力、希望、失望、喜び、悲しみ、怒り、後悔などなど。ありとあらゆる感情とたくさんの夢と挫折。あるいは血と汗と涙の人生。アーティストは「思い通りにいかないのが人生、だからおもしろいんだよ」と言っているのかもしれない。ま、鑑賞者にこんな想像を起こさせることこそアートの力。作品名が『cashless』というのも意味深です。

六甲ミーツ・アート
芸術散歩 2019
2019年9月13日(金)~11月24日(日)

 

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2019年11月 9日 (土)

ソフトクリームとアンブレラ

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 いつも単純だけどパワフルなアイデアで楽しませてくれる松蔭女子中学校と高等学校の美術部が、今年も出展しています。六甲山カンツリーハウスの池の畔に展示されている『ハッピー・ソフトクリーム!』。地面に落ちてコーンから溶け出したソフトクリームは、シズル感たっぷり。ファミリーが楽しむ遊園地の、ある、ある、で笑える作品。子どもたちにも人気です。

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 まわりに立ち入り禁止的に張り巡らされたバーを支えるパイロンも、ソフトクリーム用のコーンになっている。芸が細かい。道路工事現場で使うパイロンもコーンとか三角コーンと呼ぶからね。あ、池に浮かんだ脚漕ぎボートの屋根にもコーンが! これで本体からまわりの囲いへ、そしてボートが行き来する池の水面へと視線が広がり、作品のスケールがグンと大きくなりました。

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 キャンプ場のテント? 大きな傘の骨組み? 大芝生の斜面に金沢の雪吊りのようにロープを張った作品が並んでいる。ロープだけで壁はないけれど、中に入って座っている人などは自分の部屋にいるかのようにくつろいでいる。リラックスして瞑想にふけっているのでしょうか。こんな建築の原点とも思える不思議な立体作品は、藤江竜太郎さんの『ソライロアンブレラ』です。

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 中央の支柱から登山用のザイルを何本か地面に張っただけ。日差しも入る。雨も降る。風も吹き抜けるし、夜は星も見える。文字通り自然と一体のこの作品、屋根や壁はなくても外界から切り離された特別な空間になっている。神社で聖域と俗世界を隔てるのが、縄一本だけというのに似ている。抽象化された境界にもかかわらず、人はその意味を解し、心地良さを感じることができる。

六甲ミーツ・アート
芸術散歩 2019
2019年9月13日(金)~11月24日(日)

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2019年10月25日 (金)

魔法の森やガラスの庭

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   もし魔法が使えるなら何がしたい?
   空を飛んだり、透明人間になったり、時間を戻したり、
   未来を見たり、お金がたくさんあったり、
   好きな食べ物をお腹いっぱいに食べたり。
   大好きな人と想いが伝わりあったり。
   魔法の森  それはいろんな願いが叶う、不思議な森。

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 秦まりの作「MAHOU NO MORI/Magical forest」に添えられた、作者からのメッセージです。シルクスクリーンでプリントした顔を活かして作ったぬいぐるみのような立体作品。ユニークなキャラクターが林のそこかしこにいる。小径を歩いていくと次々と木の陰から現れるカラフルでポップなクリーチャーたち。魔法の森で願いを聞き届ける妖精? 私たちを迷わす悪魔の手先? 正体はよくわからないけど、不思議なパワーを感じるところが魔法なのでしょうか。

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 六甲高山植物園にはガラスでできた枯山水の庭が。大東真也の作品「記憶の庭園 Garden of memory」です。ガラスを素材に立体作品を作るアーティストが、枯山水の概念をガラスの破片やオブジェで表現したもの。映り込みや反射など光の当たり具合で見え方も変わる。雨に濡れたら水滴や流水でまたその表情を変化させる。まさに自然と一体になった『庭』がそこにある。静謐だけれど脆くて移ろいやすい。その一瞬の時間は二度とない。一期一会。

六甲ミーツ・アート
芸術散歩 2019
2019年9月13日(金)~11月24日(日)

 

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2019年10月22日 (火)

金の鶏、ランタン、風の力

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 六甲ミーツ・アート2019の作品を、これから何回かに分けて順次ご紹介していきたいとます。
 オルゴールミュージアムのそばに池がある。この池の中に浮かぶ小さな島は、アーティストに作品の制作と展示について強いインスピレーションを与えるようだ。毎年かなりの力作に出会えます。今年は若田勇輔の「The Cock」。六甲山には神功皇后が金の鶏を埋めたという伝説が伝えられていて、その話を基にプラスティック製の金色の花びらを集積して作ったそうだ。

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 オルゴール館から高山植物園に向かう木道沿いには、数百本の黒いオブジェがススキのように風に揺れている。中森大樹の「Texture of Energy」だ。風を受けて揺れ動くことによって発電して光る、という作品。細い棒の先につけられた発電素材とLEDを使って、風の強さや吹く方向で明るさや動きが変わるそうだ。目に見えない風のエネルギーを可視化するのがアーティストの狙い。昼間もいいけれど、もう一度暗くなってから見に来なくっちゃ、と思いました。

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 高山植物園内にある映像館。その廊下を使った栗真由美の「builds crowd AMAGASAKI」がおもしろい。軒お先から吊り下げられたたくさんのランタン。光る雲のような上部と可愛い家形が集まった下部。家々の明かりはぬくもりや郷愁をかきたてます。母に抱かれて夕方の買い物に出かけた幼いころの記憶。ほのかな匂いまでよみがえってきそうです。

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 近づいて見ると、ランタンになっているのはすべて実在の商店や建物。尼崎の商店街を取材して写真を撮り、ランプシェードのように天井から吊り下げた。焼き肉屋にカラオケ屋、居酒屋にバイクショップ。ビリケンさんのお堂まである。とても緻密な作業がリアリティを与えているんだ。雑多なお店が好き勝手にデザインした看板を並べた商店街。そのカオス的状況が生み出す人間的な温かさと居心地の良さ。うまく表現しています。

六甲ミーツ・アート
芸術散歩 2019
2019年9月13日(金)~11月24日(日)

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2019年10月19日 (土)

オルゴールと宇野亜喜良

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 六甲オルゴールミュージアムの開館25周年を記念した演目が『宇野亜喜良のシンデレラ』。彼が描いた絵本「シンデレラ」(フレーベル館)のイラストを大きなスクリーンに投影し、お話を朗読する。そして場面に合わせて古き良き時代のディスク・オルゴールや自動演奏ピアノの音楽が奏でられるオルゴールシアターです。いまだ健在、幻想的な宇野亜喜良のイラストに、どこか懐かしく祝祭的な華やかさを持つアンティーク・オルゴールの音色が見事にマッチ。観客をメルヘンの世界へ誘います。

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 このオルゴールシアターは「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2019」の作品のひとつ。第10回目を迎えた今年の秋も、六甲山上は現代アートに出会う楽しさを求めて多くの人たちが訪れています。大自然のなかに点在するアート作品を歩いて巡るミーツ・アート。さわやかな季節のイベントとしてすっかり定着してきました。ライトアップなどで夜景と一体に楽しめる作品のほか、今回は「ザ・ナイト・ミュージアム」と称する夜間のみ見られる作品も3点あります。

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 展示されている合計44点のアート作品。「芸術散歩」というサブタイトルがついているように、ハイキングがてら歩いて観て回るのが健康的で気分もいい。とは言え山の上の広いエリア。何日かに分けて鑑賞できる時間の余裕がある人なら可能ですが、普通は六甲山上バスで効率よく動くことになる。先日の台風の被害で補修中の作品もありましたが、これも野外ならでは。空と緑と大地に包まれたアート鑑賞は、美術館にはない魅力がいっぱいです。

六甲ミーツ・アート
芸術散歩 2019
2019年9月13日(金)~11月24日(日)
 

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