2020年6月20日 (土)

エズ・デブリンの魔法


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 舞台美術の常識をはみ出している。誰も思いつかなかった方法論でステージを演出する。デジタル映像やコンピューター制御の光を駆使して、ステージデザイナーという新しいジャンルを切り開いたエズ・デブリン。その圧巻の仕事ぶりで演劇界に革命をもたらした天才芸術家です。NETFLIX「アート・オブ・デザイン」の一篇。

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 ロイヤルオペラハウスやメトロポリタン歌劇場など名門からのオファーが引きも切らないエズ。演劇やオペラの舞台のみならず、ビヨンセやU2、アデルやカニエ・ウエストのステージを作り上げ、有名ブランドのファッションショーも手掛ける。1971年生まれ、ロンドンを拠点に世界を駆けまわる超売れっ子デザイナー。

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 ステージに不吉や歓喜といった抽象的な心象をもたらす手腕は、「エズの魔法使い」と呼ばれる面目躍如。彼女はステージ美術について「物理的には何も残らない。そこがおもしろい」と言う。出演者と観客が、その瞬間その場で共有したイメージと空気。二つとして同じモノはない、これこそ至上の作品かもしれません。

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2020年6月11日 (木)

ネリ・オックスマンの独創

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 1976年イスラエル生まれ。建築家、デザイナー、発明家、そしてMITメディアラボ教授。彼女の作品はMoMA、スミソニアン博物館、サンフランシスコ近代美術館などで常設展示されている。自然界にある要素を建築やプロダクト、ファッションなどのデザインに取り入れることを意味する「マテリアル・エコロジー Material Ecology」という造語の生みの親。うーん天才なんですよね。

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 こんな説明では何をしている人か想像できないでしょうから、「The Silk Pavilion (絹のドーム)」という作品をご紹介しましょう。これは絹糸とロボットアームで作られたフレームに、6,500匹の蚕がモゾモゾと動きながら糸を吐き出して作った建造物(?)。テクノロジーとバイオロジー(生物学)を融合したデザイン。つまり3Dプリントなどデジタル技術と生物世界を融合した研究をしているのだ。

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 なんか、スゴイ! メチャおもしろい!(独創的過ぎてよくわからないけど、トホホ) 自然環境の危機に対しては、「この惑星の未来はデザインで守らなくっちゃ」と考える彼女の天才にお任せします。それにしてもネリ・オックスマン、チョー美人です。女優みたいでしょ。本筋の理解がイマイチなもので・・・。

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2020年6月 8日 (月)

ビャルケ・インゲルスの解答

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 必要だけれど嫌われ者。日本でも世界でも、ゴミ処理場は郊外の人目につかないところに設置するのが常識でした。建築家ビャルケ・インゲルスが示した解答は? スウェーデンまで見晴らせる、高さ90m、面積31,000㎡のスキー場を上に乗せたゴミ処理場。彼は「人の集まる場所」にしようと考えた。

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 ゲレンデの上に登っていくエレベーターからは、内部でゴミ処理をしている作業工程が見える。巨大な煙突は、直径30mの煙の輪を、ポッ、ポッと吐き出す。社会問題でもあるゴミ処理をエンターテインメントにしたレジャーランド。上からスキーで滑り降りる快楽を問題解決のキーポイントにするなんて、彼以外に誰が思いつくだろう。

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 1974年生まれのインゲルスは、スケールの大きさを良しとした20世紀モダニズムの巨匠たちとは、明らかに違う。今までなかったデザインを創造して自分の名声を高めることを目指していない。目的はクライアントの課題解決。だから決して彼の建築は高くない。住居と駐車場が一体の山になった集合住宅や、生き物のような多機能街づくり。そんな見事な解決策の結果、彼の評価は高まった。

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 コペンハーゲン、NY、ロンドンにオフィスを構える彼の建築事務所BIG(ビャルケ・インゲルス・グループ)。サーペンタイン・ギャラリーの庭に作ったパヴィリオンもおもしろい。グラスファイバー製のブロックを積み上げた壁で、ファスナーを開いたようなフォルムを実現している。素材も、工法も、費用も、すべての要素を満たす最適解。それが彼とBIGの考えるデザインなのだ。

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2020年6月 5日 (金)

オラファー・エリアソン入門

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 『アート・オブ・デザイン』というNetflixオリジナルのシリーズがサイコーです。アートとして、エンターテインメントとして、知的好奇心を思いっきり刺激する。1、2シリーズ合わせて14人のアーティストの人と仕事を、1話45分ほどで手際よくまとめている。美術家や、建築家、イラストレーターや舞台美術家、タイポグラファーや写真家など(みんな広義のデザイナーだ)。そのうちの何人かを紹介します。

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 現代アートの最先端を走るオラファー・エリアソン。ベルリンにスタジオを構える彼は、光についての探求が主要な関心のようだ。例えば特殊な黄色いランプで照らすと、色が消えて世界はモノクロームに。ロンドンのテートモダンの巨大空間に出現させた人工太陽はその応用例だ。彼のスタジオがユニークなところは建築家や科学者も働いているところ。そんな彼が作るアートは規格外!

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 NYイーストリバーに作った大きな滝。この作品はブルックリンブリッジの下の滝を遊覧船で巡って鑑賞する。アイスランドの氷河から流れ出した氷の塊をストーンヘンジのように並べた作品もおもしろい。いっさい説明がなくても地球温暖化を考えさせる力がある。少しずつ融けて消滅してしまう作品なのだから、しかも何万年という時間をかけてできた氷なのだから。

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 3月14日から予定されていた東京都現代美術館での個展『ときに川は橋となる』が、新型コロナにより延期になっていました。サイトを見ると6月9日(火)からスタートし、9月27日(日)まで開催されるようです。アートとサイエンスの融合でサステイナブルな世界をデザインするオラファー・エリアソン。アートの概念をはるかに超えた感動が、日本で楽しめるチャンスです。



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2019年11月27日 (水)

フジモリ建築を体験する

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 写真のセンターが『空飛ぶ泥舟』、左の奥が『高過庵』、その下に『低過庵』。逆光で日陰に入っているので少し見えにくいですが。これらは建築史家・建築家の藤森照信さんが作った茶室です。畑の中に建つ唯一無二の建築は、普段は公開されていない。どうやって入るのだろう?と不思議に思う三つの内部を見学できるという、貴重な貴重な「フジモリ建築見学会」に行ってきました。

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 ジブリ映画に出てきそうなワイヤーで吊られた『空飛ぶ泥舟』。立てかけられた梯子から恐る恐る中ににじり入ると、たしかに天井が舟底のように見える。天地が逆さまの舟。茶室なので当然のことのように炉が付いている。可愛い煙突もある。地元の人々は外観から『パーマンの家』とも呼んでいるそうな。遊び心だけでできたような建築で、じつに素晴らしい。

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 6mの木の上に作られた『高過庵』は、タカスギアンと読む。なんでこんな見上げる高さに、なんて考える人のために名付けられた? 面白さの追求は茶の道の大切な要素です。二段にかけられた梯子を登るとこれも揺れている。ワイヤーで吊られた泥舟とはまた異質な揺れ。揺れもまた楽し。屋根の上に突き出た天窓部分は金箔張りで、白い漆喰の壁に柔らかい光が漏れてくる。

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 縄文時代の竪穴住居のような『低過庵』は、半分地下に埋もれたヒクスギる空間。地面から階段を降りてさらに身をかがめて滑り込む。暗い室内では外の話し声や鳥の鳴き声が別世界からの音のように響いてくる。あの世に行ったらこんな感覚だろうか。そしてこの低過庵は屋根がスライドして開くのです。ここには電気が通っていないので、室内はロウソクの灯り。屋根も先生がロープを引っ張って開けてくださる。パッと光がさして、この世へ無事に帰還。

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 この見学会は茅野市美術館が主催したイベントで、藤森先生が現地で自らの作品を解説してくださるという夢のような企画。でも残念ながら開催は不定期で、2~3年に一度あるかないかのようです。常識にとらわれない、しかし古くからの文化や素材を研究しつくされた建築。古代のような、未来のような。アフリカのような、日本のような。時間と空間を超越したフジモリ建築を堪能した一日。たっぷりと脳の栄養をいただきました。

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2018年10月15日 (月)

ガウディが求める光

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 サグラダファミリアの生誕の門は朝日が当たる東に向いている。その東側の壁面は青を基調としたステンドグラスがはまっている。内部の壁や柱や床や天井が青い光に染まって、清新な気持ちに包まれる。

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 西側には受難の門。そちら側の壁面には夕日をイメージした赤を基調としたステンドグラス。十字架を背負い、ゴルゴだの丘へ向かい、磔刑にあうイエスの物語。一日の終わりと人生の終わりが重なる重厚な思いが満ちる。

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 コロニア・グエル教会のステンドグラスはシンプルな花。黄色は十字架を表しているのでしょう。小さな町の小さな礼拝堂にふさわしく、簡素でかわいらしい。半地下の薄暗いスペースにさす光がとても幻想的で、静かに祈りをささげる場を生み出している。

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 住宅建築でも、光に対するこだわりはとても強い。地中海の海をイメージしたとされるカサ・バトリョ。波打つ壁面には海の泡のようなパターンが濃いブルーや淡いブルーで表現されている。見物客は水の中を漂う魚の気分。

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 山の石切り場をイメージしたカサ・ミラには色ガラスは使われていない。でも曲面で構成された壁が彩色されたていたり、微妙なくぼみが作り出す光と影が深みを出したりで、光の効果を最大限に利用している。天才建築家ガウディは、光の扱いも天才でした。

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2018年10月12日 (金)

コロニア・グエル教会から始まった

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 バルセロナから電車で30分ぐらい郊外へ。コロニア・グエルという町がある。ガウディはここの教会の設計のために、あの有名な逆さ吊り実験をおこなった。それが後のサグラダファミリアにつながることになる。これがガウディの最高傑作!と言う人もいるそうだ。
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 コロニア・グエル教会。スケールや素材はまったく違うけれど、受ける印象がサグラダファミリアにとてもよく似ている。アーチ状の天井の梁、斜めに林立する柱。重量を支える構造がそのまま見えて、しかも美しい。

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 この建物は本来は二層構造になる予定が、ガウディがサグラダファミリアに専念することになり、上層部が作られなかった。礼拝堂として使われている部分は、半地下の穴倉のような空間。だから外観も建設途中の現場が廃墟になったのかのよう。

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 このコロニア・グエルの町はグエル氏が経営する繊維工場を中心として、働く人たちの住宅や商店、公園、そして教会などを整備したいわば理想都市。100年ほど前のモデルニスモの建物で統一されていて、そのまま時が止まったような、おだやかな美しさに満ちている。

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 使われている建築材も石やレンガ。外壁の色も茶色やベージュやレンガ色。装飾もモデルニスモの時代に使われたスタイル。小さな町だけれど、バルもあるし広場もあるし学校もあるし、住むには十分だ。通りすがりの私たちにとっても、ほんとうに居心地がいい町でした。

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2018年10月 8日 (月)

サグラダファニリアの進展状況

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 ガウディ没後100年の2026年完成予定、と聞いてもまだホントかなと半信半疑だったのが5年前。それが3年前には見違えるように工事が進んでいて、今回ハッキリと確信に変わりました。この加速度的な工事のスピードアップは驚くべきものです。

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 後陣のマリアの塔はすでに高さ130mの半分ほどが姿を現している。北側に回り込むと、すでにある塔とは全く違う圧倒的なボリュームに、驚かされます。高さ172.5mになるイエスの塔も、見えないけれど基部の建設はもう始まっているそうだ。

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 いちばん高く、いちばん大きくそびえる予定の主塔イエスの塔を囲むように作られる4本の塔。これらはそれぞれマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4人の福音書記者を表すのですが、工事中の下部が少しずつ見えてきている。

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 12使徒を表す鐘楼は、いちばん早く完成した誕生の門の4本と西側の受難の門の4本ができている。しかし正門となる南側の栄光の門、こちらは4本の塔はもちろん、ファサードの大まかな姿すらわからない。今はガラスの大きな壁面が見えるのみ。とても違和感があるが、これは仮の姿。

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 生誕の門と受難の門の鐘楼は、98mを左右に、107mの2本が中側に立っている。だから現在目にすることができる高い塔は、この107mのもの。2026年の完成時には想像を絶する建造物が出現するのは間違いない。あと8年しかないのだけど、ほんとうに凄いのはこれからだ。

 

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2017年6月29日 (木)

ジャパングラフ、7号は沖縄

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 全国の47都道府県をひとつずつ取り上げ、その土地の風土や固有の文化を美しい写真と文章で紹介する『JAPANGRAHP』。写真家の森善之さんが中心になって株式会社七雲から発行されている。急速に画一化が進むなか、いま残さなければ消えてなくなるかもしれないモノやコト、景観や祭礼や風習を丁寧に取材。それらを一冊の本にまとめるという、とても意義のある活動だ。そしてこのたび7号沖縄編が出版され、その出版記念展が開催されている。

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 沖縄県はとても広い。今回の取材でも、本島以外に伊江島や平安座島、久高島、宮古島や石垣島、鳩間島や与那国島、波照間島、南大東島などの島々をアーティストたちが訪れている。そこで彼らが見て記録した神事や生活習慣は、大きな海に隔てられているせいか、それぞれ独特の姿がある。神話と伝承。自然と人間の融合。先祖の魂と現代の子供たちとの交流。観光客の目では触れられない、奥深い歴史と真実の暮らしが、すごく魅力的に映る。

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 ネット上にはさまざまな情報があふれ、もはや手に入らない知識や知見はない、という便利な時代になりました。でも、だからこそ、しっかりした目で編集しパッケージされたジャパングラフのような本が、ますます存在価値を高めてくると思う。まだ7号、47すべてを出し終えるまで、ぜひがんばっていただきたいと思います。

coffee books gallery iTohen
6月21日(水)~7月2日(日)
大阪市北区本庄西2-14-18 富士ビル1F

books & folkart ナナクモ
6月23日(金)~7月2日(日)
京都府宇治市宇治妙楽144

平敷兼七ギャラリー
7月5日(水)~7月17日(月)
沖縄県浦添市城間1-38-6

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2017年4月12日 (水)

醤油の街の行灯アート

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 白壁の土蔵、ベンガラ格子・・・歴史的な美しい街並みが残る和歌山県の湯浅町は、醤油発祥の地として知られている。鎌倉時代の高僧・覚心(法燈国師)が宋にわたり禅宗の修行を重ね、建長6年(1254)紀州由良の興国寺に帰ったとき、彼の地で覚えて来た加工味噌の醸造法を伝えたのが、金山寺味噌だそうです。それからまもなく、味噌づくりの職人が桶に赤褐色の汁が溜まることに気づいたのが、醤油の始まりと考えられている。

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 湯浅の港から船積みされて大坂や江戸に運ばれた醤油は評判を呼び、やがて日本各地に製造法が広まったという。江戸時代の文化年間(1804~1818)には1000戸の湯浅に92軒もの醤油屋があり繁栄を極めた。いまも1年以上かけてじっくり仕込む伝統的な製造方法で醸造している醸造業者が数軒残っているそうだ。

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 そんな湯浅の街で「第11回 ゆあさ行灯アート展」が4月29日から5月3日まで開催される。16世紀末ごろに開発された伝統的建造物保存地区、北町・北浜町・北中町・北鍛冶町の小路に展示される『行灯』作品の数々。きっとあたたかい光でおもむきある街並みを浮かび上がらせてくれることでしょう。

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 公募で集まったもののうち、受賞したいくつかの作品は北町ふれあいギャラリーでいま観ることができる。素材は木や竹、針金や紙。装飾的なモノからミニマルなデザインまで、自由に、独創的に、灯りの芸術づくりを楽しんでいる。カタチも素材もさまざまだけど、『行灯』は紙などを通してのいわば間接光なので、ギラギラしたまぶしさはない。とても目にやさしいのだ。街がもっと暗かった時代、もっと情感のあるなまめかしい夜があった時代を思い起こさせます。

ゆあさ行灯アート展
 

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