鏡の国の横尾忠則
Yokoo in Wonderland 展の3F会場は、鏡の国。壁一面が少し凹凸があるアルミ箔のような素材で覆われている。照明も観客も、反対側の壁面に展示されている作品も、すべてが映り込む。床はもともとツルツルの白大理石なので、これもミラーのようによく映る。つまり実像も虚像も同じ平面上に同列に見える仕掛けになった空間。
展示されている作品も、鏡の断片を貼り付けたり、教会の祭壇画のような折りたためる構造にしたり。たとえば『Greco's Madonna』ではエル・グレコの聖母マリアとマン・レイに横尾自身が同居する。時空を超えたイメージを思いのままにコラージュさせる発想そのものが、現実も非現実も、実像も虚像も超越しているのだ。
そして作品の中に割れた鏡の断片が貼り付けられている。キャンヴァスに絵の具で描かれたリアルな要素と、ミラーに映る画像が二重三重に呼応。しかも観客が動けば映り込む像は常に変化する。そこで生まれる思わぬギャップ。偶然の取り合わせによる新たなイメージの生成。ああ、観客も静かに参加しているのですね。
4F会場は夢の国。横尾忠則にしては小さめの『夢枕』シリーズ、計43点が並ぶ。B3ぐらいの紙に水彩で描かれた、眠る人と見ている夢の世界。悪夢も、甘美な夢も、幻想も、いわば夢日記を絵で記録する、画家ならでは私的な試みです。夢も欲望も恐れも、自らをさらけ出してアートを紡ぐ横尾さんの方法論が垣間見えました。
Yokoo in Wonderland
横尾忠則の不思議の国
2023年9月16日(土)~12月24日(日)
Y+T MOCA
横尾忠則現代美術館
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