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2023年11月21日 (火)

白い祈りの壁

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 目の前に広がる白い壁。エルサレムの嘆きの壁のような荘厳な佇まい。『吉本直子 いのちをうたう  衣服、痕跡、その祈り』展の会場に足を踏み入れると、あきらかに空気が変わる。ミニマルで、静謐で、空間そのものが息をつめたような、そんな感じ。これはすごいアーティストの、とんでもない作品に出会ったぞと思いました。

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 この壁は 高さ6.8m 横幅10.9m、『鼓動の庭』 A Garden Echoing with Heartbeats という作品。人が着用した白い古着を圧縮したブロックを大量に作り、日干しレンガのように積み上げた立体作品です。近づいてみれば、襟や縫い目や袖のボタンも見える。それら一つ一つが着ていた人の過ごした時間や記憶を宿す生の履歴。

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 無名の個人が生きた履歴といえども膨大な量が集まれば、時代の大きなうねりを表す象徴的なモニュメントになりうる。また床に置かれた『地の残像』や『白の棺』は、古着のブロックから袖などを引っ張り出して造形。まるで天変地異による大地の割れ目や、白骨になった生命体の遺骸。静かに生と死のイメージを発する。

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 作家の言葉です。「着用者の生きた時間、記憶、歴史を目には明らかではない痕跡としてとどめた衣服。それを素材として制作した立体は、耳には聞こえない叫び、願い、祈りを放っているように思えます。今を生きる無数の人々の生に思いを馳せ、個々の祈りが共生の祈りとなって響く空間を制作したいと思っています。」

吉本直子 いのちをうたう
衣服、痕跡、その祈り
2023年10月28日(土)~11月26日(日)
兵庫県立美術館

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