映る、透ける、歪む
透明な球?凸レンズ? 光を感じる物体が約700個、白いワイヤーで作られた棚にびっしりと並ぶ。六甲高山植物園のカラマツ林の中に設置された加藤美沙さんの作品『溢れる』がおもしろい。ジャングルジムのように組まれたワイヤー棚に、透明な球がはめ込まれているのだ。美しく、涼しげで、宙に浮かびそうな軽やかさ。
近づくと向こうに透けて見える青空。上下左右が反転して映り込む周りの風景。輝き、歪み、重なり、隙間からのぞく実際の情景と響きあう。光あふれる多重ワールド。ウーム。よく見るとワイヤーの格子が食い込んでいる。透明だけど、ガラスやアクリルのような硬い素材ではなさそう。「触ってみてください、どうぞ」と声が聞こえた。
ちょうど作家の加藤さんがメンテナンスに来ていたのだ。触るとプニュプニュ。赤ちゃんの肌のように弾力がある。意外な感触に「えっ、素材は何だろう?」と驚いていると、加藤さんはポケットから円形のビニール袋を取り出した。「これです。透明度が高く、強度もある。市販品ですよ」 これにポンプで水を詰めてきつく縛ると言う。
「朝一番にここへ来ると、夜露で真っ白になっているんですよ。すりガラスのように全体が輝いて」と加藤さんは言っていました。さぞ幻想的なんだろうな。作品の案内ボードを見ると、手のひらにOKと書かれたマークと、「作品に触れられます」という文言が。いい試みだと思います。触って初めてわかる面白さもありますからね。
六甲ミーツ・アート
芸術散歩2023 beyond
2023年8月26日(土)~11月23日(木・祝)
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