レンゾ・ピアノと新宮晋
「空気の流れを見えるようにしてくれないか」という言葉が始まりでした。関西国際空港旅客ターミナルビルの国際コンペで設計者に選ばれたピアノは、風のアーティストとして注目を集めていた新宮晋にターミナルビル内に命を吹き込む作品制作を依頼。以来30年余り、2人は世界中で10のプロジェクトを完成させている。
会場内で流される対談の映像内で、ピアノは「親和性」という言葉を盛んに使う。新宮がイタリア語を話すのに驚いたこと。生まれた国は違えど同い年だったこと。光や風や環境を重んじる姿勢。互いに共感し、共鳴して新しいモノを作り出す意欲。初対面の時から日本語で言うところの「ウマが合った」ということでしょうか。
関空のほか、ジェノヴァ港の再開発。銀座のメゾンエルメス。アテネのスタヴロス・ニアルコス財団文化センター。NYの565ブルーム・ソーホーなどなど。2人がコラボした仕事はどれも素晴らしい。建築に「軽さ」を持ち込み、都市や地域の景観に「楽しさ」をプラスしました。新しい視点を生み出し、世界に夢を与えてきたのです。
建物の内と外との境界を取り去り、それが建つ場所との調和を考えるイタリアの建築家。見えない風や水のエネルギーを可視化する日本の造形作家。この2人の交差の軌跡を年表形式でたどるユニークな展覧会、そのタイトル『平行人生 Parallel Lives』は、古代ギリシャの哲学者プルタルコスの著作に由来するという。
「2人が創った驚異の空間」とサブタイトルがつけられてはいますが、実際の建造物を持ってくるわけにはいかないので、模型や映像を駆使した多様な見せ方を工夫している。天井から吊り下げた作品の、床で揺れ動く影までおもしろかったですよ。ちなみにスタート日と終了日が、新宮とピアノの86歳の誕生日だそうです。
平行人生
新宮晋+レンゾ・ピアノ展
2023年7月13日(木)~9月14日(木)
大阪中之島美術館
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