夏はスカッとスポーツ映画
タイ・ロバーツ監督の映画『マイティ・マイツ ~12人の屈強な戦士たち~』(12 Mighty Orphans)は、スポーツの世界で起こった奇跡を描く、実話に基づく物語です。恵まれない境遇の少年たちが、社会的偏見や差別を乗り越え、強く成長していく姿は感動的。各選手の個性を生かすアメフトというチームスポーツがピッタリでした。
大恐慌時代のテキサスが舞台。教師兼コーチとして孤児院にやって来たラスティ・ラッセル。彼はシューズもボールもないひどい状況からチームを立ち上げる。人数はギリギリ。攻撃チームと守備チームを編成するなんて不可能だから、ひとりで何役もこなすことに。しかもプレー経験もなく、体格で劣り、団結心もない少年たち。
そんな彼らにラスティは画期的な戦術を授ける。誰も見たことがないスプレッドオフェンスの誕生だ。その結果、片田舎の孤児院チームは奇跡の大躍進を果たす。その評判はルーズべルト大統領にまで届き、大いに称賛される事態に。社会的弱者である彼らの活躍は、大恐慌で苦しむ多くの国民に頑張る勇気を与えたのだ。
自分を信じる。仲間を信じる。そしてチャレンジする。少年たちは試合を重ねるうちに、自ら考えてプレーできるまでに成長を遂げる。ラスティは優れた戦術家であるとともに、類まれなモチベーターでもあった。そして試合に勝つことで得られる自信が彼らの自立を促し、立派な社会人になるという信念を貫いた、真の教育者だ。
実績を上げた名コーチとしての特権的地位を捨て、田舎の孤児院へやって来たラスティ。彼自身もじつは孤児で第一次世界大戦で大きな傷を負っている。良き協力者の医師ホールもつらい過去を持つ。成長を遂げるのは選手たちだけではない。すでに大人の指導者もともに苦難を克服しながら、人間として成長しているのだ。
理不尽な差別に怒る。過酷な境遇をあきらめる。不遇な運命を呪う。これでは何も好転しない。この映画は「運命をそのまま受け入れ、前に向かって進み続ける勇気を持て」というアメリカ的楽観主義で成り立っている。そんなに簡単じゃあないよなと思いながらも、爽やかな気持ちになれる夏向き感動スポーツ映画でした。
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