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2023年8月 4日 (金)

タコは海の賢者?

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 南アフリカの嵐が荒れ狂う岬。そこにある小さな入り江だけは穏やかなケルプ(昆布のような海藻)の森が広がり、さまざまな生き物が生息していた。映像作家のクレイグ・フォスターはそこで出会った一匹のタコと特別な絆を築き、奇跡のような映像作品を生み出しました。2021年のアカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞。

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 クレイグはそのタコの驚異的な生態に魅了され、毎日シュノーケリングで会いに行く。その一年間にわたる交流の記録。まず驚いたのがタコの知能の高さ。彼を危険のない存在と認識し、そのうち親しみを込めて触れ合うようになる。警戒されることなくありのままの姿を撮影できたのは、イヌやネコ並みといわれる賢さのおかげ。

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 餌となるカニやエビの狩りの方法。天敵のサメから逃げる知恵。泳ぐ。スミを吐く。二足歩行。色や形を変える擬態。ケルプの大きな葉を体に巻き付け身を隠す。貝殻をたくさん身にまとい防御する。時にはダンスを踊り、魚たちと遊ぶ。知的な好奇心が旺盛としか思えない。捕食者となり餌となる厳しい自然界の中での遊び心。

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 人間とタコの身体と身体、皮膚と皮膚、文字通りの触れ合いだ。信頼と愛に基づいた行動に感動を覚える。やがてタコは交尾し、産卵し、1年余りの寿命を全うする。緻密で、もろくて、しかも完結する生態系。その中で繰り返し繰り返し続いていく営み。クレイグは深く学んでいく。人間の勝手で地球環境を変えることは許されないことを。

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 制作・出演はクレイグ・フォスター。監督はピッパ・エアリックとジェームズ・リード。ロジャー・ホロックス撮影の美しい海を舞台に、優雅で思慮深いタコとの交流を通じて、自らの人生を見つめ直すクレイグ。いままで観てきた宇宙人とのコンタクト物語より、はるかにリアルで刺激的でした。原題は『My Octopus Teacher』です。

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