長岡藩のラストサムライ
徳川から明治に変わる時。大政奉還が行われても政権交代はすんなりとは進まなかった。討幕か、佐幕か、日本中のさまざまな藩が、この争いに巻き込まれていく。戊辰戦争。いまの新潟県にあった長岡藩の家老・河井継之助は、民衆を守るため中立の立場を取ろうとするがかなわず、困難な戦いに踏み出していく。
司馬遼太郎の長編小説『峠』を原作に、小泉堯史監督が映画化。西洋列強がアジアを狙う世界情勢にも明るい河井継之助。日本の将来を考えつつ徳川家への忠義の気持ちも忘れない。長岡藩の置かれた立場。民の幸せのための平和。藩政改革を進めた彼は、人望もあるが敵も多い。実行力があるリーダーの宿命でしょうね。
彼に比べれば薩長連合の司令官たちは思慮が浅いように思う。しかしそれは誰の視点で描くかによるので、必ずしも正解とは限らないのだけれど。この作品は、歴史とは常に勝者の物語なのだと思い知らされる。まさに勝てば官軍。進歩的な考えを志向しながら、忠孝や仁義など封建的な価値観に縛られる侍の悲劇。
しっとりした美しい映像。加古隆によるリリカルな音楽。主題歌は石川さゆり。役所広司と松たか子が演じる夫婦のセリフ「愛するとは互いに見つめあうことではなく、二人で同じ方向を向くこと」が印象に残りました。ただし司馬遼太郎が坂本龍馬と並ぶ幕末の偉人を描いた物語としては、2時間の映画では無理がありましたか。
長岡藩のお城の跡地は、現在JR長岡駅と長岡市シティホールプラザ「アオーレ長岡」になっている。市役所やアリーナが大屋根付き広場でつながったアオーレ長岡は、隈研吾さん設計の素晴らしい複合交流施設。10年ほど前の当ブログ「アオーレ長岡で、会おうれ」でも書いています。興味のある方はご一読ください。
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