9日間での裁定
あまり起伏がないお話で、しかも内容はよくわからない。でも緊張感があって、画面に集中して最後まで観てしまう。なんとも不思議な映画だった。魂(普通に人間の姿をしている)が人として人間界へ送られるか、それとも消えてしまうか、9日間で決定されるという設定。選ばれるのはやって来た候補者(魂です)から、ただ1人。
舞台は荒涼とした砂漠の中の一軒家。ロケ地はユタ州のようですが、地球上とは思えない。室内では、壁一面のモニターに映し出されるいろんな人間の地上の生活。リアルタイムの映像もあれば過去の出来事もある。熱心に画面を注視している寡黙な男。彼が、ひとつできた空き枠に誰を送り出すかを裁定するウィルだ。
生命を左右する決定的瞬間にどう対処するか。気になる映像を選んで感想を述べよ。ウィルが発する質問に取り組む魂たち。彼/彼女たちも人間界に生まれ変わりたいので必死だ。それらの質問には正解はないのだが。彼/彼女たちとやり取りを続けるなかで、ウィルも自分自身やその職務の存在意義を問い直し始める。
この世に生れ落ちる前の魂とはいえ、それぞれが個性的なのもおもしろい。無色透明、無味無臭な存在ではないのだ。そして地上に送る魂を選別する仕事は、誰が与えたのか。ウィルは神さまではなくて、あくまで職務を誠実にこなしているだけ。よくわからない理由の一つが、この魂と人間をめぐる壮大なシステムの全体像。
人間になれなかった魂は消滅するなんて、切ない話です。しかもチャンスは一度きり。こういう哲学はどこから生まれたのでしょう。監督、脚本はエドソン・オダ。出演者はウィンストン・デューク、ザジー・ビーツ、ベネディクト・ウォンほか。なかなかの名演技で、謎に満ちているけれど、なぜか引き込まれるお話を支えています。
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