今井俊介、スカートと風景
鮮やかな青、赤、ピンク、黄色、グリーン。幾何学的なストライプやドット。絵画を構成する二大要素である色とカタチを極限までシンプルにし、今井俊介が生み出す絵画がおもしろい。具象と抽象。平面と立体。アートとデザイン。いまだ美術界が信じている(かもしれない)いろんな境界を、軽々と超越するポップな感覚が素晴らしい。
そんな今井独自のスタイルが生まれた原点は、ある時ふと目にした知人の揺れるスカートだという。幾何学模様がプリントされたスカートの布地が、人物の動きとともに波打ち揺れる。そこに風景を見て、強く心を打たれた体験。そこから「これを描けば自分だけの絵になる」と、瞬間的に悟ったそうだ。絵画の新領域へ。
初期作品から新作まで、絵画を中心に立体や映像、インスタレーションなど、さまざまな表現の作品60数点が展示されている。こんなのは絵画ではない、単なるデザイン、と言うアタマの固い人もいるだろう。日本では華道や茶道の流派のように、仲間内で集まり他を排するムラ社会な傾向が強いから、苦労もあったでしょう。
そもそも形式にこだわらないのがアートの本質。美しいものは美しいし、面白いものは面白い。そのうえ好みは十人十色。しかも感じ方は時代とともに変化する。とどまっていては消滅に向かうだけ。創作者も鑑賞者も、どれだけ自由になれるか。コントラストの強い色の衝突。インパクトある図柄。歪み、揺らぎ、動き出す構図。
絵画の根本的な意味、平面作品の可能性の追求を通じて、感覚の開放までもたらせてくれる今井ワールド。じつはこの展覧会、2022年に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催され、東京に巡回してきたものです。瀬戸内国際芸術祭で近くまで行ったのに寄れなかった念願の展覧会。四国の仇を江戸で。大満足でした。
今井俊介 スカートと風景
2023年4月15日(土)~6月18日(日)
東京オペラシティ アートギャラリー
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