横尾さんの小説世界へ
2022年に出版された横尾忠則の小説『原郷の森』(文藝春秋刊)。ある日知らない森で目を覚ました主人公Yが、三島由紀夫と宇宙霊人に導かれ、この世を去った偉人たちと芸術や人生について語り合う、そんな小説だそうだ。280名にものぼる登場人物が入れ替わり立ち替わり現れては、思い思いの言葉を残していく。
〈原郷 GENKYOとは ― この世に生まれた人間の魂の古里みたいな場所であり、時間。この世であってこの世ではないその場所では、なんでも起こりうる〉 芸術家たちが時空を超えて語り合うユニークな「芸術小説」。その内容にリンクするような横尾作品を会場に配置して、言葉の世界を視覚アート空間に置き換える試みだ。
ピカソ、デュシャン、キリコ、マン・レイ、江戸川乱歩、永井荷風、小津安二郎などなど、尊敬する先人たちと芸術や人生について語り合う。主人公Yは、もちろん横尾さん自身です。ダンテの『神曲』を思わせる、壮大なスケールの芸術論を具現化した展覧会。初期から現在までの166点の作品と、個性ある言葉で構成されている。
アート作品と偉人が発する言葉の間を移動する鑑賞者は、いわば木もれ日がきらめく森の中へ分け入った旅人。散策しながらヨコオワールドを楽しむわけだ。言葉だけの小説。ビジュアルだけの絵画。その両方が合わさることによって、彼の思想や芸術観がより深くより具体性をもって迫ってくる。面白い仕掛けの展覧会です。
横尾忠則 原郷の森
2023年5月27日(土)~8月27日(日)
横尾忠則現代美術館
Y+T MOCA
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