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2023年6月22日 (木)

マティス、まずは油彩

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 アンリ・マティスは感覚に直接訴えかける鮮やかな色彩と光の探求を生涯続けた、20世紀アートを代表する巨匠です。彼が残した仕事を概観する大規模な展覧会が、いま東京都美術館で開催されている。世界最大級のマティス・コレクションを所蔵するポンピドゥー・センターの協力で実現した、「20年ぶり 待望の大回顧展」です。

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 長年にわたり、いろんな技法で素晴らしい作品をいっぱい創造したマティス。中心に置くべきは、まずは油彩の作品群でしょうね。「フォーヴィスム(野獣派)」と称されて絵画の革命を起こしたころから、一番脂がのっていたニース、ヴァンスの時代へ。目に映るモノではなく、心が感じるモノを表現。それこそ現代アートの芽だ。

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 ルネサンス以来の写実主義や遠近法と決別し、対象の色とカタチを並列に置いて構成する。細部はシンプルに簡略化して描写し、奥行きよりも平面的な均衡を尊ぶ。「フォーヴィスムが全てではないが、全ての基礎だ」というマティスの言葉。表現の自由を追求した彼の精神は、現代のアーティストにも影響を与え続けています。

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 マティスの挑戦の方向性は、カメラや写真が世に現れた影響も否定できません。それは19世紀後半に始まった印象派以降の、絵画の本質を問う運動の延長線上にあるから。そして2つの戦争の時代を生き延びた経験が、暗い世相を変える明るく伸びやかな作風に結実しました。だから鑑賞者が幸せな気持ちになるのですね。

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 若き日から晩年まで、各時代の代表的な作品で巨匠マティスの芸術をたどる色彩の旅。油彩に加え、彫刻、ドローイング、版画、切り絵、そして彼自身が創作の集大成とみなしたヴァンスのロザリオ礼拝堂に関する資料まで。150点以上のとても充実した展示です。油彩以外の作品については、次回に改めてご紹介します。

マティス展
2023年4月27日(木)~8月20日(日)
東京都美術展

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