さすが! 蜷川実花
花と言えば蜷川実花。色彩あふれる会場に一歩踏み入ると、彼女の圧倒的な美意識に囲まれる。世界が変わる。しかし、初期作品の特徴である毒々しいまでの色の対比は弱まり、もっとナチュラルで情感に訴えかける花のある風景。Eternity in a Moment とタイトルにあるように、日常の中に現れる一瞬が永遠につながる景色。
光の捉え方。色の感じ方。重なり具合。ボケ具合。いろいろな花のキャラクターが主役になり脇役になり、多重な魅力を振りまく。まさに蜷川実花が映画監督をやっているような作品。それを特徴づけるのが、特設されたスクリーンボックスに二重に映し出される映像作品。今回が初めて(たぶん)の見せ方で、とてもおもしろい。
言葉で説明するのは難しいけれど。例えば、花々が咲き乱れる畑に風が吹きわたる映像が後ろのボックスに。前面の透明スクリーンでは水中の泡が揺らめく、錦鯉も泳ぐ。リクツは単純(たぶん)だけれど、蜷川さんのセンスで組み合わされる映像は刺激的です。気持ちがさっと晴れやかになったり。しみじみ感慨にふけったり。
彼女自身もインタビューで語っています。「もうキャリア30年。長く花を撮っているとだんだん手馴れてくる。経験値が時に邪魔をするようにもなる。だから日々新鮮な気持ちで対象に対峙している」という。同じ花をテーマにしていても、その時その時の心情が現れた全く違う作品。これは会場に足を運ばないとわからないでしょうね。
「キャノンギャラリー 50周年企画展」として開催された蜷川実花の写真展。ここ品川のキャノンギャラリーSは「花」、キャノンギャラリー 銀座では「生物」、そしてキャノンギャラリー 大阪は「いのちの息づかい」と、それぞれ別のテーマを設定して作品を展示。どれも観たかったのですが時間の調整がつかず、品川のみの報告でした。
蜷川実花 写真展
Eternity in a Moment
2023年5月9日(火)~6月19日(月)
キャノンギャラリーS
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