助ける vs. 助けられる
わがまま言い放題。周囲を振り回す。人使いが荒い。これが介護してくれているボランティアに対する態度なのか。でも、鹿野靖明はどこか憎めない愛される存在。大矢壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞をダブル受賞した原作を、前田哲監督が映画化したのが、『こんな夜更けにバナナかよ』。主演は大泉洋です。
12歳で筋ジストロフィーを発症した鹿野。20歳までの命を宣言されながら、30歳を過ぎても車いすと24時間体制のボランティアの助けで、しぶとく自立生活を続けている。夢は英検2級をとってアメリカを旅行すること。そのため日々勉強だ。明日どこが動かなくなるかも知れない身なのに、チョー前向きです。体は不自由、心は自由!
彼は障がい者も自らの夢や欲に素直になって生きるべきだ。できないことは助けてもらえばいい、と考えている。遠慮して引きこもらず、できる人に助けてもらえばいいじゃないか。健常者と障がい者が対等の立場で役割を担い、ともに生きがいを見つけられる社会。そんな立場でシンポジウムのパネラーで登壇したりもしている。
一度きりの人生、やりたいことをやらなきゃ。そのためには人工呼吸器やトイレの問題、カッコ悪い姿をさらけ出しながら一生懸命ホンネで生きる。そんな鹿野のペースに巻き込まれるボラのメンバーたち。彼を支えているつもりが逆に多くを学ぶ。自分自身を省みる機会になるのだ。ボランティアや家族との心温まる交流。
大泉の熱演に加え、共演陣も素晴らしい。なかなか気持ちが通じ合わない不器用な恋人役を高畑充希と三浦春馬。母親役の綾戸智恵や主治医役の原田美枝子。「愛しき実話」というキャッチコピーが実感できる素晴らしい作品でした。健常者と障がい者。介助する側とされる側。人間の尊厳をどう捉えるか、考えさせられました。
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