心斎橋でジャコメッティ
極限までそぎ落とされた、針金のように細い身体。20世紀を代表する彫刻家の一人、アルベルト・ジャコメッティの作品は教科書か何かでご覧になったことがあるのではないでしょうか。そんなジャコメッティの特徴がシンボリックに表れた3m近い大きさの、その名も『大きな女性立像 Ⅱ』が、会場に入ると真っ先に出迎えてくれる。
LVMHの企業財団、ルイ・ヴィトン ファウンデーションが所蔵するコレクションから7点を日本に持ってきて、『アルベルト・ジャコメッティ展』が開催されています。会場はルイ・ヴィトン メゾン大阪御堂筋の5階「エスパス」。どれも彼が独自のスタイルを確立した第二次世界大戦後の作品。クオリティの高い粒よりが揃っています。
極端に長く引き伸ばされたジャコメッティの人物像。交流のあったサルトルは「現代における人間の実存を表現したもの」と、高く評価したと伝えられている。まぁ難しいことはわからないけれど、一度見たら忘れられない強烈な個性があるのは確かだ。体重がなくなるほど精神が自由で軽いのか、芯の強さだけで生きているのか。
1カ月ほど前、国立国際美術館の『ピカソとその時代』展で観たジャコメッティも良かったけれど、こちらのコレクションはそれ以上に素晴らしい。典型的な細身の全身像はもちろん、それだけではないジャコメッティの、しかもすべて円熟期の多様な表現。点数は7点と少ないけれど、きわめて満足度が高い展覧会でした。
独自のスタイルを貫いた、唯一無二の彫刻家。ここまでやってもいいのだよ、と後の世代に自由と勇気を与えてくれました。ジャコメッティ自身はそんなこと考えてもいないでしょうが、偉大なアーティストはみんなそんな役割を担っています。社会も、生活も、意識も、特に変化の激しかった20世紀には必須の道しるべでした。
アルベルト・ジャコメッティ展
2023年2月23日(木・祝)~6月25日(日)
エスパス ルイ・ヴィトン大阪
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