生々しいゴッホを体感
ゴッホ独特の荒々しいタッチ。渦巻くような筆遣い。盛り上がった絵の具。大きな壁をスクリーンにして映し出される、大画面ならではの生々しいディテール。そこからは彼の激しい息遣いまで聞こえてきそうではないか。リアルな作品を展示した美術展では決して知りえなかった作品の真実が見えて来る。それって初めての経験。
広い会場が圧巻の作品世界に変わる! 臨場感あふれるマルチ・チャンネルの動画がもたらす圧倒的なアート体験。いま話題の『ゴッホ アライブ』は、映像技術の進歩と音響技術の発展のおかげで、数々の名作が細部まで壁面や床に映し出される。サラウンド音響で鳴るクラシックの名曲に包まれて、ゴッホを身近に感じます。
オランダ、パリ、アルル、サン=レミ、オーヴェール=シュル=オワーズ。アーティストとしてはわずか10年間のゴッホの生涯。たくさん残した自画像からは、平穏か、危機的か、その時々の精神状態が伝わってくる。鑑賞者は周り中で繰り広げられる映像と音の奔流に溺れそうになりながらゴッホの精神に寄り添っていく。
当時フランスで流行ったジャポニスムの洗礼を受け、ゴッホも浮世絵を愛していた。広重や歌麿を模写し、作品中の漢字まで描いているのには驚かされる。西洋絵画とは違う平面的な捉えかたや色彩が、彼に与えた大きな衝撃。美術史的にも印象派以降のアートに日本文化が与えた影響を考えると、とても誇らしい。
サン=レミの療養院を出て、オーヴェール=シュル=オワーズへ移る。最後の創作の日々。そして熱狂から死へ。これを暗示する『カラスの群れ飛ぶ麦畑』は、『ゴッホ アライブ』では黒いカラスがグワーッとこちらへ群れ飛んできて、不穏な空気が一気に高まる。もちろん動画。従来の静かな展示では不可能な、迫真の表現です。
「僕は探し求め、ぶつかっていき、全身全霊でそれと向き合う」
「僕は、朽ちて、病み、バラバラになるほどに、芸術家へと近づく」
残されているゴッホの手紙は820通。そこには自身の作品、さまざまな影響、心の状態などが事細かく書かれているそうだ。そのおかげで100年以上前に亡くなった彼に、私たちは迫れるのだ。
ゴッホ アライブ
2023年3月18日(土)~6月4日(日)
兵庫県立美術館
ギャラリー棟3階ギャラリー
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