スーパースターの真実
ポップアートの一般的なイメージは、明るく活気にあふれた、でもちょっと薄っぺらなアートという感じでしょうか。日本で使う「ポップな」という言葉も、本格的じゃない、軽い、そんな意味が込められている。それは「芸術」が何か深い真実を伝える高邁な営みだ、そうあらねばならぬ、という古典的な価値観がまだ生きているセイだ。
ウォーホルは社会や人生が抱える問題には無関心を貫く。しかも機械的な手法でアメリカの豊かさを表現。そしてファッションから言動、生活スタイル、そのすべてを自分自身でプロデュース。結果、20世紀アート界のスーパースターになりました。もしかしたら彼の最高傑作は『アンディ・ウォーホル』だったのかもしれません。
では、真実の彼はどこにいたのか。『頭蓋骨のある自画像』をご覧ください。頭の上にドクロが描かれている。『頭蓋骨』や『ギャングの葬式』シリーズ、『小さな電気椅子』シリーズや『十字架』。「ぼくは死を信じていない。起こった時にはいないから、わからないんだ」と言いながら、死にまつわるイメージの作品がことのほか多い。
ポップアーティストだけれど、軽快で明るいだけじゃない。創造のためのモチーフとして「死」を扱う。「エロス」や「ホラー」も同じ。そして彼独自の美的フィルターを通した絵画や映像が、生身の人間よりリアルで存在感がある。ウォーホルは自分をさらけ出すのがイヤだったのかもしれない。「ありのまま」は彼の美学に反するのだ。
その意味で『カモフラージュ』はシンボリック。迷彩の陰に本当の自分を隠す。真実はどうでもいいから作り出したイメージを見ろ。「表層だけを見ればいい、裏には何もないから」と語った彼は、半世紀先を見ていたのでしょうか。マスメディアやネットからの情報が氾濫する現代。フェイクも吞み込んだ、こんな見方がポップです。
アンディ・ウォーホル・キョウト
2023年2月12日(日)まで
京都市京セラ美術館
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