時間を跳び、未来を正す
1956年に発表されたSF小説の古典的名作、ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」(ハヤカワ文庫)。これを原作に、三木孝浩監督がいまの日本の観客に合うよう再構築し映画化したのが『夏への扉ーキミのいる未来へ』。タイムトラベルや人型ロボットなど、SFの主要要素がうまくちりばめられたナットクのおもしろさです。
もしタイムマシンがあって過去に戻れたら? あの時の自分に知らせたいことがある。教えたいことがある。こんな夢を抱いた人は多いのではないでしょうか。不可能だとわかっていても悪魔的な魅力がありますよね。タラレバの話って否定的に言われることが多いけど、その隠れた願望を実現してくれる仕組みがSFやファンタジー。
主人公は最先端のロボットや画期的な蓄電池を開発する天才科学者・宗一郎。共同経営者と婚約者の裏切りで冷凍冬眠をさせられる。30年後に目覚めると、財産はすべて失い、いちばん大切な人・璃子は亡くなっていた。自分が思い描いていた未来へ、彼は歴史を修正するためタイムマシンで30年前に戻ることを決意。
1995年と2025年。時間を行き来しながら不都合なところをやり直さなければならない。しかし、残された時間はごくわずか。観客も伏線となった出会いや出来事を謎解きのように楽しみながら、ストーリー展開に没入。はらはら、ドキドキ。悪者がやっつけられる爽快感やハッピーエンドは、良きアメリカの作家らしい価値観です。
明るく楽しい夏へ通じる扉を探し続ける愛猫のピート。ここから導かれたタイトル『夏への扉』もオシャレです。30年後に出会ったロボットのピートも魅力的。「諦めなければ失敗じゃない」という前向きなメッセージが腑に落ちる。出演者の山崎賢人、清原果耶、藤井直人、夏菜、田口トモロヲ、原田泰造らの演技も素晴らしかった。
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