アニメ業界の熱き闘い
思っていた以上におもしろくて、感動的なストーリーでした。地方公務員から転身した新人アニメ監督が、熱い思いで創作に打ち込み、人間的にも成長していく姿を描く『ハケンアニメ!』。辻村深月の同名小説を吉野耕平監督が映画化しました。主演は吉岡里帆。ライバルの、再起を図る天才を中村倫也が好演している。
「ハケン」は派遣ではなく覇権。各クールで最も成功したTVアニメに与えられる称号なのだ。クリエイターとして自分の夢と信念を貫いて作品を生み出す頑固さと、ディレクターとして誇り高きギョーカイ人たちをまとめ上げるリーダーシップ。新人も天才も、強い意志と折れない心で苦境に立ち向かい、「ハケン」を目指して奮闘する。
制作においていちばん大切なのは監督のイメージの実現。ただ現実には、締め切り時間や予算の制約や宣伝活動に押されて、ついつい妥協してしまいがち。もし我を通せば周りのスタッフに大迷惑を強いることになる。アニメは独りでは作れない。しかし、神は細部に宿る。その困難な状況を突破しなければ最高は生まれない。
作画、美術、効果、音響、声優、プロデューサーなどなど、普段はあまり表舞台には出てこない制作現場のスタッフにも目配り。それぞれのキャラクターが丁寧に描かれ、反目していたメンバーが一丸となってハケンアニメ作りに邁進するに至る様子が気持ちいい。TV局やスポンサーなど、ギョーカイを取り巻く関係者も興味深い。
劇中で使われる二本のアニメ作品も素晴らしい。さすが、第一線で活躍する大塚隆史や谷東が本気で作ったクオリティ。共演陣も柄本祐、尾野真千子をはじめ芸達者が揃う。挫折を経験しながら、夢をあきらめず努力する先にある希望。元気をくれる映画でした。「フィクションにはリアルを変える力がある」というセリフが深い。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 漫画家の世界と殺人鬼の世界(2023.09.06)
- OLの世界は力が全てだ(2023.09.01)
- ゾンビになるまでに?(2023.08.28)
- サバカンを見ると思い出す(2023.08.24)
コメント