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2023年1月13日 (金)

静謐、ミニマル、豊穣 ①

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 今年の幕開けは、兵庫県立美術館で開催中の『李禹煥』。重量級の現代アート作家による、ミニマルな展覧会です。重量級(巨匠という意味で使ったので悪しからず)と言っても、並ぶ作品は「余白」の美を生かした軽やかさ。空間の「空」を意識させる濃密な「無」。強烈な質感を発しながら重量を超越した存在。最高です!

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 李禹煥と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが「石」。たとえば「関係項―星の影」という作品。ごろんと置かれた大きな2つの石を、吊り下げられた電球が照らしている。影が逆方向に伸びているのは、なんか奇妙な感じがする。なぜならフツー見る影は同方向だから。そうだ、電球が太陽で、石が地球や月だったらありうる関係なのか。

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 たちまち展示会場の一室が、宇宙的なスケールで拡がっていく。静謐なたたずまいでありながら
ダイナミックなエネルギーが沸き上がる。さすが李禹煥。これぞ現代アートの魅力です。石と鉄。石とカンヴァス。石とステンレス。石とゴム。石とガラス。石が異素材と出会うことで、新しい関係性が生まれ、それが哲学的な思索へ誘う。

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 フランスの修道院で行われたインスタレーションを、吹き抜け空間で再現した作品も面白い。ヨーロッパでよく見る薄くて黒いスレート。これを床にランダムに敷き、ガラス壁に立てかけ、一部を積み上げた展示。ドアを開けて足を踏み入れる。ガタガタ、ミシミシ、壊さないかとヒヤヒヤもの。でも壊れてもOKなんだよね、きっと。

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 「一瞬の出会い 余白の響き 無限の広がり」 会場に掲示されていた李禹煥 さんの言葉です。まさにそんな作品世界でした。美術館の空間に収まらないもっと大きな作品は、2022年10月29日の当ブログ『少ない要素、深い思索』を読んでください。直島の李禹煥美術館について書いています。ご興味のある方は、ぜひどうぞ。

李禹煥 Lee Ufan
2022年12月13日(火)~2023年2月12日(日)
兵庫県立美術館

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