現代風解釈のピノッキオ
ディズニーとは一味も二味も違うピノッキオが誕生しました。『ギレルモ・デル・トロの ピノッキオ』。『シェイプ・オブ・ウォーター』でヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞、アカデミー賞では作品賞や監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロが、ストップモーションアニメの名匠マーク・グスタフソンと共同監督した大胆な解釈の作品です。
舞台はイタリアの田舎町。第二次世界大戦の前、ムッソリーニの時代です。愛する息子を10歳で亡くしたオモチャ職人ゼペットが、息子を想い松の木から作った人形ピノッキオ。森の精霊から生命を吹き込まれる。しかし悪戯好きで言うことを聞かない困り者。原作は苦難を乗り越え「優しく正しい、いい子」になる教訓的な物語。
でもギレルモ・デル・トロ版の父と子の物語は、従来の社会規範に反するメッセージが新しい。ピノッキオは死んだ息子の身代わりではない。個性を伸ばして成長すればいい。と認めたゼペット。木の人形のままでいい。人間にならなくてもいい。と気づいたピノッキオ。その結果、幸せが訪れる。個性と多様性の尊重。時代だねえ。
生命を持った人形で大儲けをたくらむサーカス団長。死なないから兵士にピッタリ!と狙うファシスト党。大人たちの悪知恵にピュアな父子愛で対抗する痛快さ。立体アニメでミュージカル仕立て、という表現も新鮮です。♪チャオ パパ ミオ パパ ♪ とピノッキオが歌うラストは特に感動的。大人も楽しめる思索的ファンタジーでした。
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