大災害を閉じ込めろ
いま大ヒット中の『すずめの戸締まり』。新海誠監督の『君の名は。』、『天気の子』に続く新たな傑作が誕生しました。東北の大震災で親を亡くし、今は宮崎県の叔母のもとで暮らす女子高生「すずめ」が主人公です。本名は岩戸鈴芽。彼女が一目ぼれした青年が宗像草太。災いの元となる扉を閉じてまわる「閉じ師」の家柄だ。
物語は海を臨む宮崎県の坂道からスタートする。自転車で通学途中に出会ったイケメン草太から、「このあたりにある廃墟を知らないか?」と尋ねられたすずめ。行きがかり上、愛媛、神戸、東京、東北へ、「扉」を求めて日本各地をめぐることになる。震災の被害を受けた神戸では、二宮商店街や新神戸駅が舞台になっていました。
3本足の椅子にされてしまった草太と一緒に、災いを防ぐための冒険の旅に出る。それは、すずめの成長と心の解放をもたらす旅でもありました。行くべき道を指し示すのは、ミステリアスな白い猫「ダイジン」。敵か味方かわからないけれど、追いかけるしかない。今まさに日本中を覆いつくしそうになっている大災害を防ぐため。
災害は人間にはどうにもならない巨大な力。そしてそれ自体には悪意も善意もない。しかし暮らしや生命が脅かされ、人間関係や社会は大きなダメージを受ける。特別な能力を持ったすずめや草太が続ける、その巨大な何者かとの激しい戦い。しかし彼らの努力が一般の人には何も見えていない、というのが象徴的だ。
新海監督の作品はファンタジーなのに、深いリアリティを感じる要素の一つが方言にある。九州や四国の方言の細かいニュアンスはわからないけれど、神戸弁には笑わされた。ふんふん、神戸っ子はいっつも、そう言うとおで。きっとほかの方言もそんな受け取られ方でしょう。作り事じゃない、ホンネの話に感じてもらえる魅力。
RADWIMPSの主題歌もいつも通り素晴らしい。元祖『ムー』世代あるいは『不思議大好き』世代として今回うれしかったのは、ユーミンや井上陽水や松田聖子の歌が挿入歌として使用されていること。ますます幅広い年代にファンを広げ、ロングランを続けて興行成績の記録を更新していくのでしょうね。新海監督、絶好調!
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