大竹伸朗と横尾忠則
豊島の家浦で、二つのアートスポットをまわる。ひとつは瀬戸芸ではおなじみの、大竹伸朗の作品『針工場』です。宇和島の造船所に30年間も放置されていた漁船を作るための木型と、ここ家浦で打ち捨てられる寸前だった旧針工場が奇跡の出会い。過剰なほど装飾を凝らす大竹伸朗にしては、見た目とてもシンプルな異色作です。
船型なんて見たこともなかったが、予想外に大きくて驚いた。そして無駄のない合理的な造形は、博物館で見る恐竜の骨格標本のよう。展示されている工場跡も、壁や窓は取っ払われて、屋根と柱の骨格だけ。幾何学的な影も美しい。よく晴れた日に来られてラッキーでした。それぞれに込められた豊潤な時間は饒舌です。
もう一つは、建築家・永山祐子が古い民家を改修して出現した豊島横尾館。黒い焼き杉板と赤い色ガラスを使って、「生と死」をテーマとする横尾忠則ワンダーランドをこの世に具現化しました。円形の塔の内部に入ると、無数の滝の絵に包まれる。じつは床(と、たぶん天井)が鏡でできている。上下周囲、滝の無限ループ。
山水の庭。配置された岩は真っ赤に塗られている。鶴と亀のオブジェは金色だ。表の庭から床下を通り抜ける池泉には錦鯉が泳ぐ。床はガラス張り。歩くのがちょっと怖い。これが横尾さんの極楽のイメージ? お寺も教会も、極楽浄土や天国を大衆に見せるのが目的の施設。これが建築やアートの出発点のひとつなのだ。
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