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2022年9月 4日 (日)

90歳の女優、デビュー

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 私の母、原田ヒサ子。認知症が進んで、一人暮らしができなくなり、今は、介護施設でお世話になっている。数年前、体調を崩して入院した。病院のベッドで、母が突然こう言った。「私ね、15の時から、女優をやってるの」。私はとても驚いてしまった。何故なら、15の時から女優をやっているのは、母ではなく、私なのだから。

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 女優の原田美枝子さんが制作・撮影・編集・監督を手掛け、母のために作り上げたドキュメンタリー、『女優 原田ヒサ子』。とても私的で、わずか24分の短編映画ですが、小さな宝石のように愛おしい。育ててもらった娘・美恵子と孫たちが「おばあちゃん」を女優として撮影。それを公開し、心残りの夢を現実のものにしようという企画。

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 ヒサ子は戦争があったから、好きなことなど何もできなかった世代。その分、娘には望む道を後押ししてくれた。そして女優の道を歩む娘の人生を、我が事のように生きてきたのかもしれない。最近の仕事について尋ねられると、「中途半端な年齢でしょ、だからあまりお仕事がなくて」と。なりきってしまっているのが笑える。

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 子は親の気持ちなど知らずに育ったのに、親はいつも子を思いやり、寄り添って生きてきたのだ。娘の女優人生と母自身の記憶がオーバーラップしながら。認知症になったいま、母は娘と完全に一心同体になれた。母の深い愛に応える方法は? 美枝子と息子、娘たちが協力して創り上げる、親密な空気が素晴らしい。

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 挿入歌に使われている『瞬く星の夜に』は、作品の世界にピッタリでした。美枝子の長女、シンガー・ソングライターの優河の歌です。♪いつかは消えて行く 記憶の中 瞬く星の夜に 何を残そう 何を謳おう♪ 故郷の海辺でヒサ子が座るディレクターズチェアの背には、HISAKO HARADAの文字。グッときました。

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