武相荘の暮らしから
日本でいちばんカッコいい夫婦、白洲次郎と白洲正子の展覧会へ行ってきました。六甲アイランドの神戸ゆかりの美術館で開催されている、白洲次郎 生誕120周年記念特別展。彼らが暮らした東京郊外の古い農家は、武蔵と相模の国境に位置したことから『武相荘』と名付けられた。もちろん「無愛想」と掛けられている。
ケンブリッジに学び、英国流の教養と洗練されたマナーを身に付けた白洲次郎。第二次世界大戦後に吉田茂に請われてGHQとの折衝にあたる責任者となり、日本の復興に尽力する。プリンシプル(原則?)を生涯の信条とし、占領軍から「従順ならざる唯一の日本人」と煙たがられるも、強い信念で国と国民のために働く。
サンフランシスコ講和条約締結にも貢献するが、政治家にはならず、東北電力の会長や軽井沢ゴルフ倶楽部の理事長などを歴任。観たかった愛車1924年製ベントレーの展示は、残念ながら8月14日で終わっていましたが。「葬式無用 戒名不用」と書かれた、正子と子供たちにあてた遺言書。これも彼の信条のあらわれか。
正子はのほうが一般的には有名だ。小さいころから能を習い、アメリカにも留学。「美に東西はないように、好い趣味というのは世界共通なもの」。中年を過ぎてから『能面』、『かくれ里』、『西行』など多くの名著を世に出す。骨董愛好家、着物愛好家、随筆家、そして稀代の目利きとして好きなモノだけに囲まれて生きた彼女。
平安時代の壺も、明朝の器も、田舎で見つけた名もない鉢も、さらには北大路魯山人や富本健吉の作品も、彼女にとっては並列の価値。道具も使わなければ、美しくならない。きものも着なければ、身につかない。飾って眺めるものではなく、使ってこそ価値があると考える彼女の美学と哲学。清々しい潔さを感じます。
一目惚れで結婚した、と公言する次郎と正子。恵まれたハイソな育ちで、しかも自分独自の世界を極めてトップの活躍をした二人。この時代では稀有なスーパーカップルです。次郎によると「夫婦円満の秘訣は、一緒にいないこと」。それぞれ自由に飛び回りながら、互いに尊重し信頼で結ばれた、対等のパートナーだったのだ。
白洲次郎・白洲正子
武相荘 折々のくらし
2022年7月16日(土)~9月25日(日)
神戸ゆかりの美術館
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