己全体を賭けた NON
旧態依然とした日本社会や美術界の変革を目指した岡本太郎。抽象と具象、愛と憎、美と醜など、対立する要素が生み出す軋轢のエネルギーを提示する「対極主義」を掲げた芸術運動を開始。生涯をかけて闘ったのは、伝統、因習、常識、固定観念。特に古くから続く借り物の美意識には、全身全霊でNONを突きつけた。
今日の芸術は、うまくあってはいけない。
きれいであってはならない。
ここちよくあってはならない。
『今日の芸術』(光文社 1954年)より
うまい、きれい、ここちよい。こんな美学や評価は強烈に否定する。何も考えず、惰性で作品を作るのは芸術ではない。
また彼はこんな風にも言っている。
ゴッホは美しい。しかしきれいではない。
ピカソは美しい。しかし、けっしてきれいではない。
昔からある「きれい」ではなく、自分自身の目と頭で捉えた現代の「美しい」を求めているのだ。ほかの芸術家にも、自身にも厳しく。
今回の展覧会では、あまり知られていなかった晩年の油彩画がたくさん展示されている。『太陽の塔』以後、さらにパワーアップしたTAROが、世界に対して社会に対して孤独に闘い続けていたのだ。人間の根源的な力と豊かさを信じた岡本太郎。日本が生んだ破天荒な巨人を再発見する、あっぱれな展覧会でした。
展覧会 岡本太郎
2022年7月23日(土)~10月2日(日)
大阪中之島美術館
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