殺さない殺し屋
どんな相手でも6秒以内に殺してしまう、最強の殺し屋を主人公にした『ザ・ファブル』。南勝久の人気コミックを江口カン監督が実写映画化した2019年のアクション・コメディです。ファブルとは、寓話、伝説、神話の意味。正体不明、誰も見たことがない謎の殺し屋は、闇の世界ではファブルと呼ばれ、いまや都市伝説と化している。
大きな仕事を完遂した後、彼はボスから1年の休養を命じられる。「フツーの生き方を経験しろ、そして誰も殺してはならない」。身分を隠し、名前を偽り、大阪で暮らし始める。一般社会に溶け込もうと奮闘するが、慣れないフツーに悪戦苦闘。ファブルの岡田准一や、相棒の木村文乃が、コミカルな演技でとぼけたキャラを盛り立てる。
熱いものを食べて驚いたり、的外れな就活をしてみたり、初めてのことばかりに戸惑う日々。岡田准一の超絶アクションと、ピントがずれた演技とのギャップが、大いに笑えます。人と争い、人を殺す。それ以外のこと、つまりフツーを全く知らないファブル。フツーに生きる一般人から見ると、やはり可笑しくなんだか哀しい。
生き延びる方策。殺す技術。そこだけに特化した壮絶な育ち方をしたのだ。適宜挟まれる昔のエピソードが、それを物語る。ところが社会に溶け込んで暮らすとなると、否応なくさまざまな人たちと付き合うハメに。裏社会の連中もフツーの人も。そしてある日、悪の組織から人を救わなくてはならなくなる。もちろん誰も殺さずに。
純粋培養されたファブルに絡む脇役陣も、山本美月、安田顕、向井理、柳楽優弥、佐藤浩市、佐藤次郎など個性的な面々。それぞれのキャラクターが立っていて、見ごたえがある。そりゃあヒットするわな、と思わせられました。江口監督のテンポのいい演出も際立っている。主題歌がなんとレディ・ガガだなんて。スゴイです。
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