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2022年8月

2022年8月12日 (金)

己全体を賭けた NON

  Non

 旧態依然とした日本社会や美術界の変革を目指した岡本太郎。抽象と具象、愛と憎、美と醜など、対立する要素が生み出す軋轢のエネルギーを提示する「対極主義」を掲げた芸術運動を開始。生涯をかけて闘ったのは、伝統、因習、常識、固定観念。特に古くから続く借り物の美意識には、全身全霊でNONを突きつけた。

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  今日の芸術は、うまくあってはいけない。
  きれいであってはならない。
  ここちよくあってはならない。
                        『今日の芸術』(光文社 1954年)より
 うまい、きれい、ここちよい。こんな美学や評価は強烈に否定する。何も考えず、惰性で作品を作るのは芸術ではない。

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 また彼はこんな風にも言っている。
   ゴッホは美しい。しかしきれいではない。
   ピカソは美しい。しかし、けっしてきれいではない。
昔からある「きれい」ではなく、自分自身の目と頭で捉えた現代の「美しい」を求めているのだ。ほかの芸術家にも、自身にも厳しく。

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 今回の展覧会では、あまり知られていなかった晩年の油彩画がたくさん展示されている。『太陽の塔』以後、さらにパワーアップしたTAROが、世界に対して社会に対して孤独に闘い続けていたのだ。人間の根源的な力と豊かさを信じた岡本太郎。日本が生んだ破天荒な巨人を再発見する、あっぱれな展覧会でした。

展覧会 岡本太郎
2022年7月23日(土)~10月2日(日)
大阪中之島美術館

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2022年8月 7日 (日)

太陽の塔、だけじゃない

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 TARO作品で一番ポピュラーなのが1970年大阪万博の『太陽の塔』。万博のテーマである「人類の進歩と調和」に反発した太郎は「べらぼうなものを作ってやる」と言って、高さ60mの広場の屋根を突き破る70mの塔を企画。でもテーマ展示プロデューサーを辞めさせられるどころか、無理やり実現できた大らかな時代でした。

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 手法もカンヴァスに油彩という従来の平面作品から、立体になり、工業製品になり、素材も驚くほど自由に多彩になった。FRP、陶、木、ひも、ガラス、ブロンズ・・・彼の手にかかれば何でも唯一無二なTARO作品になるのはさすがです。「全生命が瞬間に開ききること。それが爆発だ」と言う彼の圧倒的なエネルギーを感じます。

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 大衆の中の芸術を標榜し、照明器具や椅子、掛け時計やチョコレート缶、ネクタイ、スカーフやアロハシャツまで、コラボグッズを数多く手掛けた。古い体質の美術界から、商業主義だと批判されても一切気にかけない。芸術の垣根を取っ払った幅広い表現活動は、後に続くアーティストに大きな勇気を与えてくれました。

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 美術あるいは日本という小さな枠にとらわれず、「猛烈に生きる人間」として多岐にわたって活躍。偉ぶることなくTV-CMやバラエティ番組にも出演し、豊かなタレント性を発揮した太郎。子どもでも知っている時代の寵児になりました。「芸術」を特権階級だけのモノではなく、みんなが身近に楽しみ批判できるモノに変えたのです。

展覧会 岡本太郎
2022年7月23日(土)~10月2日(日)
大阪中之島美術館 

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2022年8月 4日 (木)

史上最大の岡本太郎展

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 大阪中之島美術館で大規模なTARO展が開催されている。戦前のパリ時代から、日本文化への挑発、70年万博の『太陽の塔』、晩年のエネルギッシュな作品群まで。史上最大!と謳うだけのことはあるスゴイ展覧会です。全生涯の創作活動をここまで網羅的に、ここまで深く掘り下げているとは、、、うれしい驚きでした。

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 日本の美術界で初めて生まれたスーパースター岡本太郎については、恥ずかしながら断片的にしか知らなかった。彼の後半生とはいえ同時代を生きていたのに。シュールレアリズムの影響を受けたパリ時代の『傷ましき腕』や、戦争から復員した後の『森の掟』、最後の作とされる『雷人』など、多様な作品を鑑賞できる。

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 長らく行方が分からなかった巨大壁画『明日の神話』。その油彩原画は、もちろん見るのは初めて。2003年にメキシコの資材置き場で発見された壁画は、日本で修復し2008年から渋谷駅の連絡通路に設置されている。水爆が炸裂する瞬間。惨劇を乗り越えて明日を開く人間の逞しさ。それを信じるTAROの意志が凄まじい。

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 「不動のものが価値だというのは、自分を守りたい本能からくる錯覚に過ぎないんだよ。破壊こそ創造の母だ」と述べる岡本太郎。彼は世界に対して「己全体を賭けて」果敢に、そして孤独に闘い抜いた。社会に発信するだけではなく、「壁は自分自身だ」と自らをムチ打ち、表現者として、改革者として猛烈に生きたのでした。

展覧会 岡本太郎
2022年7月23日(土)~10月2日(日)
大阪中之島美術館

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2022年8月 1日 (月)

風を食べる生命体

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 風を受けて砂浜を駆ける生命体⁉ 大阪南港のATCギャラリーで開催されている展覧会で、オランダのアーティスト、テオ・ヤンセンによって生み出された奇妙な動きをする「ストランド(砂浜)ビースト(生命体)」を体験できる。これはアートか、それともサイエンスか。芸術と物理工学を融合したダ・ヴィンチのような発想に感動です。

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 創造主のヤンセンは「ビーストは風を食べる」と表現する。風を受けて動く作品から、空気を貯めてエネルギーに変換する作品へ進化したストランド・ビースト。学名のような作品名は animal(動物)と mare(海)との造語 animaris 「アニマリス」から始まる。たとえば体長12mの作品は「アニマリス・オムニア・セグンダ」という具合。

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 作品の素材は、ビーストの骨格を形作るプラスチックチューブ、動くための空気を全身に巡らせる血管に当たるウレタンチューブ、エネルギーとなる圧縮空気を貯めるペットボトルは肺や胃袋だ。ホームセンターで手軽に手に入る材料で、これだけ多種多様なアニマリスを生み出すなんて、まさに神業。官能的で妄想が膨らみます。

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 従来のアートの分類に収まらない独創的なヤンセン作品。展示の方法もフツーでは面白くないので、いろいろと工夫を凝らしています。現物を並べて見せる。オランダの砂浜で動き回る映像を見せる。観客が手で押して動かす参加体験。展示会場で、圧縮空気を送り込んでビーストが実際に動きだす様子を体感する。などなど。

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 骨格、血管、関節、内臓に当たるパーツの滑らかで有機的な動きは、懐かしく官能的ですらある。デジタル技術全盛の時代に、機械仕掛けのビーストたち。ブラックボックスではなく、構造や動く仕組みがわかる魅力。夏休みの工作の楽しみが、そのまま大きく成長して精密になった、そんな夢とロマンを感じる展覧会でした。

テオ・ヤンセン展
2022年7月9日(土)~9月25日(日)
大阪南港 ATC Gallery

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