モダニズム建築の成立
いまは世界のどの都市へ行っても、似たようなビルや集合住宅が並んでいる。鉄とガラスとコンクリートでできた四角い箱に、大きなガラスがはまった建築。インターナショナル・スタイル。日本ではモダニズム建築と呼ぶことが多い。なぜこんな歴史を無視した様式が生まれたか。答えはバウハウスに行き着く、と藤森先生はいう。
19世紀の世界は、ヨーロッパの歴史主義建築一色に染め上げられていた。それが20世紀に入ってガラッと変化する。きっかけは19世紀末に現れたアール・ヌーヴォー。強い装飾性は、それまでの歴史主義に似ているかの印象を持たれる。しかし定型化されたルールから自由になって、うねるような曲線を多用する。
モチーフとするのは、花や蔓草などの植物や女性の体やトカゲなど。単に目に見える自然を持ち込むのではなく、その奥にある生命(生殖)を扱っている。そして生命の奥にはそれを育む大地=鉱物へと続く。鉱物は結晶でできている。結晶は幾何学、つまり数学だ。数学に国籍はない。地域固有の歴史も関係ない。
目に見えない奥の奥の探求。生命の相→鉱物の相→数学の相へと続くこの流れは、アール・デコやデ・スティル、未来派、表現派などを経て、わずか30年でバウハウスに至る。幾何学に基づく構成美。これは皮肉なことに、エジプトに始まりギリシャ、ローマを経て続いたヨーロッパ建築の歴史を自己否定する結果となりました。
初代校長グロピウスや3代校長ミース・ファン・デル・ローエがリードしたバウハウス。20世紀を数学の相で捉え、建築を合理主義と機能主義で探求する。科学技術の世紀にふさわしいインターナショナル・スタイルは、またたく間に世界を席捲。現代に至る、というワケ。だから無国籍、どこも共通。では、この先どうなるの?
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