イタリアは美味しい学校
ローマ路地裏の絶品マリトッツォ。ばあちゃん秘伝のピスタチオのジェラート。観ているだけでヨダレが垂れそうな、イタリア美味と恋の探求コメディ。一見お気楽な映画ですが、母の秘密と自分のルーツ探しもからめ、堅物アメリカ女子の成長物語としてもなかなか見ごたえがありました。ブランドン・キャンプ監督の『ラブ & ジェラート』。
がり勉で世間知らず、ボーイフレンドも作れないリーナ。亡き母との約束で、大学入学直前の夏休みをローマで過ごすことになる。現地で母の旧友から渡された昔の日記。そこには知らなかった母の意外な一面と初めて聞く名前。日記を手掛かりに美しい街と優しい人々に囲まれて、リーナのルーツ探しの冒険が始まる。
自分から動き始めることによって生まれるさまざまな出会いと別れ。セレブのパーティやオペラ鑑賞、ローマ庶民の家庭でキッチン修行など、驚きと喜びを初体験することばかり。この辺りは『ローマの休日』にちょっと似ている。二人の若者の間で揺れ動きながら、母の思いが詰まったローマとフィレンツェの街並みを巡る。
いろんな困難に立ち向かいながら成長を続けるリーナ。そして母の自分への深い愛を知り、母がいちばん教えたかったのは「自分自身を大切にすること」だと思い至る。美味を知る。恋を学ぶ。前向きに生きる。気持ちが浮き立つワクワク感と、後を引くおいしさ。母の時代も娘の今も、イタリアはまさに人生の学校だ。
この作品が気持ちよかったのは、アメリカ人も、イタリア人も、それぞれの良い面が偏見なく描かれているところ。ともすれば一方的な立場から類型的に表現してしまいがちですからね。本当によくできたイタリア観光プロモーション映画でした。このところのコロナ禍で行けなかったイタリア。そろそろ行きたくなってきました。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- ソマリアの海賊(2023.05.26)
- シリア難民の五輪スイマー(2023.05.23)
- 日の丸を背負った裏方(2023.05.11)
- 助ける vs. 助けられる(2023.05.05)
- 天国を信じますか(2023.05.02)
コメント