ウニの殻、シカの皮
いろんなジャンルの作品が用と美を競う松本クラフトフェア。作品を展示するテントもアイデアにあふれています。個人的に一等賞は、おとぎの国から抜け出たような可愛いテント。いやテントと呼ぶにはあまりに立派。小さなキオスクのスタンドか、交通整理のポリスボックスか。ここまで作り上げるとこれ自体が立派なアートです。
これは小林創新(soara)さんが作品を展示するためのステージです。一つ一つ色や形が違うウニの殻に木製の台をつけたメルヘンチックなランプを、周囲の壁面に麗しく展示。室内には小林さんが入っていて、小窓を開けて説明と販売をしてくれる。そうだ、劇場や博物館の切符売り場でのやり取りのようだ。おもしろい。
山元規子(卵工房)さんの繊細な磁器も素晴らしかった。薄い薄いパーツを貼り合わせて焼いたのか、サンゴ礁のような海綿のような不思議なオブジェ。テント越しの淡い光が効果的で、水底で揺らめいている感覚になる。見せ方って重要ですね。中村圭(Kei Nakamura)さんの竹クラフトも、素材の活かし方が斬新でした。
石黒幹朗さん(uun)さんの作品は、石か粘土で作ったような謎の球体。大きさも、色も、模様も、微妙に違う。じつはシカの皮で作った照明器具だそうだ。だからその違いは1頭ごとの個性のあらわれ。皮革だからといってバッグや財布やジャケットや作らなくてもいいわけですが、この球体はインパクト大。驚きました。
カラフルな陶の土台に鳥や花の鋳物が載せられた、本山ひろ子さんの作品も印象に残りました。どんな技なのか、遺跡から掘り出されたような質感が見事。山崎雄一さんのガラス器も、まるで古代ペルシャの遺物。どちらも何百年ものエージングを感じさせる手法が新しい。見どころいっぱいの松本クラフトフェアでした。
| 固定リンク
「信州ながわ物語」カテゴリの記事
- アートと建築の共鳴(2023.03.02)
- レトロ建築と現代アート(2023.02.27)
- ウニの殻、シカの皮(2022.06.02)
- 3年ぶりのクラフトフェア(2022.05.30)
- 芽吹きの春、命輝く時(2022.05.05)
コメント