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2022年5月11日 (水)

クセになるセトウツミ

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 あまり期待せずに観たけれど、これはスゴイ! 2016年の大森立誌監督の『セトウツミ』。そこらへんにゴロゴロいる目立たない高校男子、瀬戸と内海が、放課後たわいもないことをウダウダしゃべっているだけの映画。よくもまあ映画にしたな、というお話なのだが、実に面白い。うまくハズシ、うまくマトメ、上々の出来栄えです。

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 ケンカもない。部活もない。壁ドンもない。「喋る」だけの放課後 とキャッチフレーズにあるように、ありふれた日常。つまらない毎日。天然の元サッカー部員はボケまくり。クールなインテリ塾通いはツッコミまくり。性格も家庭環境も真逆な二人が、なんとなく時間つぶしに来てしまう場所。そこが彼らの唯一の居場所。

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 原作は此元和津也による同タイトルの連載漫画。ヒーローでもない、ワルでもない。リアルな高校生がここにいる。「ヒマを潰すだけの青春があってもエエんちゃうんか」と、冷めたセリフをシニカルに吐く。かと思えば深い深い哲学的な考察も。高校生、というのはそんな年代なのか。それにしても、いまの子たちは優しい。

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 ダブル主演の菅田将暉と池松壮亮の演技がサイコー。関西弁だからこそのおかしみを、これ以上なく上手に伝えている。ロケ地になった堺を流れる名も知らぬ川の堤防もいい。都心でもない、田舎でもない、ゆるい風景。ここで繰り広げられるムダ話は、シュールな漫才だ。あれっ、もしかしたら面白がるのは関西人だけ?

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 全編を流れる平本正宏の音楽がまたサイコー。ちょっとレトロなタンゴのリズム。哀愁あふれるバンドネオンの響き。イマドキのナニワ男子にはまったく似合わない音世界と思いきや、これがメチャはまってる。この映画に一本しっかり横串をさした、音楽の功績も大きいと思う。平本さんを選んだ、大森監督のセンスの良さを感じます。

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 家族の話。女の子の話。将来の話。飼いネコの話。ヤンキーに絡まれる話。とりとめもないようだけれど、苦しみ悩みも、夢も挫折も、それなりに知っている。でも若さのエネルギーで、深刻な話も笑いのネタに変える二人。家庭の事情。ガールフレンドとの関係。そしてなによりも友情。新時代の青春映画が誕生しました。

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