寒山拾得とは?
外出もままならないコロナ禍、アトリエにこもってひたすら絵を描いた横尾忠則さん。新作のモチーフは「寒山拾得」。なんだコレ? 知りませんでしたが、昔の人の名前だそうです。寒山(かんざん)と拾得(じっとく)は、奇妙な風貌と奇行で名を遺した唐の時代の二人の禅僧。じつは文殊菩薩と普賢菩薩の化身だったという伝説が。
書き残した多くの詩も禅の境地を示しているとされ、彼らの姿は水墨画の画材としても好まれた。日本では尾形光琳、円山応挙、曾我蕭白らが、文学では森鴎外、坪内逍遥、芥川龍之介、井伏鱒二など、多くの作品で取り上げられてきた。乞食のような恰好をした寒山と、禅寺の食事係や掃除夫をしていた拾得。
横尾版の寒山拾得シリーズでは、寒山は経典の巻物ではなくトイレットペーパーと、拾得は箒ではなく電気掃除機といっしょに描かれる。超俗。軽妙。いたずら好き。何事も笑い飛ばす大きな生き方が、常識を超えた自由な存在として現代によみがえっている。横尾さんが2人の奇人に強く共感する気持ちがあらわれています。
そして何よりもスゴイのは、もう85歳を超えた横尾さんの創作エネルギー。世界中がコロナに苦しんでいた2~3年で、油彩やアクリルで43点もの大作を描き上げるなんて。もう圧倒されました。質、量ともに充実した最新作の数々。横尾忠則現代美術館の開館10周年を記念するにふさわしい圧巻の展覧会です。
Forward to the Past
横尾忠則 寒山拾得への道
2022年4月9日(土)~7月18日(月・祝)
Y+T MOCA
横尾忠則現代美術館
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