輝くスターの光と影
2020年のアカデミー賞主演女優賞は、『ジュディ 虹の彼方に』のレネー・ゼルウィガーでした。ミュージカル映画の女王としてハリウッドに君臨したジュディ・ガーランド。47歳で急逝した彼女、その半年前のロンドン公演の日々を鮮烈に描いた伝記ドラマです。苦悩も喜びも凝縮されたロンドンのジュディは、破滅的で感動的でした。
圧倒的なカリスマ性で人々を魅了した偉大なスター。しかし奔放な生きざまゆえに社会からたたかれ、仕事のオファーが途絶えることになる。住む家もなく、借金も膨らむばかり。彼女は幼い娘と息子との安定した生活のため、起死回生を願って1968年ロンドン公演へ。知らない街。新しいスタッフ。ストレスは高まるばかり。
『オズの魔法使』に大抜擢されて一躍人気スターになったジュディ・ガーランド。出演する作品が次々ヒットするが、所属映画会社からは厳しいダイエットを強制され、神経症と薬物中毒で自殺未遂や入退院を繰り返す。子役としてスタジオに入り浸り。社会教育の機会もない育ちと、遅刻や無断欠勤や乱脈生活の関係は?
寝る間もないハードなスケジュールに苦しむ子役時代。その苦悩がトラウマとなってよみがえる毎日。ルパート・グールド監督は、若き日のいろんなエピソードをフラッシュバックすることにより、異常だけれど愛すべき人格形成を的確に表現している。この複雑な波乱に満ちたキャラクターの名演は、主演女優賞に相応しい。
あまりにも若くして才能を開花することによるヒズミ。若きスターの栄光からの没落。映画や音楽の分野に限らず、スポーツの分野でもよく見かけることです。早熟の天才。燃え尽き症候群。でも彼らはみんな個別の人生を真剣に生きた結果。それぞれかけがえのない人生なのだ。ただし光が強ければ強いほど、その影は濃く見える。
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