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2022年2月

2022年2月22日 (火)

愛は悲劇を超えられるか

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 シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を下敷きにした『ウエスト・サイド・ストーリー』。敵対するコミュニティに属する男女の禁断の恋、周りから決して許されない愛に一途に突き進む2人。その純粋さが大きな悲劇を招く。果たして絶望の中に希望を見いだせるのか。憎しみと暴力の連鎖を断ち切ることはできるのか。

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 事態が悪い方へ悪い方へと転んでいく。すべてのベクトルは最後の悲劇に向かって突き進む。恋の成就を確信したマリアが「I feel pretty」を明るく歌うとき、じつはすでに悲劇は始まっていたのだ。幸せの絶頂と、裏で進む破滅。不条理な悲惨さをより強調するドラマチックな演出は見事です。さすが、巨匠スピルバーグ。

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 There's a place for us, Somewhere a place for us.  There's a time for us, Some day a time for us. いつか、どこかで。悲しくて醜いことばかりが続いても、私たちが安らげる居場所がきっとある。この感動的な楽曲で、愛は悲劇を超越できる! だから絶対にあきらめないで! とメッセージを送る。差別、分断、暴力の克服。

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 アーサー・ローレンツ原作。レナード・バーンスタイン音楽。スティーブン・ソンドハイム作詞。ジェローム・ロビンス振付。これら骨格が特別素晴らしいこの作品。オリジナルスタッフ(多くは遺族)から再映画化の了解を取り付ける苦労も大変だったでしょう。結果、彼らへのリスペクトと愛が随所に詰まった最高の作品になりました。

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 60年前、アニータを演じてアカデミー助演女優賞を獲得したリタ・モレノが出演しているのも泣かせます。しかも両グループが一目置く重要な役、ワイズ版と最新版を絶妙に橋渡しする賢人として。またNYフィルが音楽を演奏するなど、スピルバーグ監督の深い思いとこだわりが伝わってくる。新たな名作の誕生です。

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2022年2月14日 (月)

青い光の幻想

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 深い海底にいるかのような、高い天空にいるかのような、静寂に満たされたブルーの世界。そこでは安らかで崇高な、不思議な感覚が沸き起こってくる。初めて感じるのに懐かしい。うまく表現できないけれど、これは何か大切なもの、もしかしたら宇宙の起源や生命の根幹に触れたという感覚なのかもしれない。

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 いま神戸ファッション美術館で開催されている『ゆるかわふうの世界』展。〈光の芸術家 ― 宇宙の記憶〉というサブタイトルがついた幻想的なアート体験です。透過光のブルーでしか表せない深遠な宇宙。うたた寝するネコも、親子のクジラも、物思う少女も、ブルーの陰影で浮かび上がると哲学的な様相を帯びてくる。

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 イヴ・クラインのインターナショナル・クライン・ブルーを想起させる高貴なブルー。この青い光は、ゆるかわふうの発見・発明だ。知性も情熱も神秘も、すべてを包み込む青。タテ1.8m×ヨコ約5mの大作がずらりと並ぶ展示空間は、はるか宇宙のかなたの見知らぬ惑星に不時着したかのような驚きと感動に満ちている。

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 展示会場で「ゆるかわブルー」の種明かしをしてくれている。作品を創る素材は建築の断熱材として使われるスタイロフォーム。裏から白色LED照明を当てると青く光るそうだ。厚みがあると青が濃く、薄いと白っぽく。こうして彼は電動金ブラシやコテで削って凹凸でカタチを描き、青の濃淡のみで表現する独自の技法に行きついた。

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 発泡スチロールを硬くしたような建築資材にLED照明。芸術とは縁遠く思われる工業製品を使った、平面と立体と映像を融合した新しいアート表現の誕生です。「光彫り作家」と自称するゆるかわふう。この技法を拡張させ、進化させ、どこまで到達できるのか。これからの活躍がとても楽しみなアーティストです。

光の芸術家 ー宇宙の記憶
ゆるかわふうの世界
2022年1月29日(土)~3月27日(日)

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2022年2月 6日 (日)

少年チームに凄腕コーチ

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 スーパーボウルも制覇したNFLの現役ヘッドコーチが、弱小少年チームをコーチする! ウソのような、夢のような、映画『ホーム・チーム』はニューオーリンズ・セインツのヘッドコーチを長年務めるショーン・ペイトンの実話に基づくストーリー。観終わったあと思わず拍手を送りたくなる、爽やかで心温まるスポーツコメディです。

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 相手選手にけがを負わせると報奨金を受け取れる、というチーム内の悪しき慣習が明らかになり、ペイトンは責任を取らされて1年間の停職処分。仕事ができなくなった彼は、離婚して疎遠になっていた息子が所属するチームの試合を見に行くことに。それが勝ったことがないどころか得点を挙げたこともない最弱チーム。

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 食べ物のことしか考えてない。当たるのがコワイ。カノジョのことで頭がいっぱい。個性的だけれどやる気のないメンバーばかり。こんなトンデモチームのコーチを頼まれた彼は、息子との絆を取り戻すために依頼をOK。いかにやる気を引き出すか。どのようにして複雑な戦術を覚えさせるか、昼も夜も懸命に奮闘する。

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 嚙み合わない選手に、加熱する保護者たち。みんなを奮い立たせ、戦略を駆使し、ついに地区大会の決勝へ。ちょっと『がんばれベアーズ』を思い出す。挑戦する勇気。小さな達成感。変わらぬ友情。プロとは違う少年スポーツの魅力を子どもたちから教えられ、ペイトン自身も成長する。アメリカらしい良き価値観が満載です。

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