幕末のマラソン大会
監督:バーナード・ローズ。音楽:フィリップ・グラス。衣装デザイン:ワダエミ。『サムライマラソン』は外国人が作った不思議な感覚の時代劇です。西部劇や黒澤明の『七人の侍』を思わせる乾いた感性とリアルな描写。これがグローバルスタンダードかもしれませんが、伝統的な様式美を見慣れた目には戸惑いもありました。
『超高速!参勤交代』の原作・脚本の土橋章宏が、日本のマラソン発祥と言われる史実「安中遠足」を題材に書いた小説「幕末まらそん侍」(ハルキ文庫)を映画化。遠足は「えんそく」ではなく「とおあし」だ。トレランのように険しい山道を走る遠足の開催が幕府への反逆と誤解された安中藩。公儀隠密との激しい戦いが始まった。
事実に基づいた創作、とクレジットが入るが、かなり自由にお話を作り上げた印象だ。盛りだくさんのエピソードはそれぞれ興味深い。じつは隠密だった主人公。開明的な考えの姫。父が早死にして貧困に苦しむ武家の子ども。ペリー総督が贈ったコルトレボルバー。ただ欲張りすぎて、少し散漫になったのは残念ですが。
アクションとサスペンスとサバイバルを繰り広げる佐藤健、森山未來、小松菜奈、染谷将太、長谷川博巳、豊川悦司ほかの豪華キャスト。気持ちのいい自然の中を走りに走って、血を流し、首が飛ぶ。ペリー総督率いる黒船がやって来て開港を迫る幕末に、こんな出来事があったとは。おもしろい歴史の襞に気づいたものだ。
いい味を出していた竹中直人と男の子のコンビはC-3POとR2-D2をリスペクトしたものに違いない。さらにそれは黒澤明への愛に行きつく。しかし日本人俳優が日本語で演技しているのに、トム・クルーズ主演の『ラストサムライ』より日本の時代劇らしくない。はたしてどこをマーケットにしているのか。ホントに奇妙な面白さでした。
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