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2022年1月 7日 (金)

バカヤロー、コノヤロー

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 いかにしてビートたけしは生まれたか? 劇団ひとりが脚本・監督をつとめた『浅草キッド』がメチャおもしろい。浅草フランス座を舞台に師匠の深見千三郎と過ごした濃密な日々。舞台演芸からテレビへの過渡期の時代。昭和な芸人の世界を描いた、同じタイトルの自伝的小説(太田出版、新潮文庫)を映画化した作品です。

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 座長で伝説の浅草芸人、深見千三郎。ホントは優しい人情家なんだけれど、そう思われるのが恥ずかしい。照れ隠しもあって口が悪く、うれしいときは怒るし、悲しいときはおどける不器用な人。弟子と食事に行っても、「バカヤロー、コノヤロー、何食うんだ」。何かにつけて「バカヤロー」や「コノヤロー」を使うのが口癖だ。

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 シャイで、粋で、毒舌、早口、アドリブ。深見は芸人としてのプライドと独自の美意識を持っていた。「芸人は良い服を着ろ。腹は減っていても見えないが、着ている服は見える。特に足元を見られないように靴には気を遣え」。「笑われるんじゃない、笑わせろ。舞台から降りたら格好いいと言われるようにしろ」と、厳しく叩き込まれる。

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 彼が弟子入りした昭和40年代、すでに浅草の劇場からは客足が遠のき、経営は難しくなっていた。羽振りよく見える深見も、おんぼろのアパート暮らし。エレベーターボーイのたけしを柳楽優弥。深見千三郎を大泉洋が演じる。笑いと切なさ。若さの勢いと衰退に向かう寂しさ。頭角を現していく弟子と落ち目の師匠の微妙な関係。

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 独特のカリスマ性と気っぷの良さで、芸人はもちろん浅草の街の人たちからも慕われていた深見。鈴木保奈美、門脇麦、土屋伸之、風間杜夫など共演陣が、それぞれの立場で彼を愛し支えていた様子を好演。たけし破門からの再会と和解、そして悲しい最期。単なる成功物語に終わらず、感動的なヒューマンドラマになりました。

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 そうそうたるお笑い芸人に大きな影響を与えた深見千三郎だが、テレビの笑いを頑固に認めなかった。だから彼のコントやタップダンスのスゴさは映像で残っていない。最後の弟子たけしは師匠が邪道とみなした漫才で、ツービートとしてのし上がっていく。別の道を選んだだけれど、この偉大な師匠あってのたけしなんだなぁ。

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