ネパールの名誉を賭けて
標高8,000mを超える高峰は世界に14座。ネパール、パキスタン、チベットにまたがるヒマラヤ山脈とカラコルム山脈にある。そのすべてを7ヵ月で登頂する計画を立てた男がいた。ネパール人の ニルマル ”ニムス” プルジャの挑戦を追ったのがトークィル・ジョーンズ監督の『ニルマル・プルジャ 不可能を可能にした登山家』。
史上初めて14座を制覇したのは伝説の登山家ラインホルト・メスナーで、16年をかけて達成した。それを、わずか7ヵ月で! 8,000mを超えると酸素濃度が地上の3分の1と薄く、人間が生存できないデスゾーンと呼ばれる。実現不可能と言われたチャレンジを淡々と描くドキュメンタリー。それがかえってスゴさを際立たせる。
アンナプルナ4月23日。ダウラギリ5月12日。カンチェンジュンガ5月15日。エベレスト5月22日。ローチェ5月23日。マカルー5月24日。ナンガパルバット7月3日。ガッシャ―ブルムⅠ峰7月15日。ガッシャ―ブルムⅡ峰7月18日。K2 7月24日。ブロードピーク7月25日。チョ・オユー9月23日。マナスル9月27日。シシャパンマ10月29日。
天候不順や事故など、さまざまな危機や予期せぬ障害を克服しながら、6ヵ月と6日で達成したネパール人だけのプロジェクト・ポッシブル。ニムスは見事なリーダーシップを発揮して計画を成功に導く。しかも自分たちも過酷な状況に置かれているのに、ほかのパーティの遭難を聞くと救出活動に奔走。人間としても素晴らしい。
直後のインタビューで「これが欧米人だったら世界中の大ニュースになるんだけれどね。でもネパールとネパール人登山家の名誉のために役立ったらうれしい」と語った。これまで欧米人の登頂者はちゃんと名前が出るのに、ガイドして一緒に登ってもシェルパとしか記録に残らない現状を変えたいとも言っている。
クラウドファンディングで資金を集めたり、エベレスト直下の渋滞の写真をニューヨークタイムズに提供したり、単なる登山家を超えて、事業家やプロデューサーとしての資質も発揮。広い視野で考え、冷静に判断し、強い意志で決断するニムスの魅力があふれたドキュメンタリー。過酷なデスゾーンのリアリティに感動しました。
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