ギャップが生むオカシミ
お笑いコンビのジャルジャルによるコントシネマ『あ・りがとう JARUJARU TOWER 2020』は、シュールな笑いに満ちている。理屈っぽく言えば、テーマはディスコミュニケーション。人と人は同じ言葉を使いながらも理解し合えないことが多い。単語の意味と心の中は同じじゃない。会話になっているけど伝わらない。
ジャルジャルの後藤淳平と福徳秀介が演じるコントのキモは、いくら努力しても伝わらない空虚が生むオカシミ。自分と相手の果てしない溝。それをうずめるための無為な努力。例えば、フレンチレストランに弟子入り志願する青年。ミュージシャンの魂を質に入れる若者。教師と高校生の面談。公園で稽古を続ける芸人の卵など。
それらは「そんなアホな!」と笑い飛ばせるデフォルメされた状況。でも私たちは似たようなディスコミュニケーションを日常的に行っているのかもしれない。そうだとしたら彼らのコントは、かなり知的でチャレンジングな試みではないでしょうか。シュールでナンセンスな新時代のお笑い芸。でも好き嫌いは分かれるに違いない。
フードデリバリーのバイトをしながらミュージシャンを夢見る青年(福徳秀介)が、いろんな店や配達先の人々と出会い、さまざまな場面に遭遇する。これがバラバラの10本余りのコントをつなぐ大きな枠組み。監督は倉本美津留。とんでもないシチュエーションも、身近なあるあるも、それぞれハズシ具合が絶妙です。
製作費はクラウドファンディングで募り、1,442人の支援者から678万3000円が集まったという。熱烈なファンがついているんですね。エンドロールにその人たちの名前が紹介されています。お笑いのスタイルも、資金作りも、今の時代にふさわしいジャルジャル。これから日本のお笑い界に革新を起こしてください。期待しています。
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