心やさしい剣豪
佐伯泰英の人気時代小説の映画化『居眠り磐音』は、予想していた以上におもしろかった。監督は『超高速!参勤交代』シリーズの本木克英。古いしきたりに縛られた武家社会における友情や恋愛。江戸時代の庶民の暮らしに経済政策まで絡めた複層的なお話を、今風にうまくまとめた手腕はさすがです。
主演は松坂桃李。時代劇に主演するのは初めてだそうですが、見事な殺陣、独特の剣法で胸のすく立ち回り。ところが普段は優しいを通り越して弱々しく感じるほど。それがイザとなればやってくれます。新しい時代劇ヒーローは、全然ヒーローらしくない素浪人。現代風に言えば失業者、いつもアルバイトを探している。
共演する女優陣もピッタリはまっていて良かった。故郷九州で待つ許嫁を芳根京子が。江戸で知り合う気っぷのいい町娘を木村文乃が。幼なじみの柄本佑。強欲な商人を柄本明。剣の師匠は佐々木蔵之介。そして中村梅雀、谷原章介、西村まさ彦、陣内孝則など豪華キャストが個性的な演技を繰り広げる。
藩の組織の腐敗や幕府の中枢までおよぶ不正や政略。昔のことを描きながら、現代に通じる問題点を提起するニュー時代劇が、近ごろとても目立つと思いませんか。いまの政治、経済、社会問題を婉曲に表現してエンターテインメントにする。これにいちばん適したスタイルがニュー時代劇なのかもしれませんね。
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 歴史を作った傑作、レオン(2022.07.25)
- 海とモンスターハンター(2022.07.16)
- ホテルは仮面舞踏会(2022.07.08)
- 戦艦大和の秘密?(2022.07.05)
- イタリアは美味しい学校(2022.06.29)
コメント