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2021年11月20日 (土)

「普通」に「大人」になる

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 燃え殻のデビュー作でベストセラー恋愛小説。『ボクたちはみんな大人になれなかった』が、森義仁監督によって映画化された。バブル崩壊後の1990年代半ばからコロナ禍の現在まで、時代を彩った音楽やカルチャーとともに抒情的に青春が描かれている。感傷に浸る人。自己を振り返る人。さまざまな味わい方ができる作品だ。

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 「普通」がイヤでたまらなかった若いころから、いわゆる「普通」を得たときなぜかホッとしている自分へ。これが「大人」になるってことか。でもまだ「普通」であることにあらがってもいる。こんなハズではなかったのに。そんな彼はふとしたキッカケで、現在から2011年、2000年、1995年へと記憶の奥底を遡っていく。

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 人生はさりげない取るに足らない会話や出会いで出来上がっている。それらのあるものは忘れ、あるものには意味を与え、都合よく改ざんしながら人は生きているのだ。「あの時も、あの場所も、あの人も、今の自分につながっている。だからあの頃は悪くなかった」と、自己肯定的に生きていければそれは幸福なのだが。

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 人生における時間、記憶、意識の流れは不思議なもの。すべてが一律ではない。そして痛みや後悔だけが積み重なれば生きていけないのも確かだ。すこし脚色された部分だけが自分にとって思い出となる。だから美しい。懐かしい。胸がキュンとなる。抜け殻の自伝的小説の空気をみずみずしい映像で描いた監督の手腕も最高。

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 特に述べることもない平凡な主人公の、21歳から46歳までを繊細に表現した森山未來の圧倒的な演技力がスゴイ。不器用で世間慣れしていないシャイな青年が、いつしか仕事もできるようになりそれなりのオッサンになっている。「世の中の人間の80%はゴミ」、「残りの50%はクズ」とうそぶいていた頃から時代も変化した。

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 この作品では「普通」という言葉がやたら出てくる。ポジティブにも、ネガティブにも、あるいはなんとなく。同じように「大人」にも多様な意味がある。「普通」を受け入れなければ「大人」になれないのか。本来これらの言葉に絶対的な定義はないと思う。人それぞれだし、時代とともに変わるものだから。自分を肯定して自信をもって歩んでいければ、それでいいんじゃない、と教えられました。

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