大嫌いだけど、好き
お調子者で何をやっても失敗してしまうドジなトム。見かけはかわいらしいけれどずる賢く容赦ないジェリー。ひたすら追っかけ、きわどく逃げる永遠の宿敵。今回の映画、日本でのキャッチコピーが「大嫌いだけど、好き」。敵同士とは言え、お互い相手がいないと成り立たない濃密な関係を、実にうまく表現しています。
この言葉に惹かれて、お子さま向きかも、と思いながらティム・ストーリー監督の『トムとジェリー』を観ました。この作品は永遠の名コンビ誕生80周年記念。しかも実写版⁉ え、どういう表現になるの?と心配になるかもしれません。でもご安心を。実写の人物や街や建物の中に、動物たちは手描きアニメで合成する仕組み。
リアルな実写映像とアメリカンコミックの明解さ。このギャップと対比がミソなのです。キャラクターを浮き立たせ、画面を生き生きさせる効果がある。軽快なテンポで進むストーリー展開を、より一層スピードアップさせている。そして思いきり羽目を外した誇張も、コミックだからと許される。よくよく考えられた構造です。
トムジェリは見慣れた姿を忠実に再現。ティム・ストーリー監督のオリジナルを尊重する姿勢があらわれている。しかし出演する俳優さんは、どう演じるか難しかったでしょう。撮影時はそこにいないのに、いるかのように向き合いセリフをしゃべる。シーンごとに完成形をイメージしながら演出する監督やカメラマンもタイヘンだ。
さてお話はと言うと? NYの一流ホテルを舞台にドタバタ大騒動をやらかすトムジェリ。大事なイベントを台無しにしてしまった罪滅ぼしに、なんと協力して奇跡を起こすことに。いつもケンカばかりなのに協力? トンデモ展開にスカッと笑えてコロナのウサを晴らしてくれる90分間。面白くて幸せな気分になれる快作でした。
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