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2021年11月

2021年11月28日 (日)

大嫌いだけど、好き

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 お調子者で何をやっても失敗してしまうドジなトム。見かけはかわいらしいけれどずる賢く容赦ないジェリー。ひたすら追っかけ、きわどく逃げる永遠の宿敵。今回の映画、日本でのキャッチコピーが「大嫌いだけど、好き」。敵同士とは言え、お互い相手がいないと成り立たない濃密な関係を、実にうまく表現しています。

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 この言葉に惹かれて、お子さま向きかも、と思いながらティム・ストーリー監督の『トムとジェリー』を観ました。この作品は永遠の名コンビ誕生80周年記念。しかも実写版⁉ え、どういう表現になるの?と心配になるかもしれません。でもご安心を。実写の人物や街や建物の中に、動物たちは手描きアニメで合成する仕組み。

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 リアルな実写映像とアメリカンコミックの明解さ。このギャップと対比がミソなのです。キャラクターを浮き立たせ、画面を生き生きさせる効果がある。軽快なテンポで進むストーリー展開を、より一層スピードアップさせている。そして思いきり羽目を外した誇張も、コミックだからと許される。よくよく考えられた構造です。

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 トムジェリは見慣れた姿を忠実に再現。ティム・ストーリー監督のオリジナルを尊重する姿勢があらわれている。しかし出演する俳優さんは、どう演じるか難しかったでしょう。撮影時はそこにいないのに、いるかのように向き合いセリフをしゃべる。シーンごとに完成形をイメージしながら演出する監督やカメラマンもタイヘンだ。

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 さてお話はと言うと? NYの一流ホテルを舞台にドタバタ大騒動をやらかすトムジェリ。大事なイベントを台無しにしてしまった罪滅ぼしに、なんと協力して奇跡を起こすことに。いつもケンカばかりなのに協力? トンデモ展開にスカッと笑えてコロナのウサを晴らしてくれる90分間。面白くて幸せな気分になれる快作でした。

 

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2021年11月24日 (水)

異常気象を武器にする

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 『インデペンデンス・デイ』で製作・脚本を担ったディーン・デヴリンの監督デビュー作品『ジオストーム』。やはり近未来SFパニック映画です。ただし宇宙人の侵略ではなく、異常気象で世界が破滅の危機に陥るお話。豪雨や台風、寒波や熱波など、気候変動による災害の拡大が叫ばれる時代にぴったりのテーマですね。

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 地球規模の大災害を防ぐために開発されたシステムは、世界各地の気象をピンポイントでコントロールする数十の人工衛星のネットワーク。それが突然誤作動を始める。世界中で異常気象が発生。アフガンでは寒波で人間が凍りつく。香港で道路からマグマが噴き出る。銀座に超巨大ひょうが降る。ムンバイでは無数の竜巻。

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 リオの海まで凍ってしまうなど、次々と人類を襲う大災害。ついにNYもモスクワも壊滅。そこで衛星システムの生みの親ジェイクが宇宙ステーションに派遣される。ワケあってプロジェクトから外されていた天才科学者はシステムの暴走を止められるのか。原因を突き止めようと試みるが・・・。残された時間は少ない。

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 見どころはSFX技術を駆使したショッキングな映像だけではない。ジェイクと反目していた弟が協力し、宇宙と地球で奮闘しながら絆を取り戻していく姿。ジェイクと離れて暮らす娘との愛情。感動的な人間ドラマもたっぷり盛り込まれている。そして大統領と後釜を狙う側近のバトル。国連を舞台にした外交上の駆け引き。

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 ハラハラドキドキに加え、謎解きのおもしろさや人間味あふれる情感がスパイスになって、物語にぐいぐい引き込まれていく。最後はうまくいくだろう、とわかっていても目を離せない。出演者も素晴らしいけれど、ディーン・デヴリン監督のデビュー作とは思えない老練な手腕に驚きました。ハリウッドらしい大作です。

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2021年11月20日 (土)

「普通」に「大人」になる

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 燃え殻のデビュー作でベストセラー恋愛小説。『ボクたちはみんな大人になれなかった』が、森義仁監督によって映画化された。バブル崩壊後の1990年代半ばからコロナ禍の現在まで、時代を彩った音楽やカルチャーとともに抒情的に青春が描かれている。感傷に浸る人。自己を振り返る人。さまざまな味わい方ができる作品だ。

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 「普通」がイヤでたまらなかった若いころから、いわゆる「普通」を得たときなぜかホッとしている自分へ。これが「大人」になるってことか。でもまだ「普通」であることにあらがってもいる。こんなハズではなかったのに。そんな彼はふとしたキッカケで、現在から2011年、2000年、1995年へと記憶の奥底を遡っていく。

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 人生はさりげない取るに足らない会話や出会いで出来上がっている。それらのあるものは忘れ、あるものには意味を与え、都合よく改ざんしながら人は生きているのだ。「あの時も、あの場所も、あの人も、今の自分につながっている。だからあの頃は悪くなかった」と、自己肯定的に生きていければそれは幸福なのだが。

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 人生における時間、記憶、意識の流れは不思議なもの。すべてが一律ではない。そして痛みや後悔だけが積み重なれば生きていけないのも確かだ。すこし脚色された部分だけが自分にとって思い出となる。だから美しい。懐かしい。胸がキュンとなる。抜け殻の自伝的小説の空気をみずみずしい映像で描いた監督の手腕も最高。

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 特に述べることもない平凡な主人公の、21歳から46歳までを繊細に表現した森山未來の圧倒的な演技力がスゴイ。不器用で世間慣れしていないシャイな青年が、いつしか仕事もできるようになりそれなりのオッサンになっている。「世の中の人間の80%はゴミ」、「残りの50%はクズ」とうそぶいていた頃から時代も変化した。

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 この作品では「普通」という言葉がやたら出てくる。ポジティブにも、ネガティブにも、あるいはなんとなく。同じように「大人」にも多様な意味がある。「普通」を受け入れなければ「大人」になれないのか。本来これらの言葉に絶対的な定義はないと思う。人それぞれだし、時代とともに変わるものだから。自分を肯定して自信をもって歩んでいければ、それでいいんじゃない、と教えられました。

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2021年11月15日 (月)

渾身のワンチャンス

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 ウェールズの田舎町で生まれたオペラ歌手、ポール・ポッツの成功物語。実話です。あまり裕福じゃない家庭で育ち、容姿もさえず、内気な性格で、いじめられっ子。ただ歌うことが大好きで、教会の聖歌隊から始まり、家でも通学途中でも、いつも歌っていた。そんな変わり者の彼は、父親からも級友からもバカにされる存在。

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 デビッド・フランケル監督、2013年の作品『ワンチャンス』は、挫折を繰り返しながらも夢をあきらめないポールの大逆転人生を描く。つまずくたびに妻や母に支えられ、歌声を響かせ立ち上がる。決してカッコいいとは言いがたい、むしろブサイクな生きざま。心優しい彼は、思い切ってチャレンジする強引さが足りないのか。

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 地域コンテストの賞金を元手にヴェネツィアに短気留学。憧れのパヴァロッティに聴いてもらう機会に恵まれるも酷評される。「観客の心を盗む泥棒のずぶとさがなければオペラ歌手になれない。君には無理だ」と。一度は夢をあきらめた気弱なポール。地元に帰って携帯電話ショップの店員として悶々と日々を送っている。

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 「僕の人生はオペラ」と本人は言うけれど、他人から見ると「彼の人生はコメディ」。笑えるエピソード満載の七転び八起き。脚光を浴びそうになるたびに、虫垂炎で倒れたり、交通事故にあったり、甲状腺ガンで声が出なくなったり。でも、何度くじけても歌に対する情熱だけは忘れない。そして2007年、人生最後の賭けに挑む。

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 周りから促され、渾身の決断で人気オーディション番組に出場。高額賞金の「ブリテンズ・ゴット・タレント Britain's Got Talent」だ。そして見事に勝ち進み優勝。一躍スターになった彼が最初に出したアルバムが、この映画のタイトルにもなった「ワンチャンス」。ちなみに2009年にはスーザン・ボイルがここで準優勝しています。

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2021年11月11日 (木)

ピアノ調律の深淵

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 2016年の本屋大賞を受賞した、宮下奈都さんの『羊と鋼の森』(文藝春秋)。橋本光二郎監督によって映画化されたのは知っていたけれど、原作を読んだ感動があまりにも大きかったので、失望を恐れてつい見そびれていた。しかし思い切って観てみると、原作にはない素晴らしさがありました。それは映像ならではの力。

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 シラカバ、ブナ、ニレ、エゾマツ・・・北海道の新緑が美しい。積もった雪、キーンと冷えた空気、ダイヤモンドダスト・・・北国の冬が美しい。ニオイや冷気まで伝わる撮影が見事です。また、文章ではいくら詳しくてもわかりにくかったピアノ内部の弦やハンマーの動き、ペダルやダンパーの様子が、映像ならひと目でわかる。

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 山の中の辺鄙な集落で生まれ、豊かな森に育てられた青年。一人前のピアノ調律師を目指すピュアで素直な主人公。繊細に演じた山﨑賢人はイメージにぴったりでした。才能のなさに悩み、努力の限界を感じながらも、情熱を失わずに愚直に前へ進む。彼を見守る同僚の鈴木亮平、三浦友和、光石研、堀内敬子も魅力的。

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 そうです、原作の登場人物に生き生きした存在感を与えるのが、出演者の個性や演技力。映画ならではプラスアルファではないでしょうか。ピアニストと調律師の関係を表現するのに不可欠な、上白石萌音と萌歌が演じた双子の姉妹。こんな人たちに出会いながら成長する姿から、人生に無駄なことなどないと勇気づけられる。

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 印象的なシーン。目指す音は?と聞かれた先輩が答える。原民喜という小説家が「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」こんな文体に憧れている、と書いている。これが理想とする音です、と。カッコイイ。

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2021年11月 8日 (月)

野麦峠スキー場、準備中

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 奈川高原のカラマツは黄葉の真っ盛り。そこら中が明るく金色に染まっている。野麦峠スキー場でも間もなく迎えるシーズン開幕に向けて、ゲレンデの草刈りやリフトの点検など準備が進んでいる。秋晴れの一日、そのゲレンデでハイキングを楽しみました。のんびり歩くのはスキーで滑り降りるのとはまた違う感覚で新鮮です。

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 最高2,130mのゲレンデの中腹、標高1,827mにあるレストハウス樹海まで。下半分を回って降りてくるルート。標高差は400m近くありますが、草を刈ったおかげで歩きやすくラクチンです。地面にキャタピラの跡があるのは、スキーシーズンに大活躍する圧雪車が草刈りにも活用されているからだ。いまはもっと上部で作業中。

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 正面に雪をかぶった乗鞍岳がカラマツの黄葉をまとって聳えている。右に前穂高岳、奥穂高岳、西穂高岳の穂高連峰。焼岳との間には笠ヶ岳もクッキリ見える。そして左手には御岳。さすが眺望がウリの野麦峠スキー場、これだけ空気が澄んでいるとまさに絶景。暑くもなく寒くもなく、最高のハイキング日和でした。

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 夏の間ひっそりしていたセンターハウス周辺も、作業の人たちや車両の行き来で少しずつ活気を取り戻している。ゴンドラリフトの準備ももうすぐ始まるのでしょう。そのあとはいよいよスノーマシンが稼働? いやいやまだ早い。ま、もう少し冷え込まないと、せっかく降らした人工雪がすぐに融けてしまいますからね。

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 暖冬による雪不足とコロナ感染拡大のダブルパンチで苦しんだ全国のスキー場。地球温暖化の影響か、年々雪が少なるなっているような気がします。暮らすぶんにはいいけれど、関係者はきっとやきもきしていることでしょう。今年はなんとか早くたっぷり降りますように。以前のようなホワイトクリスマスを期待しています。

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2021年11月 5日 (金)

イニエスタの焼ヴィーフン

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 お馴染みの「ケンミン焼ビーフン」、たしかノエビア・スタジアムの売店でも焼きそばの隣りで出来立てアツアツを売っていた。ケンミン食品はユニフォームのパンツ・スポンサー。その縁でコラボグッズとしてヴィッセル神戸オフィシャルショップで発売されている。三宮にニューオープンした「THE VISSEL」で買い込んできました。

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 イニエスタをはじめ、山口蛍、サンペール、フェルマーレン、酒井高徳、菊池流帆など、全選手プラス三浦淳宏監督まで揃っている。この夏に加入した期待のアタッカートリオ、武藤、大迫、ボージャンもちゃんと用意。試合前には自分なりの一押しスタメンを並べて、あーだこーだとゲーム展開を予想。はい、これで快勝のハズ!

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 鶏ダシの効いた醤油味がおいしい味付けビーフン。茹で戻し不要、調味料も不要の手軽さが受けて、年間1,500万食も売れているそうだ。しかし米粉のビーフンは、ラーメンに比べたらまだまだマイナー。ヴィッセルの快進撃と共に広く普及したらいいですね。あ、一般の商品名は『焼ビーフン』。こちらヴィッセル版は『焼ヴィーフン』。

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2021年11月 2日 (火)

ウインクチェアで知りました

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 日本人がデザインした椅子がMOMAに永久保存になった!と言うニュースに驚いた記憶がある。《WINK (ウインクチェア)》。その日本人が、イタリアと日本を拠点に活躍するプロダクトデザイナー、喜多俊之さんだった。1980年代、エットーレ・ソットサスが主宰し世界を席巻した「メンフィス」と、軌を一にする斬新なデザインでした。

Wink

 《WINK》は背もたれや足置きやヘッドレストの向きや角度を、自由に動かせるソファ。カバーもパーツごとに着せ替えられる。このソファはオーナーの体形や好みに自在に寄り添うことができるのだ。これほど機能的な、これほど人間的な椅子はかつてなかったでしょう。デザインの本場イタリアで世界を相手に活躍するKITAとは?

Wakamaru    

 バウハウス以来のシンプルで無機的な機能主義、近代モダニズムが行き詰まりを見せていたときに、突然あらわれたアンチテーゼ。カラフルで有機的で、複雑で人間的なユーモアを内包したポストモダン。禁欲的 vs. 享楽的。無駄をそぎ落とした機能こそが美である。vs. 人生には遊びも必要だ。引くか、足すか。難しいですね、
Aquos

 2001年、SHARPの液晶テレビ《AQUOS アクオス》のデザインも衝撃でした。AV機器は直線的で色も黒か白、が当時の常識。それがアルミ地金のような鈍く光るシルバーで、オッパイのような曲線のデザイン。このようなステキな人生を楽しむためのイタリア的なデザイン商品群が、喜多さんの活動の大きな柱です。

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 もうひとつ仕事の柱になるのは、日本の伝統的な匠の技をワールドワイドなデザイン力で世界に知らしめること。1971年、福井の和紙を使った照明器具《TAKO》《KYO》を世に出して以来、秋田の杉を活用した家具や、輪島塗、飛騨春慶塗、津軽塗に現代の生命を与え、エネルギッシュに世界に発信し続けている。

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 各地の伝統工芸に触れるうち、日本の伝統文化には持続可能な社会を実現するための優れたヒントが内在していることに気づく。島根の竹を板状にする技術を用いた《FLAT BAMBOO CHAIR》。竹を将来プラスチックに代わる新たな資源にするというプロジェクトです。たしかに、成長が早く強くてしなやかな竹はいいかも。

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 イタリアと日本のエッセンスを吸収し、デザインの力で西洋と東洋の懸け橋に。イタリア語で「丸太」の意味《TRONCO》と名付けられたベンチ。床柱に使われる北山杉にリサイクルに適したアルミニウムの脚を付けた、美しい長椅子です。伝統文化と近代テクノロジーの融合で未来を開く。彼の哲学がうまく表現された作品です。

喜多俊之展
DESIGN TIMELESS FUTURE
2021年10月9日(土)~12月5日(日)
西宮市大谷記念美術館 

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