2.5次元の金魚が泳ぐ
一合枡で泳ぐ金魚。朱塗りのお椀で揺らめく金魚。寿司桶や文机の引き出しに群れる金魚。ビニール袋や番傘にもいるじゃないですか。いまにも動き出しそうな驚きのリアリティ。でも逆に生物標本のような、生と死のはざまにある神秘的な美しさをたたえてもいる。なんとも不思議な、金魚絵師・深堀隆介の芸術です。
まるで生きているような金魚たち。これは平面である絵画と立体である彫刻の境界に存在する、いわば2.5次元の独創的な表現です。当然のことながら、この作品制作の技法も革命的。器の中に透明な樹脂を流し込み2日をかけて固める。固まった表面にアクリル絵具でヒレだけを描く。その上からまた樹脂を流し込む。
固まると体の部分を少しずつ描く。さらに樹脂を流し、固まったら次の層を描く。何層も何層もこの作業を繰り返し、ウロコの一枚一枚も細密に描いていくと、本物のようなリアルな金魚が出来上がる。透明なエポキシ樹脂とアクリル絵具。使用する画材の相性の良さを発見したところから、創作が始まった。
いまでは深堀はその表現の幅をさまざまに広げて、充実した活動を展開している。平面の板に絵を描いて、その一部が透明な樹脂を使った立体の金魚絵になった作品や、すべてを平面絵画にした金魚アップの屏風画などなど。展示の最後の部屋には、縁日の金魚すくいのインスタレーションも。驚きのアートでした。
金魚絵師 深堀隆介展
金魚鉢、地球鉢
2021年9月11日(土)~11月7日(日)
神戸ファッション美術館
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