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2021年10月25日 (月)

ミロコマチコの生きもの

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 クマもトナカイもコウモリもウサギも、ミロコマチコが描くとみんな生命力があふれ出てくる。それはパワフルを通り越し、猛々しさや恐ろしさを感じるレベルだ。そこには彼女の動物観、自然観が強烈に反映されているのでしょう。人間に飼いならされない。人間にこびない。それこそが生きものの本質。自然のままの自然。

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 動物を可愛く描くアーティスト。あるいは擬人化して描く作家。彼らは生きもの、つまり自然は人間がコントロールできると信じているのだと思う。ヒトは科学技術の進歩を活用して、自然を切り開き、野生を支配下に置いてきた。文明の発展。人間は万物の霊長。でもその考えは間違いだ、と彼女の作品は気付かせてくれる。

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 六甲アイランドで開催中の展覧会『ミロコマチコ いきものたちはわたしのかがみ』では、人間中心主義で描かれた生きものはいない。ヒトをその辺の虫や石ころと並列でしか見ていない動物や鳥。親しみを感じるでもなく、敵対するでもなく。どう描くかは、どう見るかで決まる。描き出された姿は、鏡に映った作家自身の哲学。

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 奄美大島に移住して以降、ミロコマチコが描くモチーフは現実の生きものにとどまらない。見えないけれど確かに存在する何か。夜になると徘徊する魔物や精霊。風の主や森のもののけ。彼女にとってはヘビやウサギと同じ存在感があるのでしょう。野生も魔性も、本質を見る才能に恵まれたアーティストにはリアルに見えている。

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 絵本作家、画家、装幀家、アートディレクターとして、今もっとも勢いがあるアーティスト。この展覧会は、絵本の原画や立体作品、ブックデザインや広告のアートディレクション、ミュージシャンとコラボしたライブペインティングなど200点以上を展示。ジャンルを超越して活躍するミロコマチコの魅力を紹介する、必見の展覧会です。

ミロコマチコ
いきものたちはわたしのかがみ
2021年10月2日(土)~12月19日(日)
神戸ゆかりの美術館

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