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2021年9月10日 (金)

シネマ草創期を学びましょ

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 雪が舞うパリの夜景を上空からゆっくり眺めていたカメラは、グウーッと地表に近づき、モンパルナス駅に飛び込み、構内の雑踏をかき分けて時計台のバックヤードへ進む。静から動へのスピードの変化。圧倒的に美しい映像。『ヒューゴの不思議な発明』は1930年代を舞台に孤児のヒューゴが活躍する冒険ファンタジー。

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 駅舎の屋根裏部屋で、大時計のネジ巻きをしながら人知れず暮らすヒューゴ。父が残した機械仕掛けの人形を、一つずつ部品を集めて修理するのが亡き父との絆を探す道だと信じて。ある日、構内のオモチャ屋から部品を盗もうとして見つかる。物語はそこから動き始める。多くの人が働き、さまざまな人が行きかう駅。

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 修理の手引きになる父のノートを取り戻そうとするヒューゴ。そんな時、駅での偶然の出会いが、運命の出会いとなる。そして修理が終わった機械人形が描いた絵は、ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』のワンシーンだった。ネジ、歯車、ゼンマイで機械は完結する古き良き時代。デジタル全盛の今より、ずっとロマンがあります。

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 映画の主人公は少年ヒューゴなのだが、じつは彼は狂言回しの役割。この物語の中心になる人物が別にいた。それがジョルジュ・メリエス。ドラマとしての映画の元祖、世界初の職業映画監督、SFXの創始者・・・さまざまな言葉で称えられる偉大な創造者だが、ブームが去った後は忘れ去られ、失意のうちに暮らしていた。

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 リュミエール兄弟の「ラ・シオタ駅への列車の到着」をはじめ、ダグラス・フェアバンクス、チャップリン、バスター・キートン、ハロルド・ロイドなどの名場面がうまく使われている。マーティン・スコセッシ監督が、偉大な先人へのリスペクトと映画に対する愛を注ぎ込んだこの作品。楽しく映画史をお勉強するのにもピッタリです。

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