関ヶ原はチョー難しい
学校で習って誰もが知っている関ヶ原の合戦。豊臣から徳川へ、戦国時代から江戸時代へ。その後250年の平和をもたらした天下分け目の戦い。しかし実態はよく知らない人が多いのではないでしょうか。そんな歴史の分岐点を描いた原田眞人監督の『関ヶ原』。司馬遼太郎の原作に真っ向から取り組んだ2時間半の大作です。
成果が上がらない朝鮮出兵。武闘派と文治派の主導権争い。北政所派と淀君派。まだ幼い秀頼を残して秀吉が死亡したのをきっかけに、派閥争いは表面化する。それが関ヶ原へと向かう背景です。思惑が入り乱れる武将たちを懐柔しながら、自らの勢力を伸ばしていく家康。主君の意志を守り秀頼を盛り立てる石田三成。
この作品は、徳川の世では家康の敵として悪者扱いされてきた三成の視点で描かれている。子どものころ秀吉に才能を認められ、取り立てられた恩義から豊臣家に終生の忠義を捧げる。融通が利かない潔癖な性格で、煙たがられることも多かったが、自分の信じる生き方を曲げることなく貫いた「義」の人だった。
三成の旗印がおもしろい。「大一 大万 大吉」(だいいち だいまん だいきち)とユニークな文字だけのもの。一人が万人のために 万人は一人のために尽くせば 天下の人々は幸福(吉)になれる という意味。石田三成らしいじゃないですか。関ヶ原は真っすぐな理想家が老獪な現実主義者にしてやられた合戦でもあったのだ。
三成の西軍と家康の東軍。1600年9月15日、実際の戦闘はわずか6時間で決着がついたという。戦国の世では珍しくない寝返りや裏切りがここでも起こり、なし崩し的に勝敗は決する。司馬遼太郎らしく、とても多くの登場人物と複雑に入り組んだ人間関係。ストーリー展開についていくのさえ難しい。1作の映画では限界かも。
ただし俳優陣の演技力で最後までおもしろく鑑賞できました。三成の義を熱演した岡田准一、家康の野望を表現した役所広司、優柔不断な小早川秀秋を演じた東出昌大などなど、これ以上は考えられないベストなキャスティング。420年前の出来事の知られざる一面を学ぶには、ちょうどいい映画かなと思います。
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