空港から出られない運命
NYのJFK空港を舞台にした、2004年の『ターミナル』が素晴らしい。スピルバーグ監督の性善説と主演トム・ハンクスの演技力で、心温まる感動作になっています。もし自分にこんな災難が降りかかったらどうしよう?と考えさせられる映画でもある。もちろんアメリカではありえないけど、中東や中央アジアなどで・・・。
飛行機でNYに到着したら、パスポートもビザも無効になっていた。東ヨーロッパの祖国からの飛行中、国でクーデターが起きていたのだ。入国も帰国も出来ない男。入管当局からはトランジットエリアで待つように言われる。法的にはどこの国にも属さない中立地帯に、無国籍になってしまって独り残される困惑と不安。
トム・ハンクスが演じるビクター・ナボルスキーは英語もわからないけれど、どこまでも前向きでアイデア豊富。なんとか生き延びる工夫をしながら、空港暮らしに徐々になじんでいく。その過程がとてもユーモラス。それにしても巨大空港には誰も気に留めないデッドスペースがあるものなんだなぁ、と妙なところで感心しました。
何日も暮らすうち、英語も独学で学び、空港で働くいろんな人たちとも交流を深めていく。悪意がなく純真な彼は周りの人を幸せにする才能があり、いつしかみんなに愛されるようになる。しかし管理当局は彼を厄介者として、あの手この手で排除を画策。法的根拠がない存在を認めることなどできないのだ。専制国家ならすぐに逮捕や死刑にしそうだが、さすが人権を尊重するアメリカは違います。
仲間の協力もあって事態は解決に向かうが、彼にはどうしてもNYで果たさなければいけない誓いがあった。ジャズが大好きな亡き父にまつわるこのエピソードは、ベニー・ゴルソン本人の出演でリアリティを添える。人々の純粋な善意と、映画は善きものを伝えるべきだ、という信念に基づいたこの作品。とても気持ちが良かった。
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